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Data 49. 不変の意思



Data 49. 不変の意思



 朝か……。

 Kazura……鷹司タカツカサ 巳葛ミカドとの決着をつけて2日が過ぎた。


 優雅に歌う飛ぶ鳥の声を聞いていると、俺はずっと平穏の中にいて、誘拐されていたなんてことが夢だったかのように感じる。


 だけど夢じゃない。

 ……あの時の不安や緊張感。

 仲間が駆け付けてくれた希望や喜び。

 全て本物で、いまこうして生きてる。


「シャワーでも浴びて、朝食にするか」


 犯罪者シンジゲート、カルデア。

 ヤツらの行っていた地下での違法な賭け事やデスゲーム。

 そういった悪事は世間へと明るみになり……。

 ウチの生徒が関わっていたことも判明し、学校全体は臨時休校。

 つまり、しばし休学だ。


 本当は、あんな事件が起こったのはCSOが原因でもあるので学校からログインは禁止されているが……。

 当然俺はログインして、Sigさんに事件後に判明している事を聞いた。


 まず……俺たちの同級生である尾藤などの生徒が事件へと関わっていたことについて……。

 学校側はこの不祥事を監督責任として重く受け止め、警察と協力して安全確認を行っている。


 尾藤の一派は……少年院へと送られるそうだ。

 俺は尾藤にハメられた。

 だが……あの時、俺の友人を……宿祢を助けてくれたのも尾藤だ。


 警察の取り調べでは、尾藤は……この件についてずっと葛藤していたらしい。

 そして、最後にあんな行動に出たんだろう。


 俺が鷹司と決着を付ける前に言っていたあいつの言葉……。


『俺たちはこのモニターでお前の戦いを見てる。 兄貴を……止めてくれ……』


 あいつは、自分の兄貴を。

 鷹司 巳葛を止めて欲しいと願っていたのかもしれない。


 尾藤は最後に俺に賭けてくれたんだ。

 今やあいつは、ちゃんと自分の罪と向き合い償うと言っているそうだ。

 他の取り巻きも尾藤を慕っているのか、大人しくしているらしい。


 そして……これは極秘だが……。

 この件で政界の大物も逮捕された。


 この国でサイバー犯罪やネットを通した事件を取り締まる防衛省 サイバー防衛局長【鷹司タカツカサ 軽魔カルマ】。

 犯罪組織カルデアが高い技術力を持つ理由がこれだ。


 Sigさんはサイバー犯罪対策課のサイバー捜査官。

 サイバー防衛局に不審な点を感じた彼女は、秘密裏にこの事件を追っていたということだ。


 尾藤や鷹司タカツカサ 軽魔カルマといった主要人物や、組織に関わっていた者はほとんど芋づる式に逮捕された。

 だが、重要人の中で一人、行方をくらませたやつがいる。


「……」


 【鷹司タカツカサ 巳葛ミカド】。

 あいつは俺との決着の際、厳重にロックされたままのシェルターのような部屋に。

 いわば完全な密室に閉じこもっていたはずだ。


 しかし、中身はもぬけの殻。

 秘密の通路もどこかにあるわけではなく、存在そのものが神隠しにでもあったようにサッパリと消えていたという。

 残っていたのは、CSOへとログインするデバイスと謎の装置のみ……。

 その装置は危険と判断されて、丁重に管理、部屋への立ち入り禁止となっているそうだ……。


 窓の外を見れば、今でもどこかであいつが俺の首を狙っているような。

 そんな錯覚に陥る。

 犯罪組織カルデアの頭だったあいつは、警察の手を逃れて今もどこかで何かを企てているのかもしれない。

 

 ……その鷹司と尾藤は、共にサイバー防衛局長【鷹司タカツカサ 軽魔カルマ】を父親に持つ片親違いの兄弟であるらしい。

 俺は、実は尾藤は不器用なだけで、そんなに悪いやつじゃなかったんじゃないかと思う……。


 取り調べではイジめの件も触れられて……あいつは、翔をそこまで虐めているわけではなかったらしい。

 本当は取り巻きのやつらが原因だ。

 尾藤はむしろ、あいつらに虐められないように翔へと高圧的に接することであいつらが手を出すのを未然に防いでいた。

 翔もそれは若干感じていたみたいで……翔の不登校の理由も虐めではなく、俺が足を折ってしまったのは自分のせいだと感じたからだ。


 自己肯定感の低かった翔は、それで自分はいない方が良いと感じてしまったのかもしれない。


 そして、翔の問題に俺がしゃしゃりでたことによって、尾藤は俺が疎ましく見えたんだろう。

 本当に悪事を働く人間が近くに、ましてや家族や肉親にいて……同じようにお前は動けるのか?

 あいつは、俺にそう問いたかったのかもしれない。


 俺や宿祢が戦う姿を見て、今まで見て見ぬふりをしてきたあいつは……最後に考えを変えてくれたんだ。


 腹違いの兄である鷹司や、権力を持った親父との関係の中で尾藤もきっと、葛藤していたんだと思う。


「……ごちそうさまでした」


 そういった事を、俺は昨日ログインしてSigさんに教えてもらった。

 彼女が嗅ぎまわっていたパンテオンの子羊は、犯罪組織カルデアの下請けギルドだろうということだ。

 あのゲーム内で、自分たちの姿を出さずに多くの駒を操っていたんだ。

 ゲーム内でのヤツらと……カルデアの繋がり。


 鷹司が言っていた、俺が知らない事と関係があるのだろうか?


 そうして、Sigさんは俺に現在判明している事を教えてくれて、ログアウトしていった。

 彼女は今は忙しくログインする暇はあまりないが、俺への説明のために待っていてくれたそうだ。

 元々、あの事件の関連者や黒幕を追うために長期ログインしていたらしく。

 これからは今まで通りにログインできなくなるだろうと言っていた。


 けど、このゲーム内での情報収集のために一人の協力者を雇った……と言っていた。

 そいつはこれから、俺たちに協力してくれるという。


 そして、今日。

 俺たちはまた集まる予定だ。


 目的地は一つ。

 リリスの待つ、古代都市ティルナノーグへ……。



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