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Data 62. 別離の遺産



 新たにギルドを発足してから、俺たちは無事に逢魔の災厄を乗り越えることができた。

 そして今日は、打ち上げパーティーだ。


「Iruka! すげーよ! 俺たちランキング3位だぜ!」


 今回の逢魔の災厄でのギルドランキング。

 1位のWalküre(ワルキューレ) Tearsティアーズは、2位のギルドと大差をつけており。

 俺たちは僅差で3位。


 このままいけば、CSO屈指の有力ギルドとなるだろう。


 3位になれたのはWalküre(ワルキューレ) Tearsティアーズとは、戦場で連携を取り……Sigさんが率いる一団がこちらに敵を多く任せてくれたおかげでもある。

 パンテオンが解散して散り散りになったメンバーを取り込めればより大きくなり、逢魔の災厄を確実に防ぐ事ができるはずだ。


「ギルドランキング3位にかんぱーい!」


 宿祢が音頭を取り、ヴァルプルギスのメンバーは打ち上げを楽しんでいた。

 皆が楽しむ中、喧騒を離れ……俺はバルコニーの影で一人考える。


 今回の逢魔の災厄で、確かな手ごたえを感じた。

 俺たちはこの世界を……そして、俺たちの仮想世界を構築しているエインヘリヤルを必ず守り切れる。



――――――


Data 62. 別離の遺産


――――――



 翌日。

 いつもの討伐ミッションを終えて、皆はログアウトし、俺は一人ティルナノーグへと向かう。

 リリスがお茶を淹れてくれる傍らで、CSO内でメンバーの管理と新たな部隊編成を考えていた。

 すると、通信の知らせが鳴り響く。

  

 Sigさんからだ。


『Iruka。 今、何をしている? 時間はあるか?』


「もちろん。 どうかしたんですか?」


『この前の逢魔の災厄についてだ』


 確か、この前は……。

 前線を張るSigさん達が討ち漏らした魔物の大軍を倒していた。


 その時に、厄介な敵がいたという。


『そいつは、影を人間の形にしたような姿で……私たちと似た能力を使っていたんだ』


「【残影トレーサー】ってやつですか……?」


『かもしれないな。 私達も初めて遭遇し手間取ってしまったんだ』


 【残影トレーサー】。

 最近CSOで噂になっている、エネミーかプレイヤーかも分からない正体不明の存在。

 プレイヤーのコピーのような戦闘をすることから付けられた名前だ。


「魔物が大量に後ろに来たのは、それが理由だったんですね」


『そうだ。 ともかく気を付けろ。 これからは一筋縄ではいかなくなるかもな』


「Sigさん。 【残影トレーサー】の出た場所は覚えてますか?」


『遭遇した場所ならな。 今、地図を送ろう』


 地図が送られてきた。

 行ってみるか。


『すまないが、私もこれからやることがある。 もし行くのであれば充分に気を付けるんだ』


 最後にそう言って、彼女は通信を切った。


「リリス。 少し調べて来るよ」


「かしこまりました。 護衛として彼女を連れて行ってください」


 そう言って、リリスはティルナノーグへと居座っている朱雀の杏ちゃんを呼び出した。


「以前にワシを追い込んだ化け物のことじゃろう? ワシが言っても仕方ないのじゃ」


「あれはたぶん、特殊な敵だよ」


 あれは……おそらくKazuraを模した敵だ。

 普通のプレイヤーとはわけが違うだろう。


「ならなおさら護衛は必要ないじゃろう。 あいつを除けば、今のヴァルハラにIrukaに敵うヤツなんていないじゃろうし」


 そう言って杏ちゃんは読みかけの電子書籍をちらちらと見てる。

 続きが気になるみたいだ。


「まぁ、俺は一人でいいよ」


 だがリリスは納得せず杏ちゃんを無理くり護衛に付けた。


「貴方は最近だらけすぎです。 少し太ったのではないですか?」


「ふ、ふとっ!? ワシのどこが太ったというんじゃ?」


 ……。


「し、仕方ないの。 ワシも行くか」


 こうして俺は杏ちゃんと共に、Sigさんが記したマップの地点へと向かった。


 広い荒野には何もない。

 しかし、その奥の森。

 都市から大分離れたその大自然には、現地民は必ず近づかないという。


「行ってみよう」


「ここは強力な魔物も多い。 気を抜くでないぞ」


「あぁ」


 俺は杏ちゃんと共に森の中の先へと進む。


 結構奥まで進んだが、代わり映えしない景色が続く。

 魔物は強いがネームドや上級もいないければ、逢魔の災厄も過ぎ去ったばかりで数も少ない。


 代り映えするような事は何もないな……。

 踵を返そうとした時、杏ちゃんが何かを感じとった。


「何か、今おかしな感覚がしなかったか?」


「おかしな感覚?」


「うぅむ。 磁場が狂っているような感覚がしたのじゃ……」


 コンパスを取り出し確認してみると、その磁針は振り回され弧を描いていた。


「Iruka。 客じゃ」


「これが、残影トレーサーか……?」


 俺は杏ちゃんと共に残影トレーサーを打ち倒した。

 あっけなかったな。

 前に退治した時とは違い、動きがかなり鈍かった。


 今まで聞いていた、プレイヤーと似たような異能の力もない。


 残影の来た方向を逆算し辿っていくと、コンパスの磁針がピタリと止まった。


「地下通路……」


「怪しいな。 用心するんじゃ」


 地下へと続く遺跡の入り口のようなものへと入り込み。

 その階段を下っていく。


 まるで、ティルナノーグへ続く地下通路のようだ。


「……これは」


 その奥で立ち止まり、俺たちは小規模な地下空間を見下ろす。

 視線の先には、エインヘリヤルの外装と似た機械が存在していた。


「厄介じゃな……」


 そして、残影トレーサーの大群が彷徨い新たに産まれては消えていた。



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