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Data 47. 遺伝の隔世



「リリス、頼んだ!」


 俺はリリスの展開したゲートをくぐり、逢魔の災厄が起こっているアスカアラムの外れに降り立った。

 Kazuraの行方は……。


<飛鳥馬さま。 Kazuraから招待状なるメッセーが届いております。 この先の森にある屋敷で待っているそうです>


「助かる」


 リリスへと礼を言い、俺は森の中を進んだ。


 なんでやつらはNPCに触れられた?

 なぜ魔物を使役し、村を襲っていた?

 なぜたかが一ゲームで、大所帯な組織が関わっていたんだ?

 そして……なぜ俺を狙っていたんだ? 


 やっと、βテストからの因縁に決着を付けられる。

 そんな想いが俺の胸の中を締め付けていた。


 鬱蒼とした森へ進めば、古びた屋敷の正面にヤツは立っていた。



――――――


Data 47. 遺伝の目覚め


――――――



「きたか、Iruka」


「Kazura……。 どうして、わざわざ俺をゲーム内に呼んだんだ?」


 ……ヤツは小さく笑い、俺の目を見据えた。


「お前が、俺の計画に邪魔だからだ」


「俺が……?」


 確かに、俺はこいつらの計画を邪魔するような動きをしてきた。

 だが、どうせゲーム……現実への影響は……。


 いや……この前の裏取引、ゲーム内から現実に渡っていた精霊。

 アルンの存在……。

 こいつらは、何を隠してるんだ?


「何が目的なんだ……?」


「話したところで、お前みたいなおめでたいやつは理解しようともしないだろうな」


 俺には、理解できない事……?


「英雄であるお前を、俺の手で殺す」


 俺を、殺す?


「ここで死んでも、プレイヤーは死なない……」


「お前の部屋のデバイスには、デスゲームと同じ仕掛けがしてあるんだよ。 闘技場と違い、ロックは外せんぞ」


 ロックだけじゃない。

 ここには、警察は来ないだろう。

 二人だけで俺を確実に殺すために呼んだんだ。


「そして、俺を殺さねば逢魔の災厄は止められないぞ。 お前ももう薄々分かってるだろう? ここで俺を討たなければ多くの人間が死ぬんだ」


 ここの逢魔の災厄。

 それはKazuraを倒さねば消えることはない。

 そして、殺人装置をデバイスとして使っているかもしれない人間達。


 俺が逃げる理由を持つ事も、ヤツは許してくれないようだ。

 もちろん、俺もそんなつもりはない。


 ここで、決着を付ける……。


 俺の覚悟を決めた表情を見たKazuraは、既に目的が成就したかのように目を見開きわらった。


「お前を殺し、俺はここで新たな存在へと昇ることができるッ!!」


 とてつもなく早い踏み込み、そして鋭い剣……。

 重い……!!

 ヤツの一撃から、絶対にここで俺を殺すという本気の殺意が伝わってくる……!


 鋭く重い剣捌き。

 それに、ヤツの技術力が合わさり……防御するのがやっとだ。

 反撃しようとすれば、こちらが隙を付かれるッ!!


 魔術を使う隙も無い……!


「どうした!! お前の力はそんなもんか!?」


 くそっ!!


 剣戟の合間に、的確に拳や蹴りの打撃を入れてくる。

 クリーンヒットは免れているが……このままでは負ける。

 なんとか突破口を絞り出すんだ!! 


 俺は何とか背を向けて距離を取り、火薬袋を投げつけた。

 躱されたか……。


 だが、相手の対応の隙を付き心を落ち着かせて新たに魔法剣を展開した。

 陰の心・無心の呼吸。


(魔法剣・炎刃)


「炎の刃か、俺には通用せん!!」


 そして次の魔法の準備も完了した。


 落ち着け……迎撃して隙をまつんだ。

 好機は必ず訪れる……!


