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平和の終わり

日本・大阪 大学生 (当時) 萩村啓


 あの日……あの日のことは今でも覚えている。


 当時の俺は大阪大学に通う学生だった。

 難関の入試をくぐり抜け、面接も突破し、地元の期待を背負って都会の大学へとやってきた。

 大阪大学は関西では名門のひとつとされていて、俺みたいな地方出身者にはそれだけで大きな自信となった。


 2003年当時、日本はまだバブル崩壊後の影響を色濃く残していたが、徐々に明るい兆しも見え始めていた。

 企業の求人も少しずつ増え、社会全体に「頑張れば報われる」という雰囲気があった。

 俺自身も将来は大手企業に就職し、両親を安心させたいと強く思っていた。


 ポッドキャストやブログといった新しいメディアが市民権を得始め、音楽はiPodやMDで楽しむ時代。

 携帯電話は折りたたみ式で、メールと通話が主な使い方だった。

 街ではタバコの自販機がまだ普通に並び、道を歩けばガラケーで写メを撮る学生や、プリクラに並ぶ女子高生の姿が当たり前だった。

 俺たちは当時流行りのバンドの曲を聴きながら、未来を夢見て毎日を生きていた。


 当時の大学には、本当にいろんな学生がいた。

 人生の成功を本気で目指す奴、親に言われてなんとなく入った奴、とにかく遊びたい奴……千差万別だった。


 でも、俺の周りには何かに夢中で、何かを本気で変えたいと思っている、そんな熱い仲間が多かった。

 夢を追い、理想を語り、夜通し議論を交わす日々。

 夜通し話し込んで、気がつけば朝になっていることも珍しくなかった。

 あれが若さだったのかもしれないが、俺はあの空気が嫌いじゃなかった。


 あの時間に生まれた言葉の多くは、現実には何も残さなかったのかもしれない。

 それでも──あの頃の俺たちは、本気だった。

 少なくとも、自分たちの未来が「まだ決まっていない」と信じられるだけの自由があった。

 そして、その自由を疑う理由も、まだどこにもなかった。


 ……だからこそ。

 もし、あの日の出来事がなければ──と、今でも考えることがある。

 現れた場所が、ほんの数キロ違っていれば。

 時間が、あと数十分ずれていれば。

 

 そういう些細な違いで、救われた人生はいくらでもあったはずだ。

 偉業を成し遂げたかもしれない人間もいたかもしれない。

 理想通りの進路を歩んだり、平凡でも満ち足りた人生を送れた者もいたはずだ。

 逆に、現実に打ちのめされる前に命を落とし、ある意味では幸運だったと言える者もいたかもしれない。


 ……すまん。

 いい歳した老人の「たられば」なんて、聞きたい話じゃなかったな。

 ただ、あの時代を知る人間にとっては、避けて通れない考えでもあるんだ。


 あの日、俺は文化祭の後片付けを終えて、サッカーサークルの仲間と打ち上げに出かけていた。

 場所は大学からほど近い大きな居酒屋。

 いくつものサークルが同じ店に集まっていて、店内はほとんど貸し切りのような状態だったな。


 騒がしかったよ。

 酒も入っていたし、文化祭の解放感もあった。


 店内は若者たちの笑い声と熱気に満ちていた。

 ビールジョッキを掲げながら、好きな選手の話で盛り上がり、みんなで大声で歌ったり、バカ話で腹を抱えたり。

 

