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Data 54-A. 八重垣の聖王 Part1



「うまいっ!!」


 杏ちゃんが嬉しそうにそば麦をすすった。

 

 和の雰囲気が織りなす古風な建築物が立ち並ぶ街並みの中。

 俺たちは茶屋で食事にありついていた。


「ここへきたらやっぱりこれは外せないのじゃ」


「杏ちゃんはよく来るの?」


「昔はな。 数千年前に四天霊となってからはあまりこれてなかったからのう」


 杏ちゃんは世界の守護者である四天霊だから、ここにはこれなかったのか。


 富士山のような壮麗な山【霊峰・転輪テンリン】。

 そしてここは、その麓になる王朝【円融の都・八重垣ヤエガキ】。

 周囲の自然と調和したような文明であり、様々な文化が混ざり合い融和してきた歴史の深い都市らしい。


 俺たちはこの八重垣ヤエガキの地へと、四天霊の一柱である青龍に会うためにやってきたわけだ。

 茶屋を後にして、Maria、Sukuneと共に俺たちは麓の神社へと向かう杏ちゃんの後を付いていく。

 一応、眠るリリスを守るためにAkiさん達はティルナノーグで待機している。


 これから俺たちの方は、この八重垣の姫巫女様とお会いして青龍との面会を設けようという予定だ。

 意気揚々と先を行く杏ちゃんだが、俺は密かに一抹の不安を憶えていた。


「まぁ、まかせておけ。 ワシは顔パスというやつだからな! 大船に乗った気でいるがよいぞ!」



――――――


Data 54. 八重垣の聖王 Aパート


――――――



 着いた。

 ここが神社か。


 辺りでは参拝客が姫巫女さまと世間話に花を咲かせ戯れている。

 境内の入口のすぐ側には、大きな桜の木が祀られている。

 

「すっごーい!」


「こりゃ見事だな」


 MariaとSukuneの感嘆を聞き流して、俺は桜の木を見上げて息を飲んだ。

 この神社の御神木だろうか。


 神聖な氣を放つその巨木は、俺たちの来訪を歓迎してくれているのだろうか。

 目の前では花びらが風に運ばれて宙へと踊っていた。


「お待ちしていました」


 いつの間に俺たちの側に?

 声の方へ目を向けると、厳格な雰囲気を漂わせる翁の姿があった。

 彼は穏やかな表情で俺たちへと自己紹介をし、神社の先へ促した。


「巫女様にお会いしにきたのでしょう。 こちらへどうぞ」


「だから言ったじゃろう?」


 杏ちゃんが得意げな顔をして俺の顔を見る。


「あなた方が来ることは、我々も分かっていました。 わたくしめは姫巫女様より、案内役を仰せつかったのです」


 目の前のご老人も杏ちゃんの存在に気づき案内してくれたのだろうか。


「しかし、子連れとは予想外でしたな」


「全くじゃ。 しかしたまの子守も年長者の務め。 それが求道者ならばなおさらの責務というものじゃな」


「……?」


 話が嚙み合わないまま、俺たちは神社の敷地のさらに奥へと通された。

 そこの社務所へ入ると一人の女性が俺たちを歓迎してくれた。


「ようこそおいでくださいました。 私は八千代やちよと申します」


 この神社の姫巫女様である八千代さま。

 彼女はここで祀られる姫神さまと交信しメッセージを受け取る役割があるそうだ。


 俺たちは自己紹介を済ませて、手を取り合った。

 彼女は、どことなくMariaに似ている……?

 そんな第一印象を受けた。


「あなた方が来ることは、信託を経て分かっておりました。 逢魔の災厄を退けるための異邦の存在がこの世界に顕現すると……」


「そして。 彼はこの王朝へと来訪し、新たな世界の指導者となる……そう告げられています」


 新たな指導者?

 そんな存在が俺たちの中にいるというのだろうか。


 それが誰の事なのか俺は姫巫女様へと問う。


「それはいったい誰の事ですか?」


「それは、登ればお分かりになるかもしれません。 貴方たちの目的は……おそらく青龍さまにお会いすることでしょう?」


 そう言われて、俺たちは霊峰である転輪山へと登ることになった。

 俺たちは姫巫女さまの跡をついていき、転輪山の頂上を目指す。


「姫巫女様は……」


「どうか私の事は八千代とお呼びください」


「八千代さまは、Mariaとどこか似ていますね」


 俺の言葉で共に転輪山を登っていたMariaが少し照れたように口を開く。


「私そんなお淑やかに見えるかな~」


「……これも、運命かもしれませんね」


 運命か。

 この山を登っていると、俺たちがこの世界に来ることも。

 逢魔の災厄と戦う事も運命だったのではないだろうか。


 そんな気にさせられる。


「皆様は、この転輪山の成り立ちにご興味はありますか?」


 八千代さまのその言葉を聞いて、山登りを始めてからSukuneが初めて口を開いた。


「そりゃ、面白そうだ。 この世界の歴史に関係しているんですかい?」


 Sukuneの言う通り、俺も興味がある。

 この山に登ることになって不思議な巡りあわせを感じる理由が少しは分かるだろうか。


「では、登りながらご説明しましょう」


 俺たちが登山をするその間、姫巫女さまがこの転輪山と王朝【円融の都・八重垣ヤエガキ】の成り立ちを説明してくれることになった。



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