Data 50-A. 0への序奏曲 Part1
俺たちはCSOへと集まっていた。
これからMaria、Akiさんにヒーくんと。
このいつものメンバーにSigさんを加え、リリスの待つ古代都市ティルナノーグへと向かう。
「リリスへは既に話してある。 行こう」
イルカ村の少し外れにある遺跡へと辿り着き、俺たちは洞窟の中へ入っていく。
リリス……。
俺がCSOに入った時から、見守っていてくれた。
素性を話さない彼女を少しばかり訝しんだこともあったが、俺はずっと心の中で彼女を信頼してきた。
だが、Kazuraとの戦いを終えてから……あの時を最後に彼女とは連絡がつかないんだ。
俺へと注意を促し、俺が狙われていた事も知っていたかのような言葉。
そして、開発会社アナートマンとの繋がり……。
君はいったい……何者なんだ?
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Data 50-A. 0への序奏曲 Part1
――――――
長い階段を下りて、俺たちは広大な地下空間へと辿り着いた。
仄かに光る壮麗な古代都市を目にし、各々が感嘆の声を漏らしていた。
俺も初めてここを見た時は唖然としたな。
そして、俺たちを迎えてくれた竜人の少女が一人。
「待ってたわ。 この先を案内する【リーリム】よ」
「リーリム、久しぶりだ」
「あんたは相変わらず、緊張感がないわね」
彼女とは、以前ヒーくんと共に精霊を保護しに行ったときに会ったんだよな。
そしてフードを被ったカルデアの男たちと戦ったんだ。
俺たちは皆へリーリムを紹介した。
「リーリム。 リリスは無事なのか? 連絡がつかないんだ」
「それは……来ればわかる。 さ、ついてきて」
……。
「ここが古代都市なのか……まるでサルバトーレのようだ……」
「ここは遠い昔、世界を守るために戦った人たち……英雄が多くいたのよ」
「君は、その時代まで生きていたのか?」
「私はまだ18よ! ここの事は、ご先祖様から語り継がれているのよ」
と、年上だったのか……。
「アンタ今失礼なこと考えた?」
「い、いえ」
俺たちはリーリムのあとをついていき、研究室のような施設へと辿り着いた。
その部屋には……氷の結晶のような機械の中で眠る一人の女性の姿があった。
「リリス!」
「大丈夫よ。 エネルギーを消耗したから、回復のためにこの中に入ってるの。 命は安全よ」
「そ、そうなのか」
彼女は、ここを一人で守れるほどの実力者だ。
そんな存在がメディカルマシーンに頼らなければならないほどの事が……。
「何があったんだ?」
「まずはそこから話すわ……」
先ほどまで明るく話していた俺たちの仲間は状況を察して黙り込み、冷たい空気が流れていた。
「アンタがKazuraとかいうのと戦いを終えてすぐ後に、襲撃があったの。 敵は撤退していったわ。 ただ、ここはお姉さまのおかげで守りきれたけど……エネルギーを消耗したってワケ」
そうだったのか。
リリスは、俺をサポートしてくれていた。
その時に……。
ここを狙っていたのは……カルデアの面々だ。
そして……行方をくらました存在……。
「その襲撃者は……Kazuraなのか?」
「私には分からない……ただお姉さまのあんな表情は……アンタには心配かけないようにしたいから連絡しないでって……」
俺たちの話に違和感を憶えたSigさんが口を開いた。
「まってくれ。 Kazuraはどうやってか分からないが、密室から逃げたはずだ。 その後にすぐどこかからログインしていた、という事か?」
「それは……私には良く分からないけど……」
無理もない。
リーリムはおそらくこの件に関わってない。
ただここを守るために、リリスと共に戦っただけだろう。
またもや皆が押し黙り、場の空気が重苦しくなる。
すると放送のように一人の男の声が周囲へ響き渡ってくる。
『ここからはワタシが説明しよう』
この声は……。
「武内さん……」
『いかにも。 ワタシは武内 弓輝。 ここに集まったプレイヤー諸君とは一度はお会いしたことがあるね。 ご無沙汰している』
やはり、俺たちはともかくSigさんも会っているのか。
事件についての聞き込みか何かだろうか。
俺たちは少し驚いたが、武内さんの話へと耳を傾ける。
『さて、ここに君たちが集まることはリリスさんを通してわかっていた』
『ここに来たのは、今までの件や逢魔の災厄。 その裏で何が行われていたか、真実を知るため。 だろう?』
『無論。 それを知れば、これからもゲームを楽しむことはできなくなるだろう。 そして、生じた責任に対しての苦悩を抱くことになるかもしれない』
『君たちにはあるか? 責任を負う覚悟が』
……俺たちは、目を見合わせた。
「聞かせてください。 あの事件の裏で、何が起こっていたのか……」




