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Data 64-A. 蔓延る影 Part1



 災厄の日がやってきた。

 俺たちは都市を守るための防衛網を敷いて、魔物達の襲来を待っていた。

 

 少し前にギルドメンバーと軽い衝突があり、Satsukiを仲間に迎え入れて……。

 彼女にCSOの世界が本物であることを明かした。

 当然、俺たちの住む世界が仮想世界だという事は伏せてある。

 それを知るのは、俺とMaria……それに武内さんや奈瑠美さんくらいだ。


 あれから、俺たちにできる事はやってきた。


 メンバーとの衝突後、俺たちのギルド【ヴァルプルギス】の枠組みを、ランキング上位を狙うグループと楽しむことに重点を置いたライト層のグループに分けた。

 上位を狙うグループはSigさん達のWalküre(ワルキューレ) Tearsティアーズと協力して最前線で連携を取っていく。

 別のギルドも俺たちへ対抗意識を燃やし、徒党を組み始めている。

 魔物討伐に置いて風向きはこちらにあるだろう。


 前線に強力な手合いを配置してもやはり、基本的には数多くの魔物が漏れてしまう。

 そう言った点は、ライト層に任せ彼らには都市の周囲や内部の防衛をしてもらう。

 

 そして……懸念点は前回発生していたという残影トレーサー……。

 強力な残影はSigさん達さえ苦戦する事が判明している。

 それが大群で襲来してきたら多くの前線プレイヤーも苦戦し防衛は突破されるだろう。


 俺たちも当然、都市の周囲を調査したが古代の遺産の影はなかった。

 それに反し、もし残影トレーサーの大群が来たとしても、今回は俺たちとは別のギルドもやる気を出しており過去一の防衛戦線だ。

 都市部も無傷という訳には行かないだろうが、必ず守り切れる。



――――――


Data 64-A. 蔓延る影 Part1


――――――



 見張りの一人が双眼鏡を除き、周囲へと張りつめた声を響かせた。


「敵襲だ!!」


 最前線にいる俺達の部隊は、身を引き締めた。

 迫りくる魔物に対し自身が生き延びる事を優先し対応していく。


 作戦の流れは、俺が率いる部隊の囮から始まる。

 最前線で敵を引き付けるように戦い、瞬時に撤退。


「引け!!!」


 その後、Mariaの魔法部隊が強力な魔法を敵の大群に撃ち込んでいく。


「討てぇ!!!」


 大魔法によって敵の戦力を大幅に削ぐが、大群は簡単には削れず勢いよく都市部やプレイヤーを狙い進軍してくる。

 魔物の波に飲まれないように、魔法隊も瞬時に撤退だ。


 Sukuneの率いる呪術部隊による真言が唱えられ、金縛りにより魔物の最前線の一団が足止めされる。

 そこに魔法部隊の第二激が撃ち込まれる。


「……」


 削がれた残りの戦力を、Satsukiの部隊が刈り取っていく。


 敵戦力は大幅に削がれ、魔物の第二陣が来る前に部隊を整えながら後退。

 最前線から都市部に辿り着くまではこれを繰り返し、防衛線に移行していく。


 これが、俺たちが立てた作戦だ。

 今までの逢魔の災厄は、プレイヤーによる都市部の防衛一辺倒であった。

 今回は都市部から離れた場所に防衛戦線を構え、待ち伏せというアドバンテージの回数を増やす。


 これで序盤は楽に乗り越えられるはずだ。

 それを示すように俺たちのギルドが陣取った範囲は、魔物漏れも少なくスムーズに大群を討ち滅ぼせている。


 通信を聞けば都市部にもある程度魔物が向かってきているが、それは問題なく倒せている。

 同じ手順を繰り返し、作戦が上手く運んでいる事に一息吐くと、新たな通信が入る。


残影トレーサーらしき敵影を発見。 魔物の大群に混ざっている』


「きたか……」


 一番の懸念点である残影トレーサーが、魔物達に僅かに混ざっているという。

 俺達は後退し、前衛はAkiさんの率いる近接戦の得意な戦士部隊や、正面戦闘に強いSigさんたちに任せよう。

 この部隊は俺たちの連合の主力部隊だ。


 後は……回復部隊を最前線の後衛に残して、俺たちは都市に戻り漏れ出た魔物を倒せばいい。


『都市の内部に残影トレーサーが大量発生してる……! 救援を頼む!』


「なに……?」


 最前線を主力部隊へ任せてから半刻ほど、都市部からの救援要請の通信が入った。

 通信越しに、周囲から空を割くような悲鳴が耳へと届く。


 なぜだ……。

 最前線から漏れ出た魔物は残りのプレイヤーで楽に対処できるはずだ。

 嫌な予感に胸を支配されそうになるが、一先ず息を吐いて心を落ち着かせよう。


 リリス……!

 状況は分かるか!?


<周囲を観察した結果、魔物が外から侵入した形跡は僅かです>


 防衛はちゃんと機能している……。


<都市の内部から、残影トレーサーが湧いているのかもしれません!>


 内部から……残影?


「急いで後退するんだ!!」


 都市部へと後退していた俺たちは、その足を共に速めるが……。

 間に合うか……?


 おそらく……現在、正面で戦っている主力部隊は引き出されたんだ……。

 カルデアも壊滅し、敵を魔物の大群だと思って甘く見ていた。

 裏にはまだ……意図を引いてる存在がいたんだ……。


 山岳地帯で対峙したあいつは残影トレーサーなんかじゃなかったのかもしれない……。

 あいつは、Kazura……生きていたのか?



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