Data 74. 心の在りか
Data 74. 心の在りか
「生きていたんだな。 鷹司 巳葛……」
「大方、俺がどうなったかは想像がついていたようだな」
やはり……。
ヤツは死んでいなかった。
密室で完全に存在を消したカルデアの頭、鷹司 巳葛。
目の前の不気味に笑う存在は、己自身をこのCSOの世界へと移していたんだ……。
「どうやって……そんな技術までカルデアは持っていたのか?」
「俺達は所詮、人類を模した存在だ。 そんな過ぎた技術はもっているわけがない」
自分自身を存在事、CSOの現実世界へと移動させる。
その技術はカルデアが持っていたわけではないという。
「なら……」
「そうだ。 この世界の観測者……神だ。 俺は選ばれたんだ。 この世界の神にな」
「人類を滅ぼす神に……? その神が俺達やこの世界の人類を狙うなら、なぜお前は滅ぼされないんだ?」
ヤツは全てが思い通りに運んでいるかのように愉快に笑う。
そして、口を開いた。
「お前は何も知らなくていい。 なぜなら、お前はこれから俺に殺されるからだ」
「忘れたのか? ここでは、俺の方が強い」
……まずいな。
「相変わらず威勢だけは良いな。 思えば、そのハッタリに今まで俺は乗せられていた。 情けない話だ。 消えろ過去の亡霊」
「四天霊達が……!」
共に戦っていた四天霊たちやその力が、鷹司の一声により元の場所に還っていく……!
そして、ヤツの身振りひとつで、残影たちが忠実な騎士のように立ち上がった。
「殺せ」
残影……!
その強力な敵たちは、よく見覚えのある動きを介していた。
それは、俺が毎日見てる動きだ。
Maria、Akiさん。
SukuneにヒーくんやSigさん……。
「相変わらず、タチが悪いな」
「この世界で活動するお前たちのデータは採れている」
ここは退くしかない……!
「無駄だ」
結界……!
バトルフィールドのような仕切りに囲まれ、逃げ場がない……!
「簡単に逃がしちゃくれないか」
「確実に息の根を止めてやる」
……戦うしか、ない。
「一番肝心なデータは採れていないみたいだな」
「お前という存在だけは何故かデータが認識できなかった。 おそらく神の片割れの仕業だろう」
やはり、奈瑠美さんの存在を知っているのか……。
彼女が俺に託してくれたメモリーカードが、データ採取を防いでくれていたんだ……。
そのおかげで首の皮一枚繋がっているが、迫りくる残影達は俺に反撃の機会すら与えてくれない。
このままじゃジリ貧だ。
だが、仲間たちが来てくれるはず……!
「増援を期待しても無駄だ。 今頃、魔物が各地を攻めている。 標的は八重垣だけではないぞ」
「なに……!?」
鷹司は、八重垣だけではない……やはり、ヤツはこの人類の文明を全て滅ぼすつもりだ。
「鷹司、お前は……何が目的なんだ!?」
「……俺はな、Iruka。 本物になりたかったんだよ」
本物……。
「俺たちの世界が偽物だった。 それだけじゃない、俺たちの存在さえもまやかしのものだった。 お前はそれを聞かされた時にどう感じた?」
俺達の世界は、幻想で……今いるこの世界こそが本物。
そして、俺たちは、偽物……。
敵の攻撃が止み、Kazuraは口を開き語り始めた。
「今まで信じてきたものや生きてきた世界が全てまやかしだった。 それを聞かされた時にな、俺はすぐにこう思ったさ」
「本物になるしかない。 とな」
お前は……。
「俺は本物になり、俺にとっての理想の世界を作り上げることに決めた」
「本物になった俺が、お前たち偽物を導いてやることにな」
「そして、そのためにはお前が邪魔だ」
「お前を殺し、俺はここで新たな存在へと昇る……本物になれるんだ!」
……違う。
俺は、俺にとっての本物は……存在そのものじゃない。
「鷹司。 俺も……本物になりたかった」
ずっと、思っていた。
まやかしのあの世界で生きていて、生を実感できない、全てが偽物かもしれない。
日常を生きるたびに心が乾いていき、感情が揺さぶられない。
あの架空の世界では、生きた心地がしなかった……。
ずっと……偽物だと思っていた。
「でも違ったんだ」
夢を通してこの世界に来て。
仲間と出会って……俺は共に苦しみを乗り越え、絆を深め合ってきた。
友人の苦境に心を苦しめたり、この世界の人たちの悲しみに共感したり。
共に痛みを乗り越える喜びを知り、互いを想い合い力を合わせる尊さを知った。
「俺が……俺達が感じていた心は、本物だ」
「俺達は既に本物だったんだ」
俺達があの世界で感じていた事。
この世界で感じた事。
全て、本物だったんだ。
作られた存在かもしれないけど、俺達の心は、もう本物だったんだ。
「世迷言だ……俺たちはどこまでいっても偽物でしかない。 だからこそ、本物の導き手が必要なんだ。 そのためにお前を殺す」
「俺は、例え偽物だったとしても最後まで抗う。 偽物から生まれた心が、本物でない道理はない」
……鷹司の目の色が変わった。
真の理解者を求めていたかのような悲しさは消えてなくなり、ただ目の前の存在を消し去る事を目的とした冷たい眼光。
……。
ヤツが踏み込んでくる。
術でいなして、迎え撃つ……。
「力が……!」
スキルが、使えない……!
「死ね……」




