Data 72. 手の平の盤上
Data 72. 手の平の盤上
俺たちプレイヤーは、魔物の群れを作戦を通して迎え撃っていく。
前衛に配された部隊による連携を用いて、大群を削いで後退し防衛戦へ移行する作戦だ。
前回と似たような連携を行うが、今回は都市の防衛隊には主力部隊の一つを残している。
そして足の速い俺の部隊や騎馬隊を中間へと置くことで状況を見てどちらの増援にもいける。
『魔物が手強い。 俺達は後退する』
前衛部隊を率いる仲間の一人から各隊長への通信が入った。
やはり、前衛で制圧しきれないか。
公にされたCSOの世界が本物だという真実。
それによって、ただでさえログインしている人間が減り俺たちの戦力は前回より心もとない。
同盟の練度こそ深まったが、やはり大規模な戦いは数が多い方が有利だと実感する。
遠くへ鳴り響く戦場の喝采を見つめていると、急に戦場の空気が変わるのを感じた。
なんだ……?
『ふたた――きをむか――つ!』
通信の制度が急に悪く……。
仲間は再び敵を迎え撃つ、と言いたいのだろう。
「おい、聞こえるか!?」
ダメだ。
問いかけに返ってくる声はなく、虚空にある沈黙のみが焦燥感を刺激していく。
何らかの妨害が入り、俺達の連絡手段が断たれた……。
落ち着け。
こういった時は、前衛は中間地点まで後退。
敵の制圧力が高い場合は余力のある俺達が時間を稼いだ末に後退する。
そしてこちらの勢力がまだ優位な場合は連携を続けていく。
事前の作戦を頭の中でおさらいしていると、味方達が後退していく姿が見えた。
敵の勢いが激しい……!
「時間稼ぎを優先した後に後退しろ!!」
己の部隊へとそう告げて、俺たちは敵の波を足止めしていく。
魔物を打ち倒していくが、敵の勢いが今までよりずっと凄まじい。
まずい、ここで数を減らさないと……八重垣は滅ぶ……。
「皆と後退してくれ」
「Irukaは?」
「俺はなるべく数を減らす。 八重垣を頼む」
クラスメイトである部隊の副長へとそう告げて、俺は一人前へと出た。
魔物の群れは凄まじく、敵を数体ほど倒したのちにすぐに敵の津波に飲まれていってしまう。
これが、最後の災厄……。
――――――
「副隊長。 Irukaは?」
「Irukaは……一人で足止めをする。 俺達は八重垣に戻り敵の襲撃に備えるんだ!」
副隊長は仲間へとそう言い放ち、前線へと背を向けて皆で後退していく。
仲間の一人が振り返れば、部隊長であるIrukaが一人敵の群れへと突っ込んでいく姿があった。
最初こそ敵をいなし屠っていったが、数の暴力に圧倒されすぐに敵の波へと飲まれてしまう。
「Iruka!」
仲間の声が響き、部隊は自分たちの隊長を心配するように立ち止まった。
「やはり無茶だ! 数が多すぎる!」
「俺たちも……!」
「ダメだ! 俺達は八重垣を頼まれたんだ! Irukaを信じろ!」
仲間たち自分たちが慕う隊長へ加勢しようとするが、副隊長はそれを止める。
仮にここで自分たちが前に出てしまえば全滅し、八重垣を守るための戦力が減ってしまう事が目に見えていたからだ。
部隊は数秒程静止して、敵の波へと飲まれたIrukaの戦う姿が完全に見えなくなった。
仲間の一人がIrukaの増援へと一歩踏み出そうとした時、Irukaのいた場所から揺らめく真紅の光が放たれていた。
「あれは……!」




