表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/67

Data 39. 隠れ蓑



「でも、なんでチャット切ったの?」


「……それは貴方たち……Irukaさん達の素性を知っていたんです」


 Akiさんにとってそれは、ヤツを信用したのか。

 それとも、危険だと判断して言う事を聞いたのか。


 ともかく、ヤツらは俺たちの素性を知っているという事だけは確かだ。

 これはもう、ゲームだけの問題じゃない。


 何かおかしな勢力がいて……俺たちはマークされている。

 そして、さっきのあいつの言葉。


『お前。 あまり俺たちを嗅ぎまわるな。 それと、こんなゲームやってもろくな事にならないぞ。 早くやめちまえ』


 俺を……俺たちを心配してくれたのか?


 疑問が胸の奥に渦巻くままに一晩を明かして。

 次の日、俺たちは誘拐されたNPC達の救助へ向かった。


 拠点には盗賊団がいたが、俺たちは避難誘導。

 モンスターの討伐を協力し、国の救助部隊が被害者たちを救出した。


 俺は、さきほど盗賊団へと尋ねた。


『カルデアを知っているか?』


『そこまで知ってるなら話は早い。 俺たちは雇われたんだ! カル……』


 ……カルデアの名を口にしようとした途端。

 盗賊団の一人は意識不明となり倒れた。

 それからは、誰一人としてカルデアの名を口にするものはいなかった。


「Iruka。 さっき、NPCに触れてなかった?」


「え?」


 俺がNPCに……。

 さきほどNPCが魔物に襲われた時。

 確かに、俺はへたり込むNPCの手を取って立ち上がらせた。

 単に心から心配して取った無意識の行動だ。


 だが、俺たちは本来NPCに触れることはできない。


 ……思えば、俺は以前もNPCに触れていた。

 βテストの時、逢魔の災厄の時も……幼子の兄弟へ、触れていたんだ……。

 これは、あれはバグなのか?


 このゲームも、謎の組織も……俺たちの個人情報も……。

 フードで顔を隠した不気味な男。

 同じフードを被り俺を心配していた、謎の男……。

 夢へアクセスする会社……アナートマン……。


 そして、リリス。

 君は誰なんだ?


 俺たちは、何をさせられているんだ……?


 俺はこの日、早めにログアウトした。

 頭の回らないままに布団へと潜り、深淵のような疑念の海に沈んでいった。



――――――


Data 39. 隠れ蓑


――――――



「あーすまっ!」


「なに?」


 教室の窓際の席で、心ここにあらずだった俺を心配してくれたのか真理愛が両肩を叩いてくる。


「なに? じゃなくて! 今日さ、放課後アウトレットモール行こうって!」


「ごめん、聞いてなかったよ」


「だと思った。 予定ないでしょ?」


「今日は……ないな」


「じゃ、決定ね!」


 最近、俺たちの元気がないことを心配してくれたんだろうか?

 真理愛のこの優しさにはいつも助けられている。


 アウトレットモールか、良い気分転換になりそうだ。


「そうだ。 翔も誘っていいか?」


「お、いいね! 皆でいこ!」


 そして、放課後。

 真理愛をはじめ、翔や咲月、宿祢と共に、俺たちは学生に人気のアウトレットモールへと赴いていた。


 最近また道場にも行ってるし、ボロボロになった運動着を変えるのにちょうどいいな。


「ちょうど新しい運動着が欲しかったんだ」


「私たちが選んであげる! 一番似合うのにした人が優勝ね~」


 俺のファッション大会がはじまってしまった。


 ゆったりした運動着や、全身タイツ。

 ハイレグ衣装やらを試着させられる。

 しゃ、写真撮るなって……。


「っぷ……ふふふっ! はははは!」


 咲月は俺のおかしな姿に笑いのツボを突かれたのか。

 我慢できずに声を漏らして笑っていた。


 和やかにショッピングを楽しみしばらく、やはり男子と女子で見たいものが違うのか。

 フードコートで休憩をした後は、気付けばいつの間にか男女別れて店巡りをしていた。


 少し時間も経ち、宿祢が何かを思い出したかのように提案しだす。


「あのよ。 面白い店、見つけたんだ。 行こうぜ」


「面白い店、ですか?」


「あぁ、二人ともきっと気に入ると思うし」


 俺は翔と共に、一人喋り続ける宿祢の後を付いていく。


「CSOにはおかしな噂が絶えないだろ?」


「フルダイブを利用してる連中がいるとか、あっちの物品がこっちで取引されてるとかよ」


「で、その噂の一旦を担うような店を見つけたんだよな」


 ……アウトレットモールの屋内から出たな。


「ここだ」


「バラエティショップ……カルデア……」


 そこはアウトレットのすぐ隣に位置していた。

 俺たちは地下にあるクラブへと続くような階段を下りていく。

 真理愛と咲月には後で連絡すれば平気か。

 

 中に入れば、広い店内へたくさんの学生が楽しそうに商品を眺めていた。

 暗い雰囲気の店内を予想していたが、洒落た雰囲気の明るい店だ。

 学生向けのショップか、小物や雑貨などが色々並んでいる。


 それに……。


「気付いたか? CSOに似たアイテムが売られているって、掲示板で見たんだよ」


「あぁ、面白いな」


 実用性のありそうなものから、ただの鑑賞インテリアまで。

 CSOに実際にあるものを真似たものや、ありそうなものが販売されていた。


 なんだか、ホッとしたな。

 結局はこういった店を通じて噂が独り歩きしていったのかもしれないな。

 しばらくすると、宿祢は思い出したかのように口を開く。


「そうだ、トイレ行きたかったんだよな。 二人は?」


「俺も行くか」


「僕も行きます」


 仲良くトリオで連れションだ。

 と思いきや、宿祢は先に真理愛や咲月に電話してくると言い店を出ていった。


 宿祢が教えてくれた方向を行き、翔と共に薄暗い階段を降りてトイレへと向かい要を足していた。

 ここ、本当に使っていいんだよな?


