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Data 57. 英雄の遺伝子



Data 57. 英雄の遺伝子



 仄かな光を放つクリスタルを模したメディカルマシーンが佇む薄暗い部屋。

 その医療器具の中では、リリスが眠っている。


 俺たちは【円融の都・八重垣ヤエガキ】で霊峰・転輪の守護神である暴走した青龍を鎮静化させた。

 そして、青龍の持っていた如意宝珠を譲り受け、今手に持つそれには朱雀・白虎・青龍のエネルギーが込められている。


 これをこの医療装置にセットすれば、彼女は回復するだろう。


 何故か俺を慕い。

 この世界に降り立った時からサポートしてくれて……。

 俺が、カルデアの存在から、Kazuraから狙われていた事も知っていたような口ぶり。


 リリス。

 君はいったい、何者なんだ。


 元気のない彼女の姿を見ていると、俺の心の奥から深い悲しみが浮かびあがってくる。

 彼女が目覚めれば、この気持ちの正体も分かるのか?


 僅かな疑念の渦を抱えながらも、俺は仲間たちと顔を見合わせた。


「リリス……教えてくれ」


 俺はこの先に眠るもう一つの謎を解き明かすため。

 そして、リリスを回復させるため、如意宝珠をセットし装置を起動した。


【ガーディアンプログラムを検知しました。 四天霊のエネルギーを用い守護者リリスを回復させます】


 いつも俺の脳内で聞いていた声とは違う機械音が周囲へと鳴り響く。

 部屋の装置が起動して、暖かな黄金の光が回路を満たし、クリスタルの中へ流れ込んでいく。


 俺たちは息を飲み、その様子を見つめていた。


「……皆さま。 この度はご苦労をおかけしました」


 リリスは目覚め、入り口が開かれたクリスタルの中から一歩踏み出した。


「体調は……大丈夫か?」


「相変わらずお優しいですね。 貴方が知りたいのは、そんなことではないでしょう」


 そう。

 本当に俺が知りたいのは、なぜ彼女は俺の事を最初から知っていたのか。

 なぜ俺の事を気にかけてくれていたのか。


 そして、この世界の何を知っているのか。


 けど、俺は……リリスを大事に想っている。

 この世界に来て彼女の声を聞いて感じた安心感。

 あれは偶然じゃない。


 俺の知らない何かが、彼女の事を大事に想っているんだ。


「君の安全が第一さ」


「皆様のおかげで、体調は万全です。 答えましょう、私の知る限りのことを」


 ……。


「君は、何者なんだ?」


 この事は皆へと既に話しているが……。


 リリスはサポートAIとして俺と繋がっていた。

 この古代都市ティルナノーグを守りながらも、俺に付き添い、陰ながら俺を補助する事で守ってくれていた。

 彼女という守護者が俺に肩入れする理由。

 それは、この世界と俺たちの繋がりとも関係のあるものなのか?


 俺は、それが知りたい。


 リリスは心の底の記憶を呼び覚ますように深く瞬きをして、澄んだ瞳を開いた。


「……かつて、この世界を救った救世主がいます」


「逢魔の災厄に滅ぼされそうになった人類は、異界からやってきたその救世主に希望を見出しました」


「彼を指導者として、人類は子孫を繋ぎ今日という日まで生き延びてきたのです」


 ロストテクノロジーを持った、異界の住人。

 その人物たちの一人が指導者となり、迫りくる逢魔を打ち払ってきた。


 そこの拠点が、今の【円融の都・八重垣】のある場所。


 人類の手に余る文明は逢魔の災厄に狙われてしまう。

 いつか、人間がその技術を正しく扱える時のために。

 未来のために八重垣に残されていたテクノロジーは上塗りされ封印された。


 そうして出来たのが【霊峰・転輪】。


「転輪を率いていた一人の指導者は、その地で自らの命と引き換えに古代の技術を封印しました」


「その指導者は各地で信仰され、この世界の希望として残っていったのです」


 このCSOで俺たちは、教会を通して転移ができる。

 各地で残された強い信仰が、教会にある転送装置を守り繋いできた。


「そして、八重垣の地にあった最重要のアーティファクト……」


「貴方たちの生きる場所と、この世界を繋ぐ古代の遺産【エインヘリヤル】」


「それだけは、何としても守り通さなければならない」


 ……この世界の逢魔の災厄を祓うために、俺たちを求道者として呼ぶ必要がある。

 だから、アーティファクトであるエインヘリヤルだけは守らなければならなかった。


「そのエインヘリヤルが隠されたのが、この古代都市。 ティルナノーグです」


 かつてのこの拠点は、八重垣の後釜だった。

 しかし逢魔の災厄は留まるところを知らず、エインヘリヤルを狙い続けた。

 だから、古代の英雄たちの拠点であったこのティルナノーグはエインヘリヤルと共に封印されたのか。


「そしてエインヘリヤルの役割は世界を繋ぐことだけではありません」


「英雄たちの遺伝子も繋ぐ必要があったのです」


 ……そうか。


 Christal Salvator Online特有のゲームシステム。

 Chrisクリス systemシステム


 Chrisクリス systemシステムは、英雄たちの遺伝子を呼び覚ましスキルを扱えるようにするもの。

 そしてCrystalクリスタルの魔力を用いて力を発現させる……。

 俺は今まで、このゲームタイトルはクリスタルを用いたからこその名前だと思っていた。

 しかし違う、クリスタルはただの媒介装置だ。


「気付いた方もいるようですね」


「エインヘリヤルを通して、この世界のあなた方には英雄たちの遺伝子が組み込まれています」


 Chrisクリス systemシステムの名前の由来。

 それは、己の中のChrist=救世主を呼び覚ますための技術。


「それを発明した技術者の、そして指導者の名前はキリスト」


「私の……主です」



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