 ヤツは油断しない。

 詰将棋のように確実に俺へとプレッシャーをかけて殺しに来てる。


 ここは凌ぐしかない。


「いいのか? まともに打ち合えばその強力な剣も熱くなるぜ」


「黙れ。 貴様のやることなどお見通しだ」


 俺は防御し逃げ回りながら、魔法剣で打ち合いを繰り返す。

 背後に崖……行き止まり……。

 俺は知らぬ間に、追い詰められていたんだ。


 ……これはどうだ?

 火薬袋を投げ、炎の斬撃を飛ばす。


(火炎魔術・粉刃滅破)


「甘いな」


 道具と魔術を使った爆発も、盾で受け止められてしまう。


(火炎魔術・炎刃壁)


 その隙に炎刃壁を展開できた。

 今までの戦いにより、巻かれた火薬のライン。

 ヤツと俺を隔てる防御壁。


 だが、その火炎の壁も一太刀で切り伏せられる。


 まだだ、ヤツの剣は今までの打ち合いで凄まじい高温になっている。

 だが、俺の持つ剣の刃は魔法現象を防ぐ特殊魔力でコーティングされている。


(魔法剣・氷刃)


 サーマルショックで割る。


「サーマルショックか。 お前は自然を味方につけた戦いをすると報告を受けている。 それが分かっていれば対処などたやすい」


 ヤツは懐に隠していた新たな刃を持ち出した。

 剣を数本隠し持っているのか……。


 これなら確かにコーティングする必要もなく、魔力を節約できる。

 持久戦も想定していたか。


「つまらんな、お前の戦いは答えの見えている戦いだ」


「……」


 呼吸を整えろ。

 集中するんだ。

 ヤツは仕上げのように、俺を仕留めにかかる。

 隙を付かれれば、一撃で死ぬ……!


(氷刃)


(炎刃)


(氷刃)


(炎刃)



「終わりだ」


 まずい……死ぬ……!


「何……?」


 しかし、Kazuraの振り切った刃は空を切り、俺は死線から免れた。

 俺が何をしていたか……悟られたか?


 だが、もう遅い。


「気付いたか? 裏をかくのは得意でも、かかれるのは苦手みたいだな」


「おのれ……」


 俺はその隙を付くように再び戦線離脱し周囲へ身を隠す。

 ヤツの圧倒的スペックを前に、本来ならば俺は防御の果てに殺されるしか手段がなかった。

 だがこのゲームでは俺は魔術を扱う事ができる。

 魔術を使える俺は、その防御時間を形勢逆転の準備時間へと変えることできる。


 俺は距離を取って、現れては剣を振っていく。

 ヤツへ届かないはずの剣。

 しかし、ヤツにとってそれは、万が一のために防がなければならない剣閃へと変わる。

 そして、それがヤツの隙となる。


 もっと速く……! 風を置き去りにするように早く動くんだ……!


 風の姿勢・疾風の陣。


<職業:魔術剣士ルーンナイトの獲得。 アチーブメント:風林火山陰雷の獲得。 隠しアチーブメント:兵法・風林火山陰雷の使用を確認できました>


<新たな職業への転職条件を達成しました。 派生職業へ転職します>


 俺のクリスシステムは……【形無きものを模る力】。

 それだけだと思い込んでいた。


<転職により修正プログラムが起動されました。 Chris:死η蘇ι0空・##??が修正されます>


 俺の本当のクリスシステムは……あらゆるものを変化させる力。

 そして、実体の無いものを生み出す力……。


<Chris:色即是空・空即是色 を再取得しました>


<上級EX:シノビへ転職しました>


 それが、俺のクリスシステムだったんだ。


(陰陽ノ式:蜃気楼分身マリーチカ・アヴァターラ


 炎と氷で大気中の温度差を作り、蜃気楼を産み出した。

 それが敵の視認性を狂わせ、刃の距離感覚を錯覚させる。


 ヤツは反撃をするために攻撃に転じることはできない。

 次々に襲い来る陽炎による分身が、ヤツの注意を分散させ防御を促しているからだ。


 届きそうで届かない無数の刃と、数多の陰による陽動が相手の隙を生み出す。


南無阿弥陀仏ナモアミターユス



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