 今思えば、店側からすれば相当迷惑な客だったはずだが……当時はそんなこと、誰も気にしちゃいなかった。

 店員も慣れていたのか、多少のことには目をつぶっていた。

 ああいう場所では、それが普通だった。

 あの頃は、どこか「これから先も同じ日常が続く」と、無意識に信じていた。


 だから、誰も疑わなかった。

 あの時間が──あの瞬間が、人生の分岐点になるなんてな。

 これから先に何か大変なことが起きるなんて、誰一人思っていなかった。


 外からサイレンの音がやけに多いとは思っていた。

 けれど、それすらも「また誰か泥酔して倒れたんじゃねーの?」「お前を迎えに来てんじゃね?」なんて、冗談にしてしまうくらい、俺たちは無防備だった。


 それが現れたのは、その時だった。


 突然、地面の底から響くような爆音とともに、激しい揺れが店内を襲った。

 俺たちは一瞬で混乱し、何が起きたのかも分からぬままテーブルの下に潜り込んだ。


 揺れは一瞬だったが、強烈だった。

 料理や酒が飛び散り、グラスが割れて床に散乱し、誰かが怪我をしたと叫ぶ声もあった。


 そして、誰かが叫んだ。「おい、外見ろよ!」

 俺たちは恐る恐る窓際へと集まり、外を見た。


 その光景は、今でも夢に見る。

 居酒屋の前の道路が、まるで空襲を受けたかのように巨大な穴でえぐられており、辺りにはパニック状態の人々が逃げ惑っていた。

 黒煙が立ち上る中、車はひっくり返り、信号機は折れ、人々の叫び声が響いていた。


 最初は爆発だと思った。

 ガス漏れ?

 テロ?

 誰もがそんな言葉を口にし、信じられないものを前にして動けなかった。


 なぜすぐに逃げなかったのかって?

 ああ、それはもっともな疑問だ。


 けれど、今思えば当時の日本人には「逃げる」という選択肢がすぐにはなかった。

 地震ならともかく、あんな意味不明な事態に遭遇した時、俺たちは「これは何だ?」と状況を理解しようと立ち尽くすしかなかった。


 戦争もテロも、ニュースでは遠い国の出来事としてしか報じられず、「自分の身に起こるはずがない」と思っていた。

 防災訓練といえば地震や火災ばかりで、都市のど真ん中に突如として穴が開き、何かが現れるなどというシナリオは、教科書にもテレビにも存在しなかった。


 そして何より、あの頃の俺たちには「怪物」なんてのは映画やアニメの中のものでしかなかった。

 まさかそれが現実になるなんて、誰が予想できただろうか……。


 俺たちはその大穴を見てザワザワしていた。

 何かの事故?

 シンクホール現象?

 爆破テロ?

 テレビとか大学で学んだ知識でどうにか事態を理解しようとしていた。

 誰もが口々に「まさかガス管か?」「地下鉄の事故か?」とか、もっともらしい仮説を立てようとしていたが、それらはすぐに打ち砕かれた。


 その穴の中から、信じられないものが現れた。


 最初に出てきたのは、まるで人間の腕とモグラの手を組み合わせたような、異様に太くて長い巨大な腕だった。

 その腕が地面を掴み、それが這い上がってきていた。


 その腕に続くように、頭部が地上に姿を現した。

 牛の角を生やした恐竜のような、異形の顔。

  大きな口がカッと開き、無数の鋭利な歯が並ぶ。

 その顔面は茶褐色の鱗に覆われ、目から、異様な獰猛さを感じた。


 鼻孔からは蒸気のような白い息が漏れ、吐き出すたびに周囲の気温が一瞬で変わるように感じた。


 巨大な身体が地面を這い出してくるたびに、道路は陥没し、ビルの壁が崩れ落ち、近くの電柱は次々に倒れていった。

  駐車していた車両は片っ端から押し潰され、警報音が狂ったように鳴り響いていた。


 あまりの非現実さに、誰もその場からすぐには動けなかった。

 漫画や映画の中でしか見たことのない“怪物”という存在が、今まさに、現実として目の前に現れていた。

 その光景は、まるで別の世界に入り込んだかのような錯覚を引き起こした。


 脳が理解を拒否する中、怪物は空を震わせるような咆哮を上げた。

 その叫び声は耳を塞いでも防げないほど凄まじく、まるで空襲警報のような音圧に俺たちは思わず耳を押さえた。

 その瞬間、誰もが本能的に「やばい」と悟った。


「逃げろ!!」


 誰かがそう叫び、その声に突き動かされるようにして、俺たちは一斉に居酒屋の出口へと殺到した。


 通路は混乱と恐怖でパニック状態だった。

 さっきまで笑い声で満ちていた通路が、一瞬で別物になった。

 秩序なんてものは消え失せて、ただ「外へ出る」という一点に、全員が行動していた。

 

