Data 75. 求道の果て
Data 75. 求道の果て
目の前の視界が、ぼやけて暗くなっていく。
死んだ……?
痛い……。
鷹司に腹を貫かれ、初めて感じるこの世界の痛みに、俺は成す術もなく倒れ伏すことしかできなかった。
「まだ息があるか、しぶといやつだ」
痛い……。
貫かれた腹が。
動かない腕が。
このまま消えるしかない運命。
それが無残に散っていく仲間たちの姿と共に脳裏へ浮かび上がり……それが、痛い……。
……生きてる。
俺はまだ痛みを感じるほど、生きてる……!
「死ね」
振り下ろされた剣を受け止め、伝わる振動が俺の痛みを刺激する。
俺は、まだ死んでいない……!
火薬を爆発させ小さい自爆を起こした。
爆風によって俺と鷹司は互いに逆方向へと吹き飛び、なんとか距離を取る事が出来来た……。
「悪あがきを……」
……皆。
俺には、まだやる事が……。
ここで俺が死ねば、この災厄を終えた後……。
皆が消えてなくなってしまう。
それだけは、嫌だ……!
「立つか……お前の得意な術は通じんぞ。 譲り受けた神の権能でな」
確かに何故か、術が使えなかった。
戦況を変えるために俺がこの世界で選んだ戦法。
それが、使えない。
ヤツに授けられた神の権能で封じられていたんだ。
俺達の世界ではまるで歯が立たなかったように。
術が使えなければ、このままじゃ俺はヤツに殺されてしまう。
心の底から溢れる焦燥感の中で光明を模索するが、解決の術など微塵も生まれず。
世界がスロウになる錯覚と共に、鷹司が構え、俺へと刃を振りかぶった。
もう、腕も動かず、俺にはそれを止める術がない……。
「なに……?」
「貴方は、一人ではありません」
Akiさん……!
彼女が俺への攻撃を防いでくれた。
そして来てくれたのは、彼女だけではない。
「言ったでしょ。 隣にいるって」
「無事か!?」
Maria……Sigさん……。
「らしくねーな。 最後まで足掻くぞ」
「遅れてしまい、申し訳ありません」
Sukune……ヒーくん……。
……きてくれたのか。
「皆……都市は、大丈夫なのか……?」
一抹の不安を取り払うように、Sigさんは軽く笑った。
「多くのプレイヤーが、アナートマンに集まったんだ。 各都市の事は心配するな」
ログインが禁止されていたプレイヤーは、開発会社のアナートマンに集まったのか……。
そこからログインし都市を防衛するために各所へ送られているという。
「戦況はお前たちが不利なことに変わらん。 残影、ヤツらを葬れ」
皆の特徴や存在を模した残影がまた動き始めた……。
スキルを使えない状態じゃ……いくら皆でも……!
「この時のためだったんだ。 私の中に眠っていた力……」
「Maria……?」
Mariaの中に眠っていた力。
彼女のクリスシステム【無原罪の乙女】……。
それは、俺達に掛けられた呪いや制約を……取り祓い、浄化するものだったんだ……。
この力はきっと、エインヘリヤルや奈瑠美さんが、彼女に託した希望だったんだ。
「回復OK! これで動けるっしょ?」
「まるで勝利の女神だな」
……俺はまだ立ち上がれる。
苦楽を共に乗り越えた仲間が、隣にいてくれる。
「貴様ら……」
残影の力が上がっていく……。
それは皆が対処してくれるだろう。
俺は……。
「Iruka。 貴様は俺が潰す」
「鷹司。 決着をつけよう」
ヤツとの因縁に、ここで決着を付ける。




