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Data 24. 覚めない悪夢



Data 24. 覚めない悪夢



「バフをかけます!」


「助かる!」


 村の防衛戦が始まり、しばらく経った。

 防衛網を敷いているのは、森林に面する村の侵入口。

 そこから魔物は出現し村へ襲い掛かってくる。


 見知らぬプレイヤー達と協力し、俺たちは村へ侵入せんとする魔物を倒していく。

 幸い多くの魔物は街に向かっているのか、村を攻めている魔物は少ない。


 周囲のプレイヤーも、かなり冷静さを取り戻している。


「これならなんとか行けそうだな!」


「あぁ! 最初はヒヤヒヤしたけど。 これが緊急クエストだったのかな」


 本当にこれだけならいい……。

 しかし、胸の奥がざわつく。

 この嫌な予感は何だ?


 戦闘を続けてしばらく、俺はとある既視感に襲われていた。

 この景色、どこかで……。


 魔物の襲来は一旦止んだ。

 胸を撫で下ろし、次の戦いの準備を進めていると森の奥から謎の化け物の咆哮が響き渡った。


「キャっ!」


「な、なんだ!? 今の!」


 しばらく正面を警戒するが何もない。


「なんだ、ただのこけおどし……」


「伏せろ!!」


 巨大な岩の投擲!!

 隕石の様に降りかかるそれは一人のプレイヤーを葬った。

 彼はホログラムのように消えていく。


 瀕死してサルバトーレに戻ったか。

 復活までは時間がかかる。

 死すれば戦力としては計算できないだろう。


「気を付けろ!! 後続にとんでもない化け物がいるぞ!!」


 勇ましいプレイヤーの一声で俺たちは身を引き締める。


「また岩だ!」


「まかせろ」


 このままじゃ下手をすれば村長の屋敷へ当たる。

 俺は前に出て、岩の側面を受け流し軌道を反らした。


 林の姿勢・柔の陣。


 軌道の反れた岩石は村の一画を破壊したが、村長の家からは大分反れていた。

 上手くいったか。


「おお!」 「やるな!」


 ……岩の残弾がきれたか。

 森からゴブリンの部隊が現れはじめた。


 数こそ多くない。

 昨日までのイベントの方が多かった。


 だが……瞳に宿る殺気や挙動が、今までのそれとは違う。

 そして、数メートル級の大ボスが一頭。


<注意してください。 ゴブリンキングのパワーはギガントゴーレムに引けを取りません>


 それは、まずいかもな。


「気を付けろ、こいつら強いぞ」


 ギガントゴーレムは防御よりのスペックだった。

 おそらく、ゴブリンキングは……テクニックやバランスタイプだ。


 キングの咆哮により、第二戦の幕が開けた。

 プレイヤー達は声をかけ合い、互いを鼓舞する。


「突っ込んでくるぞ! 迎え撃て!」


 ゴブリンキング、あいつが戦線に出たらまずい……!

 村も俺達の防衛も一瞬で崩壊する!


「俺はあいつを止める!」


 ちょっかいをかけて時間を稼ぐしかない!

 今まで氷や炎を刀剣へ付与してきた。

 なら雷も行けるはずだ。

 

(魔法剣・雷刃ライジン

<魔法剣・雷刃が発現しました>


 突進してくるゴブリンたちの合間を縫い、俺はキングに牽制の雷の投げナイフを放つ。

 ヤツはそれを鉄の鉈で弾いた。


 正面から魔法剣で斬りつけるが、これも防御するか。


 やはりゴーレムと違いスピードや技術がある。

 そこまで速いわけではないが、攻撃を躱すだけではいずれ隙を付かれてやられてしまう。

 こちらは敵の一撃が致命的になるが、相手にとってそうではない。


 こちらから仕掛け、コツコツ攻撃を当てていくんだ。


 よし、村の防衛も上手くいってる。

 手ごわいゴブリンが多かったが、皆健闘している!


「くっ……!」


 紙一重で敵の斬撃を交わしたけども、なんつー力だよ。

 風圧だけで頬の肉が持っていかれそうだ。


 蹴り!?


「剣が……折れた……」


 防いだ剣と共に吹き飛ばされた。

 意識が、遠のきそうな感覚……。

 痛みがあると錯覚しそうだ。


 死んだか……?


 目を閉じれば、体が熱くなっていくのを感じる。

 口から滴る血の味も、頬を伝う汗の感触もある……。


 俺は、生きてる……!


 俺はまだ生きてる。

 味方がギリギリで防御バフをかさまししてくれたおかげだ。


 いける、キングは完全に油断している。


 村へと前進していたキングは、片腕を押さえ己の持つ鉈を落とした。

 痺れたか。


 魔法剣・雷刃を用いて、俺は鉈を通しヤツの躰へ電気を帯電させていた。

 これが、俺の目指したこの世界の戦い方だ。

 新たな選択肢を得ることで、どんな強敵にも勝機が生まれる。


「今、解放してやる」


 俺は気配を消して、背後からキングへと触れた。


(迅雷魔術・電導)

<迅雷魔術・電導が発現しました>


 火花のように激しい電流がキングの体内から巻き散るとともに、轟音のような雄たけびが響く。

 それはヤツの最後の遺言となり紅い空へ融けていった。


「す、すげぇ!」 「大丈夫か?」


 勝った。

 俺は、強くなってる……!


「今手貸すぞ!」


「すまない」


 仲間の手を借りて、俺は村の門前へと戻り治療を受けた。

 聖職者がいて助かった。


「ありがとう」


「いえ、それより。 あなたの魔法、とっても不思議ですね」


「あぁ、魔法剣士を目指しているんだ」


「あの強さで上級職じゃないんですか!?」


「今は剣士だよ」


 ゴブリンも殲滅できたようだ。

 これは、皆で掴んだ勝利。


 新たな絆が芽生えていくとともに、冷たい風に汗を攫われながら俺は安堵の息を吐いた。


「そういえば、あんた。 Irukaか? 配信で見てたぜ!」


「Mariaさんと同じパーティーのか!」


「ランキングも上位だったよな、動きもすげえし。 リアルで軍人とか格闘技でもやってるのか?」


「日本古武道を少しな」


「はぁ~、俺には真似できんわ」


 俺たちは、軽く笑いながらも勝利の余韻に浸っていた

 すると森を統べる狩人のような咆哮と共に新たな軍勢が現れた。


 おいおい、冗談だろ。


 それらを率いる巨大な獣は、先ほどのゴブリンキングを上回るような威圧感を放っていた。

 ゴブリンたちは……ヤツらを勝たせるための先兵だったのかもしれない。


 そして、今度こそ死ぬかもしれない。

 俺たちは生唾を飲み込み、震える手で再び剣を取った。

 覚めない悪夢のなか、黒狼の軍勢による狩りが開始された。



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