 テーブルと椅子がなぎ倒され、靴を脱げた奴、転んで顔を打った奴、友達の手を掴んで引きずるように走る奴。


 俺自身も、無我夢中で出口を目指した。

 誰かの肩を押しのけた感触を覚えているが、出口を目指していたこと以外、自分が何をしたのか正確には思い出せない。

 ただ、「外に出なければ死ぬ」という感覚だけが、全身を支配していた。

 

 走る途中でも、何かが崩れる音やガラスの割れる音、誰かの短い悲鳴が途切れず響いていたが、それを確かめる余裕はなかった。


 ドアを抜けて外に出たとき、目に飛び込んできたのは、完全な地獄絵図だった。

 俺たちが外へ出るまでのわずかな間に、周囲は完全に崩壊していた。

 

 火の手が上がり、車のクラクションがけたたましく鳴り響き、建物のガラスが粉々に砕けて飛散する音、逃げ惑う人々の悲鳴が四方八方から聞こえてくる。

 逃げている人々は方向も何も関係なく、ただ怪物から遠ざかろうと必死に走っていた。

 ぶつかって、倒れて、それでも立ち上がって、また走る。


 完全な混乱状態だった。


 そして──そいつは、そこにいた。

 さっきまで穴の中にいたはずの巨体が、すでに完全に地上へ姿を現していた。


 大きさは、周囲の建物と同じか、それ以上だったと思う。

 近くで見ると、もはや「生き物」というより、動く災害そのものだった。


 巨大な前脚が振り下ろされるたびに、建物も道路も砕けた。

 アスファルトがめくれ上がり、その下の土ごと吹き飛ぶ。

 その衝撃で、近くにいた人間がまるで小さな人形のように軽々と宙に浮いたのを見た。

 彼らが地面に衝突したときには、もう動いていなかった。


 怪物は、まるで目に映るすべてを敵と見なしているかのように、建物をなぎ倒し、逃げる人々を無差別に踏みつぶしていった。


 何よりも衝撃的だったのは、それが1体だけではなかったということだ。


 俺たちは怪物から逃げようと、奴の咆哮が響いた方向の反対側へ駆け出した。

 だが、その逃げ道の先、街角の向こう側から、大通りを破壊しながらもう1体の怪物が現れた。


 俺たちの後ろで暴れ回る怪物と全く同じ姿で、しかもそれよりも巨大な別個体。

 人々の悲鳴が二倍にも三倍にも膨れ上がった。

 絶望した時の人って、ああいう声を出すんだと、あの時初めて知った。


「何だよこれ……嘘だろ……」


 誰かの声が、俺のすぐ近くで漏れた瞬間だった──その怪物の腕が、横薙ぎに振られた。

 建物の壁ごと、俺の目の前にいた群衆が、まとめて消えた。

 瓦礫と一緒に、何もかもが巻き込まれて、跡形もなくなった。


 ……あの光景は、今でもはっきり覚えている。


 そこから先は、もう記憶が曖昧だ。

 

