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Data 45. 死闘




「よぉ、飛鳥馬」


 ……………………………。



――――――


Data 45. 死闘


――――――



「……」


「どうした? 浮かない顔だな」


 ……俺たちはこれから、本当に殺し合うのか?


「宿祢……」


「お前も大事なものを守るために、戦うんだろ? それを忘れるなよ。 本気でやろうぜ」


 なぜ、お前はやつらに従っているんだ。

 まさかずっと……。


 俺にゲームの事を度々聞いてきたのも。

 ゲーム内で俺へ忠告をしてくれたのも。

 あの店で助け舟を出して、気付かせようとしてくれたのも……。


「さぁ、二人は同じ学校の同級生!! いつもと一味違う、愛憎入り混じる戦いになりそうだ!!!!」


 お前は……俺にずっと教えてくれていたんだ……。

 それなのに、俺は……。


 宿祢はログインして、彼のアバターが闘技場の広場に映し出された。


 Kazura……お前……!

 俺がVIP席の方を睨みつけると、ヤツは捕らえられた真理愛の写真が移る携帯を見せてくる。


 今はやるしかないか……。

 俺は、椅子に座り……殺人装置と繋がったデバイスを被った。


「……」


 周囲には観客席が見える。

 俺はアバターとなり、闘技場へと降り立っていた。


「あーあ、やっぱこうなっちまったか。 俺はお前とだけは戦いたくなかったんだけどな」


「宿祢……まさか、お前」


「いや、俺も……。 俺も、初めてだよ。 けど、今まで何人かはこの椅子で死ぬのを直接この目で見てきた」


「……」


 瞳の奥へ宿る彼の覚悟は、とっくに決まっている。

 そんな風に、力強い瞳が俺へと語りかけてくる。

 俺は……。


「おいおい、お前も本気で来いよ。 俺を悪者にするつもりか?」


「違う……俺は……」


 俺も、お前とは戦いたくない……。


「死合い……開死!!!!」


 くっ……!

 一撃が、重い……!


「言っとくけどよ。 本気でやらないと、後悔するのはお前だぞ」


 宿祢が俺と戦いたくないと言ったのは事実だろう。


 しかし、彼が俺へと向けるその刃には本気の覚悟が篭っていた。



――――――



(飛鳥馬……)


 宿祢は、彼へと剣を浴びせながら今までのことを思い返す。


(お前と会ったのは中学の頃だったよな……)



――――――



 中学の頃、宿祢は背が低くてよく周りから舐められていた。

 虐められているわけではない。

 しかし、彼は自分が舐められている事が、どこか人として見られていないのではないか。

 心のどこかでそんな風に感じていた。


「倉橋」


「なんだよ」


「お前の妹って可愛いよな」


 そして、妹も中学へと進学。

 容姿の整った彼と同じように妹も綺麗な顔立ちから人気のある生徒になっていた。


 ある時、本当は嫌なのに先輩から遊びに付き合わされている事を妹から打ち明けられた。

 宿祢は同級生へと直談判したが、自分が小さいからか適当にあしらわれていた。

 時は経ち、その同級生達が後輩を集めて金をむしり取っているという噂を耳にした。


(このままじゃ、あいつの学校生活が……)


 自分の妹から彼らを引き離すために、本格的に話し合いに行ったが宿祢はまたもや適当にあしらわれる。


「なぁ、俺の妹と少し距離を置いてくれよ。 色々悩んでるんだ」


「何に悩んでんだよ。 適当なこと言ってないで向こう行けや」


 ここで引いたら、妹がおかしな道に行ってしまう。


 そう感じた宿祢は、一歩も引かずなんとか交渉しようとした。

 それをしつこく感じたのか、同級生は宿祢の肩を押していびり始める。


「や、やめろよ」


「おチビの宿祢ちゃんが怒った!」


「ギャハハハ!」


「こんなのが兄貴かよ!!」


 宿祢の目の奥に、涙がにじむ。

 悔しかった。

 自分じゃどうにもできない、無力な兄でいる事が。


 小突きまわされる宿祢は、相手を押し返した。


「は? 何やってんの?」


「やり返しただけだろ……! 俺は、ダメなのかよ……」


 力なく言う宿祢へ、同級生は心無い言葉を返す。


「当たり前だろうが!」


 そう言って彼らは宿祢を小突き回し、その力はどんどん強くなってくる。


(くそ……!)


 心の中に悔しさが沸き上がり、泣き出しそうになった瞬間。

 同じ学校の知人が現れた。

 それは、友人ではない。


 ただ学校が同じなだけの知人。

 選択授業でたまに顔を合わせる程度の、そんな同級生だった。


「何してんだよ、お前ら」



――――――



 宿祢の猛攻を、飛鳥馬は防いでいく。

 一方的な攻撃を、もう一方が防ぐだけの単調な戦いが続き、次第に観客からヤジが飛ばされる。


「おい、本気でやれよ」


「充分、本気だ」


「防御だけだろ? 本気で俺を殺しに来いよ! 飛鳥馬!」


 やがて痺れを切らし始めた観客を宥めるために、この場所を仕切っているKazuraが実況を通してある提案をはじめる。


「よりスリルのある戦いを楽しむため、二人の体力ゲージを徐々に減らすことになったぞ!!!」


「この体力の減少でどちらかが死んでしまえば、その要望は聞き入れないというルールが追加された!!」


「これで、殺し合うという選択肢以外はなくなったぞ!!! さぁ、二人はどうなるんだ!?」


 宿祢は友人へと覚悟を促す。


「おい。 いい加減にしろよ。 真理愛は、お前を信じて待ってるんだぞ!! 真理愛が死んでもいいのか!?」


 俺が死んでも妹は少なくとも死なないだろうが、飛鳥馬が死ねば真理愛まで被害にあってしまう可能性の方が高い。

 宿祢はそう考え、飛鳥馬に覚悟を決めるように言葉を投げかける。


 その間にも互いの体力は徐々に減り0へ近づいていく。


(飛鳥馬……あの時、お前のおかげで俺は……立ち向かえたんだ。 お前が一緒に立ってくれたから……)


(俺は上手く立ち回る事ばかり考えて、今回の件も……でも本当は俺も。 お前みたい真っ直ぐになりたかった)


(俺は、お前に……憧れてたんだ……)



――――――



「おい。 いい加減にしろよ。 真理愛は、お前を信じて待ってるんだぞ!! 真理愛が死んでもいいのか!?」


 宿祢……。

 俺は彼の剣を弾いた。


 弾かれた剣は飛んでいき、地へと突き刺さる。


「……やれよ、飛鳥馬。 真理愛を助けてやれ」


「……宿祢」


 くそ……ギリギリまで……なんとか時間を稼ぐんだ。

 その内に良い策が……産まれるかもしれない……。


 だめだ……宿祢……。


「早くしろよ!!!!!」 


「ごめん……!」


 俺は、宿祢を殺してしまった。



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