Data 69. 真価への問い
Data 69. 真価への問い
俺達は、最後の戦いを終えた後に消える。
アナートマンでそう告げられてその証拠を見せられた。
ブラックホール。
この世界を消すために生成されたであろうブラックホールが、宇宙で観測されたそうだ。
これを知るものはアナートマンに加え、この世界の一部の権力者たちくらいだという。
全てを飲み込み消滅させてしまうその黒き深淵は、力を蓄えており。
逢魔の災厄を終えた後にどんどん大きくなっていくだろうと言われている。
その深淵を俺達も見せてもらった。
まるで、こちらを観測し続けいつでも消し去れるようなその不気味な気配に肝を冷やすことしかできなかった。
これが、俺達をアナートマンへと呼んだ理由だそうだ。
これが、さきほどのあの話を、事実だと裏付ける証拠。
「これを知った上でどうするか。 仲間に話すのか、それとも……。 全て君たちの判断にゆだねよう。 君たちが戦わないからと言って誰も攻めたりしない。 ただ、後悔しないようにね」
武内さんはそう言って、俺達と別れた。
せめてもの間安らかに過ごしてくれと言わんばかりに緩やかに揺れる電車の中で、俺たちはただ眩しすぎる太陽の光に照らされることしかできなかった。
真理愛も覚悟していたみたいだが、少し現実を受け止め切れてないような雰囲気だな。
俺も、同じだ……。
けど俺は……。
「真理愛。 まだ予定は空いてたりするか?」
「う、うん。 もちろん」
少し動揺が伝わってくる。
だからこそ、こんな時は気分転換をすべきだ。
「ここって……」
「今日はさ、もしかしたら皆も呼ばれてるかと思って……行けたらいいなと思ってたんだ」
辿り着いた場所は動物園だ。
俺達は早速、中へと入り普段の日常とは違う風景を楽しんでいく。
パフォーマンスを行う動物を眺めたり、触れ合ったり。
普段の生活では感じられないような、生き物たちの迫力に心を奪われていく。
「みてみて! この子カワイイ! なんか目元が眠そうな時の飛鳥馬みたい!」
触れ合い所で真理愛が、人間の相手をして少しくたびれた様子のモルモットを抱っこして見せて来る。
「……俺はこんな顔してないって」
「気が抜けてるときはこんな顔だよ~」
先ほどの声にならない動揺は嘘のように消えて、真理愛も楽しんでくれていた、と思う。
一通り楽しんだ後に帰路へと着き、景色の良い高台にある公園へと向かった。
そこで座り込み、夕日が沈み宵闇に包まれていく空を眺めれば星々が微かに光りはじめていた。
「飛鳥馬さ、今日はありがと」
「あぁ。 この前のお返しだよ」
俺が責任感のみに追われていた時。
真理愛は俺の隣にいてくれた。
そして、大事な日常がある事を教えてくれた。
今日はそのお返しみたいなものだ。
俺の決心はあの時から揺らいでいない。
今まで仲間と過ごした日常、その中で感じて育まれて芽生えたもの。
それは、俺の心の中に在り続ける。
そして、そう感じているのは俺達だけではない。
あの世界の人も……この世界の住人も、こんな穏やかな日常を大事にしているんだ。
俺達が最後に消えてしまうとしても……。
「俺は、戦うよ。 例え最後の一人になっても」
「……私も」
……。
「私も戦う。 だから、一人じゃないから!」
「あぁ、ありがとう」
俺達は、初めて出会った時のように握手を交わした。
後日。
俺たちは聞いた話の全てを、いつもの仲間たちへと伝えることにした。
「皆。 急に集まってもらって悪い。 これから……話すことはたぶん……いや、確実に真実だろう」
皆の目が、本物を見定めようとする真剣なものへと変わる。
だが、真理愛は俺へと親指を立てて励ましてくれた。
話そう、皆へ。
「今なら引き返せる。 知らなかった方が良いと思えるかもしれない。 でも俺は、それを知った上で……最後の、心のある選択をするべきだと思ったんだ」
「いいぜ。 話せよ」
Sukuneが当たり前だと言った風に食い気味に言葉を返してくれる。
それに続くように、いつもの仲間たちは俺の話を聞くために心の準備を終えた事を示した。
「それじゃ……皆へ話す……」
……。
「俺たちは……」