 何も考えず、ただ走っていた。

 立ち止まれば死ぬ。

 それだけが、唯一の確信だったが、どこに向かえばいいのかは分からない。


 だから、空いている方向に走るしかなかった。

 冷静さなんて、欠片も残っていなかった。


 群衆の流れについていくこともあれば、目の前で建物が崩れた瞬間に反対方向へ飛び退くこともあった。

 自分で判断しているのか、それともただ反応しているだけなのか──そんなことすら分からなかった。


 誰かとぶつかって転びかけて、そのまま引きずるように立ち上がるのを繰り返した。

 足の裏の感覚は、ほとんどなかった。

 何かを踏んだ記憶はあるが、それが何だったのかは──今でも思い出したくない。


 呼吸は乱れていた。

 喉が焼けるように痛くて、空気を吸っているのか吐いているのかも分からなくなる。


 それでも、止まるという選択肢だけはなかった。


 ……大阪駅にたどり着いたのは、偶然だ。

 本当に、ただの偶然だった。


 怪物と遭遇してから、どれくらい走り続けていたのかは分からない。

 時間の感覚は完全に失われていたし、どの道を通ってきたのかも覚えていない。

 方向感覚なんて、とっくに機能していなかった。


 ただ、人の流れに押されるようにして走り、危険そうな音や振動から逃げるように進み続けた結果──気がついたら、大阪駅にいた。


 そこも安全な場所ではなかった。

 すでに何千人という人間が、同じ考えで駅へと押し寄せていたんだ。

 広いはずの構内は、人で完全に埋め尽くされていた。


 前方は、人、人、人だった。

 隙間なんてほとんどない。


 進もうとしても進めないが、後ろからさらに人が押し寄せてきて、止まることもできなかった。


 押されるままに、半ば無理やり構内へと押し込まれた。

 足が地面についているのかどうかも分からないような感覚だった。

 自分の意思で歩いているのか、それとも流されているだけなのか、区別がつかなかった。


 周囲では怒号と悲鳴が入り混じっていた。


「押すな!」

「子どもがいるんだ!」

「止まれ!」──そんな声があちこちから上がっていたが、誰もそれを聞く余裕なんてなかった。


 全員が同じ方向を見ていた。

 とにかく、ここに入れば助かるかもしれない。

 根拠のない、ただの思い込みだったが、あの状況では、それにすがるしかなかった。


 俺は群衆の一部として流されながら駅構内へと入り、気がつけばテレビのある待合室の方向へ足を向けていた。

 

 正直、あの時の自分が何を考えていたのか、はっきりとは思い出せない。

 

 ただ、情報が欲しかったんだと思う。 

 何が起きているのかも分からないまま、ただ状況に振り回され、逃げることしかできなかった。

 だからせめて、「何が起きているのか」だけでも知りたかった。


 それに、あれだけの人間が周囲にいるという事実が、ほんのわずかだが安心感を与えていたのも確かだ。


 一人で逃げていた時とは違う。

 ここにいれば、自分だけが取り残されることはない──そんな考えを、無意識に求めていたのかもしれない。


 今振り返れば、あれは気休めだ。

 「一人で死ぬかもしれない」という恐怖を薄めるための群集心理みたいなものだったが、あの時の俺にはそれで十分だった。


 実際、この時になってようやく、友人や先輩とはぐれていたことに気づいた。


 逃げることに必死で、頭の中から完全に消えていたんだ。

 さっきまで一緒に笑って、酒を飲んでいた連中のことを。


 それで、ようやく人が集まる場所に来て、人に紛れて安心感を得てから、初めて彼らの安否を気遣う余裕ができた。


 あいつらは無事なのか。

 どこにいるのか。

 今、何をしているのか。


 そういう当たり前のことを、ようやく考えられるようになった。


 ……結局、彼らと再会することはなかったがな。

 