 何か雰囲気が表と少し違うような。

 いわば生徒と教職員のトイレが別れているような、そんな感じだ。


 俺達はそそくさ退散しようとすると……。

 通路の奥から……何か聞こえた気がした。


 今、重要な出来事に立ち会っている。

 そんな予感が胸の中へ立ち込め、俺は耳を澄ませる。


「飛鳥馬くん、どうしたんですか?」


「何か、聞こえないか……?」


「僕には、何も……」


「こっちの方向だ」


 俺は先を行き通路の奥の扉へ近づいていく。

 翔は恐る恐る俺の後ろをついていき、彼も気付いたようだ。


「ホントだ。 何か動物のような……」


 ……。


「おい、お前ら何やってんだ!!!」


 突然の大声に、俺たちは背中を震わせた。

 振り返れば、そこには俺たちの知る顔があった。


 なんだ、お前らか。

 尾藤 鎌と食堂でしつこく真理愛たちに絡んできた取り巻きの一人だ。


「なんだ、お前らか」


「おいおい、ガリ勉の翔ちゃんに、片足ポッキーかよ」


 相変わらずこいつはうるさいな。

 取り巻きは放っておき、尾藤は俺たちへ問う。


「入鹿、なんでここにいるんだ?」


「なんか気になって」


「お前。 知ってるのか?」


 ……尾藤は、何かを知ってる?

 やはりこの通路は、関係者用通路だったのか?


「もうここにはくんな。 とっとと帰った方が良い」


 ……尾藤。

 翔もいるし、帰るか。


「翔、行こう」


「おい、勝手に行くんじゃねぇ」


 いや、尾藤が帰そうとしたんだろ。

 こいつ日本語通じてないのか?


「やめとけ。 めんどくせぇことになる前に帰した方がいい」


「まぁまてよ鎌、無法者にはおしおきが必要だよなぁ?」


 取り巻きは拳の骨をパキパキと鳴らす。

 お前は製氷皿か。


「確かに。 それは俺もそう思う」


 俺は鞄を放り投げた。

 翔だけでもなんとか帰したいが、取り巻きがいる以上は厳しそうだ。

 とりあえずこいつぶっ飛ばせば尾藤は穏便に済ませてくれそうだ。


「お前らの事に決まってんだろ。 やっぱなめてんな」


「やめときましょう、飛鳥馬くん……!」「ったく……。 荒木、おい、やめとけ!」


 ……俺たちが一歩踏み出そうとした瞬間。


「お前たち!!! 何をしているんだ!!!」


 その場の空気が女性の一声で一変した。

 激しい喝だ。

 随分と声を張り上げ慣れている人なんだろう。


 薄暗い場所でも分かるほどにしなやかな黒髪をまとめ上げた鋭い目つきの凛々しい女性だ。

 彼女は勇ましくこちらへと歩いてくる。

 ここの、関係者なのか?


「大声がしたと客から聞いたぞ、君たちはこんなところで何をしているんだ?」


「アンタこそ、誰だ?」


 尾藤は女性へと問う。

 関係者じゃないのか……?


「私の事はどうでもいいだろう」


「うるさいなこの姉ちゃん。 黙って……アイタタタ!アイタタタ!」


 見事な柔術だ。

 尾藤の取り巻きの一人に腕を捕まれそうになった瞬間、彼女はそいつの腕をひねり上げた。

 そして、職務を証明する手帳を見せてくる。


「警察だ。 君たちはこの施設と何か関係があるのか?」


「「いえ、ありません」」


 尾藤と言葉がハモってしまった。


「とりあえず今日は帰れ。 後日、この事を君たちへ聞きに行くかもしれんがな」


 制服で……バレたのか?

 俺たちは薄暗い関係者通路を後に、出口へ向かう。


「君、ちょっと待つんだ」


 警察の女性とのすれ違いざま、俺は手を掴まれて瞳を見つめられた。


「どこかで、会ったか?」


「奇遇ですね。 僕も一瞬、同じことを考えてました」


「バカ、そんなわけあるか。 さっさと行け」


 んな理不尽な。

 そこはかとなく恥ずかしがった女性は、俺の腕を離した。


 翔と尾藤たちと共に、バラエティショップカルデアの扉から出た。

 尾藤は一息ついて俺達へと尋ねる。


「それより、お前らなんであんなとこにいたんだ?」


「噂でおかしなショップがあるって聞いたんだよ」


「そうか。 もうあそこへ関わらない方が良い、それとあのゲームもやめとけ」


 尾藤は、すれ違いざまに翔に一言謝罪して去っていった。

 こいつ……助けてくれたのか?


「尾藤。 サンキュー!」


 俺の声にあいつは何も答えずに取り巻きと共に去っていった。


 それに、アスカアラムで会ったあの男と似たような事を……。

 尾藤、お前なのか?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