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Data 44. 盤上の駒



Data 44. 盤上の駒



<飛鳥馬さま、扉のロックの解除が完了しました>


「リリス、助かった。 君は、いったい……」


<それでは、先をお急ぎください。 お気をつけて……>


「あぁ」


 そう、俺は先を急がなければならない。

 真理愛は無事なのか、早く確かめないと……!


 ログアウトをし、デバイスからメモリーカードを取り出せば、目を覚ました時と同じ不気味な静寂が再び俺を非日常へと引き戻した。


「アルン……ここからは、隠密行動だ」


 言葉が通じているのか、精霊とよく似た子狼のアルンは俺へと2回頷いた。


「助かる。 行こう」


 独房が並ぶ大広間を抜け出すと、かつて人波で賑わっていた事を髣髴とさせるような無人の商業エリアが広がっていた。

 ここは、やはりビルの地下か?


 使われていない広大なフロアは、見渡す限り真っ暗な闇に包まれている。

 エレベーターはもちろん起動していない。

 それに、階段は上へと続くであろうドアが閉まっている。


 くそ……ドアノブを回しながら押したり引いたりして見るが、一向に開く様子はない。

 下へ、行くべきか?


「おい、誰かいるのか?」


 まずい、軽くドアを揺らしただけで気付かれたか?

 フロアに誰もいないからと油断していた。

 階段の下からこちらへ昇ってくる音がする。


 アルンはこちらを見つめた後、階段を降りていった……。

 助かる……!


「わぅん!」


 俺は階段の陰に隠れ、上から様子を伺い好機を待った。


「なんだ、犬か……」


 今だ。

 ヤツが足元のアルンに気を取られしゃがみこんだ瞬間、俺は暗闇から飛び出てヤツの背後から覆いかぶさった。


「だ、誰だ……!?」


 さきほどシルバーにしたのと同じように、チョークをかけ締め上げた。

 上手くいったか。


 こいつもしばらく起きることはないだろう。


「アルン。 サンキュー」


 ……よし、大広間から持ちこんだ結束バンドでこいつを縛り上げた。

 こいつ、尾藤の取り巻きの一人か。

 そいつの服のポケットを弄ると、良い発見があった。


 カードキーだ。


 上のドアには使えない。

 別の場所に必要なのか……。


 先へ進むには下へ行くしかない……この先に行ったら、俺は帰ってこれないんじゃないか?

 そんな予感が、俺の胸の中を支配していた。

 けれど、このフロアに他の通路はない。


 目を閉じ、この先に進んで良いものか一考する。

 すると、俺へと笑いかけてくれる真理愛の顔が思い浮かび、俺は意を決した。


「行こう」


 己の覚悟が消えないように、小声で自分へと暗示をかけ。

 俺は階段を降り、カードキーを用いて先へ進んだ。


 なんだ?

 何かの歓声が……。


「ここは……」


 俺が先へ進むと、そこは中央に大きい広場があった。

 広場には特殊なイスのような装置が向かい合わせで並び、その間には100メートル以上の空間が開けていた。

 周りには熱気に満ちた観客席が、中央の広場を見下ろすように並んでいる。


「地下闘技場……? うわっ!?」


 俺が呟くと、スポットライトが俺へと向けられ視界を光でふさいだ。

 そして、観客の好奇心を湧き上げるようなノリの良い男の声が会場へと響き渡る。


「おっと!! ここで本日のサプライズゲストが飛び入り参加です!!!」


「自分の番まで我慢できなかったのか? まるで血に飢えた猛獣だ!!」


 サプライズゲスト……?


「CSOで屈強なモンスターを一人で打ち倒した、フルダイブの申し子。 今大会が初出場! Irukaの登場だ!!!」


 やはり、俺の現実での姿は割れていたのか。

 実況によって一瞬鳴りやんだ観客の歓声が、より膨らんでいく。


「Iruka選手。 こちらへお越しください!!」


 ……俺は一歩踏み出し、広場にある片方の椅子へと向かう。

 ここで戦って勝てれば、真理愛の無事が分かるのか?


「Iruka選手、意気込みをお願いします!」


 俺は息を吸い、己の動揺を整えた。

 おそらく、全てのはじまりはあいつだ。


 βテスト時、俺と向かい合った謎の不気味な男。

 俺という存在を確かめに学園に来ていた男。

 そして、確証を得るために俺へと近づき、CSOで熊が蔓延る谷へと突き落とした男。

 掲示板で噂を流させ、俺の正体を暴き……今日、尾藤を俺へとけしかけた男。


「Kazura!! 見てるんだろ!? 真理愛は無事なのか!?」


 俺の声に会場は静まり返り、すぐにざわめきが広がっていく。

 そして数秒ほど経ちVIP席の男に気づく……。


 フードで顔を隠した男が二人並んで座っている。

 おそらく一人は俺を連れ去った尾藤だ。


 もう一人のヤツ、おそらくKazuraは実況の男と通信している?


「えぇ。 はい。 了解しました」


 ……。


「ここのボス、Kazuraからのお達しだ!!! この戦いで勝った方の要望を聞くという破格の計らいだ!!!」


「そして、この戦いこそ今回のメインイベント!! 賭け金にボーナスが発生するぞ!!」


 賭けか。

 地下闘技場らしい。


 ここは一旦従うしかないか……。

 これで、勝てば真理愛が無事かどうか分かる……それを信じて戦うしかない。


「さて、ルールのおさらいだ!!! この椅子に座った者のCSOのアバターデータを読み込み、戦ってもらうぞ!!」


「キャラクター格差はもちろん無し。 こちらで調整した構成で戦闘を行う!! まるで現実のファイトのような死闘が繰り広げられるぞ!!」


「そして、負けた方は死に至る。 ルール無用の電脳デスマッチだ!!!!!」


 !?


「さぁ、初出場Irukaへのルール説明を終えたところで、彼の対戦相手を紹介しよう!!」


 待て……椅子に特殊な装置が仕掛けられているのは……そういう事なのか?

 負けた方は……装置から特殊な電流を流されて……死ぬ……。


「涙ぐましい努力も今日で終わりか!? 家族を想い電脳ゲームで資金稼ぎ!!」


「妹の闘病に報い、Irukaを倒し大金を手に入れろ!!!」


 俺の対戦相手の姿が、暗がりから歩いてきて……。

 姿があらわになっていく……。


「家族思いの少年ファイター……」


 嘘だろ……?


「倉橋 宿祢の登場だぁ!!!!!」


 ……。


「よぉ、飛鳥馬」


 ……………………………。



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