 待合室の前は、すでに人で埋め尽くされていた。


 誰もが同じことを考えていたんだろう。

 押し合いへし合いしながら、皆が前に出ようとしていた。


 肩と肩がぶつかり、息がかかるほどの距離で人が密集している。

 汗と埃の匂い、誰かの香水、それに血のような鉄臭さが混ざって、空気がひどく重かった。

 怒号も飛び交っていた。


 俺も、その中に割り込むようにして前へ進んだ。


 人の肩を押し、腕を掴んで隙間を作り、半ば無理やり身体をねじ込む。

 今思えば、相当無茶なことをしていたと思う。


 それでも、どうにかして前に出た。


 そして──人の隙間から、ようやくテレビ画面が見えた。


 その瞬間、思考が止まった。


 画面には「緊急特別報道」のテロップが出ていた。

 アナウンサーの声が何かを叫んでいたが、周囲のざわめきと混ざって、ほとんど聞き取れなかった。


 映像は、上空からの中継だった。


 ヘリコプターからの俯瞰映像。

 揺れるカメラ越しに映し出されていたのは、崩壊した街だった。


 見慣れているはずの景色が、まるで別の場所のように変わっていた。

 道路は裂け、建物は崩れ、煙が何本も立ち上っている。


 そして、その中を──怪物が、3体。

 はっきりと映っていた。


 俺が通っていた大学。

 昼間、文化祭であれだけ人が集まって、笑い声が絶えなかった場所。


 大阪大学のキャンパス周辺が、画面の中で破壊されていた。


 講義棟に1体が体当たりするだけで、分厚いはずのコンクリートの壁が、まるで紙細工みたいに崩れ落ちていく。

 衝撃のたびに、内部の教室や廊下がむき出しになった。

 掲示物や机、椅子が宙に舞って、瓦礫と一緒に外へ吐き出される。


 その崩れた隙間から、人が飛び出してくるのが見えた。

 文化祭の後片付けか、あるいは打ち上げの前後だったか何かで、まだ校内に残っていた連中だろう。

 教師か、職員か、あるいは学生か──判別はつかなかった。

 

 彼らは何が起きているのか理解できていないまま、それでも逃げなければならないと分かっている顔で、必死に逃げていた。

 だけど、どれだけ全力で走っていても、あの怪物の前では、その動きはあまりにも遅かった。


 次の瞬間、怪物の脚が振り下ろされた。

 

 地面が跳ね上がり、砂煙が巻き上がる映像は、画面越しでも衝撃が伝わってくる感覚さえあった。

 踏み潰された場所に、もう人の形は残っていなかった。

 人の形どころか、そこに何かがあったという痕跡すら、一瞬で消されていた。


 別の個体は、地面を掘り返すようにして建物の基礎ごと破壊していた。

 まるでそこに何かを探しているかのような動きだったが、理由なんて分かるはずもない。


 3体目は、ただ歩いているだけだったが、その「歩く」という行為だけで、周囲の構造物が次々と崩れていく。

 それだけで、十分すぎる破壊だった。


 ヘリのカメラが揺れた。

 距離を取ろうとしているのか、映像が不安定になる。


 アナウンサーが何かを叫んでいた。

「前例のない事態です──」

「現在、政府は──」

「直ちに避難を──」


 断片的にしか聞こえなかった──というより、頭に入ってこなかった。

 目の前の映像が、すべてを上書きしていたからだ。

 

 周囲がざわめいていた。

 誰かがその場で崩れ落ちて泣き出していた。

 誰かが「嘘だろ」と繰り返していた。

 携帯電話を取り出して、必死に誰かに連絡を取ろうとしている者もいたが、回線はすでに混雑していたのか、繋がっている様子はなかった。

 何度もリダイヤルする音だけが、やけに耳に残った。


「大学だ……あれ、うちの大学じゃないか……」


 同じ大学の誰かだろうか。

 どこかから、そう呟く声も聞こえた。

 俺も、同じことを思っていた。


 さっきまで、そこにいた場所だ。

 つい数時間前まで、笑っていた場所だ。


 それが今、画面の中で壊されている。

 人が簡単に、消えていく。


 ……そこで、限界だった。


 映像がようやく現実として頭に入ってきた時、膝から力が抜け、立っていられなくなってその場にへたり込んだ。

 頭の中が真っ白になり、次第に周囲の喧騒が遠くに聞こえていく気がした。

https://www.pixiv.net/artworks/146347319

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