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Data 40. 時雨のような事情聴取



「じゃ、朝のHRホームルームも終わりだ。 今日も頑張ってこう」


 いつも通りの朝の行程を終えて、海火ミホ先生は教室から去っていく。


 あの店はいったい何だったんだろうか。

 そして、なぜ尾藤はあの場所にいたんだ?


 アスカアラムでの謎の男。

 そいつと同じような尾藤の言葉。


 バラエティショップカルデア。

 それを知っていた宿祢……。


 先日、共に遊んだ友人の態度や振る舞いを思い浮かべながら、気付けば誰も座っていない空白の座席を見つめていた。

 疑念の渦は収まることはなく、俺は沈み行く貨物船のようにその出来事に捕らわれていた。



――――――


Data 40. 時雨のような事情聴取


――――――



 昼休み。


「ねぇねぇ、何か警察の人が来てるらしいよ」


 真理愛が突然、何か言いだした。

 俺は先日、あの店にいた女性警官を思い出す。

 ……まさか、本当に来たのか?


「別のクラスの子が言ってたんだけど、捜査がなんとかかんとかって話を職員室で聞いたんだって!」


 なるほど、それで警官と思ったわけか。

 流石に学校までは来ないか。


 ただの噂かと安堵していると……


『今から名前を呼ぶ生徒は、至急職員室へ来るように。 尾藤 鎌くん、荒木……銀覇シルバーくん、日暮 翔くん、入鹿 飛鳥馬くん 、倉橋 宿祢くん。 以上の生徒は職員室へ来るように』


 放送が繰り返され再び、俺やシルバーの名前が呼ばれる。

 あいつ、そんな名前だったのか。

 グレるのも無理はない、周りから弄られて性格が歪んでしまったんだろうか。

 なんかかわいそうになってきたな。


 クラス中の注目の的を浴びながらも、俺は一人教室を出て職員室へと向かった。

 集まった俺達は空き教室に連れられて海火ミホ先生から説明を受ける。


「今から、一人づつ生徒指導室に呼ばれる。 そこで二人一組の警察の方から少し聞きたいことがあるそうだ。 嘘偽りなく正直に答えるように」


「……まじかよ」


「この紙に先日アウトレットモール周辺で何をしていたか、考えを整理して書いておけ。 そして今から私語は厳禁だ。 破ったら居残り反省文だからな」


 そして、俺たちは海火ミホ先生の監視のもと呼び出しを待つことになった。

 尾藤、シルバー、翔、順に別室へ呼ばれていく。

 そして昼休みもとうに過ぎ、5時間目の授業が終わる頃……


「……最後に飛鳥馬の番だな。 終わったら学食で昼食を食べていけ、話は通してある」


「はい、ありがとうございます」


 俺は海火先生の後に続いて生徒指導室へ向かい、その扉を開けた。


「やぁ、昨日ぶりだね。 入鹿 飛鳥馬くん」


「こんにちは」


 俺へと軽く挨拶をした、あの時の女性警官。

 そして隣には寡黙な佇まいの男性。

 やっぱり二人一組で行動するんだな、彼は相棒だろうか?


「さて、もう分かっていると思うが、私たちは昨日の件について少し調べているんだ。 協力を頼むよ」


「もちろん、俺も知りたいですから」


「なに……? まさか、君は知っててあの場所にいたのか?」


「やっぱり何かあったんですか?」


 あの施設で、通路の奥で何かが……?


「こちらの質問にだけ……」


 俺の問いへと物静かな男性が口を開いた。

 しかし、目の前の女性の身振りでその男性はすぐに口を噤む。


 おそらく彼女の方が立場は上か。


「悪いな。 こちらから先に説明するべきだった。 君からの質問はNGだ」


「わかりました」


「ただ、こちらも協力してもらっている身だ。 あの奥で何があったか知りたいか?」


 ……。


「朝霧警部……!」


「いいんだ。 この子はな……通知表や普段の素行からも問題ないだろう」


 何か動物の鳴き声がしたあの通路の奥で、何が……。


「あの奥で……違法取引があったんだ。 それ以上は、私からは言えない」


「そうですか……ありがとうございます」


「これで、快く協力してもらえるかな?」


「はい。 もちろん、噓無く答えます」


「助かるよ」


 ……。


 そうして、俺は女性警官からの取り調べを受け終えて……。

 気付けば6時間目の授業も終わりが近づいていた。

 

 今日学校に来ていなかった宿祢は……こうなることを見越していたのか?

 それとも……。


 俺は、電話をかけた。

 その着信音は繋がる事もなく、電波の波にさらわれて消えていった。



――――――



 生徒への軽い質問を終えて、警官の二人は車の中で資料に目を通す。


「現場にいた生徒は、あれで全部ですか?」


 聞き込みを終えて疑念を抱いたままに、女性警官は相棒の問いへ応える。


「いや、休んでいた生徒がいたろう」


「でもその子は、あの関係者用の通路にいなかったはずでは?」


「……飛鳥馬たちを店に、そしてあの通路へ誘導したのはその子だと言っていたろう。 何か引っかかるんだ」


「いつもの考えすぎじゃないですか?」


「この件はそれくらいでちょうどいいんだ。 お前も分かるだろう」


「すみません。 そういえばそうでしたね……」


 男性警官はさきほどの飛鳥馬とのやり取りを思い返しながら、彼女へ尋ねる。


「そういえば警部。 あの子とは知り合いなんですか? 他の子よりどこか親しげでしたが」


「……まぁ、少しな」


 相棒の問いへと軽く応答し、女性警官はあの日のことを思い返していた。


(匿名の通報……あれがなければ、私たちはあの場にいなかった……)


(通報者はあの場にいた誰かなのか? それとも……)


(倉橋 宿祢。 学校で写真を見せてもらったが、私に関係者通路で大声があると知らせたのも、彼だ……)


(おそらく……この学校には何か……)



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