Data. 19 ジャイアントキリング
光を放つ石が散りばめられた洞窟。
ここで討伐を開始して、1時間程。
この石は宝石ではなく、ただの石だという。
ここはダンジョンのような作りであり、魔物が湧くのは防衛のため。
古代の神殿の跡地であるこの地で、大切な宝物を守るための保管庫だったんだろうという推測らしい。
洞窟の奥には、固く閉ざされた扉があり、そのまた奥にはそれを守る何かがある。
というのがこの地に残された逸話だという。
近くの冒険者がそう言っていた。
――――――
Data. 19 ジャイアントキリング
――――――
「君たち、調子はどうかな?」
Sigridさんだ。
彼女は【Walküre Tears】という通称【ワルキューレ】のギルドリーダーだった。
道理で、整然とした振る舞いが似合いオーラもあるわけだ。
たくさんの人間を纏め上げることができる、しっかりした人なんだろう。
「俺たちはもう少しで、ログアウトしようと思っていたんです」
イベント開始から色々あって、みんな疲れている。
話し合ってあと少しポイントを稼いだらログアウトしようという事になった。
「そうか、残念だ」
「何かあったんですか?」
「この洞窟の最奥に挑もうとしていてな。 君たちの戦いぶりを見て共闘をしようと思ったんだ」
「それは……正直、興味ありますね」
……皆はどうだろうか?
「キリがいいし最後のボスを倒して終わりにしようよ!」
「僕も……何があるのかみてみたいです!」
「面白そうですね! ワタクシも問題ありません」
頼りになるな。
「この通りです」
「急にすまないな」
ワルキューレとは仲良くやっていけそうだ。
Sigridさんのパーティーと挨拶をしていると、一瞬、激しい地響きが俺たちの足元を揺るがした。
「な、なんだぁ!?」
俺たちはおろか、Sigridさん達を見ても何が起こったか分からないといった表情だ。
「リーダー! 大変です! 最奥の扉が勝手に!!」
「なんだと!?」
ワルキューレのギルド員であろう方が奥から走ってくる。
そして、その奥から激しい轟音が響いた。
まるで固い岩が思い切りぶち抜かれたような重低音だ。
「扉が、破られたのか?」
奥から何かが歩いてくる。
人型を模した巨大な岩……。
「地下空洞が崩れていく! 皆! 退避だ!!」
俺は、あれを止めるか。
俺が前に出ると、仲間たちは皆当然だと言わんばかりに付き合ってくれる。
全く、本当に頼りになる。
「君たち何している!?」
「誰か止めないと。 皆、生き埋めになりますよ」
「……仕方ないな、私も付き合おう」
【Warning! Warning!】
「リーダー! 危険です!」
これは、グラントレントの時の仕切り……。
怪しく光る見えない壁が、俺達とSigridさんを閉じ込め、彼女のパーティーメンバーと隔てた。
「む、なんだ?」
「俺たちは獲物として認識されたようですね」
<アナザーミッション。 ギガントゴーレムの討伐を受注しました>
【アナザーミッション。 ギガントゴーレムの討伐を受注しました】
<ギガントゴーレムがリトルゴーレムを生み出しています>
下位個体のゴーレムか。
おそらく、ゴーレムは物理耐久が高い。
まず時間を稼ぐか、これ以上、揺れられたら洞窟が崩れる。
「俺が前に出る」
一先ず俺が相手をしギガントゴーレムの足止めをする。
小さいのは任せよう。
「お、おい!」
「Irukaなら平気! 私たちは小さいのを減らそう!」
ギガントゴ-レムは俺を迎撃しようとしてきた。
大きく躱す必要はない。
最小限の動きで、攻撃を受け流し、動きを止めず攪乱するんだ。
林の姿勢・柔の陣。
受け流し、動き続ける。
俺が周囲を動くことで、相手の足を止める。
そして、隙を見て攻撃を入れていく。
やはり……物理攻撃はほぼ効かない。
ゴーレムの定番の対処法と言えば、岩の体に張り付けられた、もしくは刻まれたルーン文字があるはずだ。
それを壊せば体を保てず破壊される。
だが、どこにも見当たらない……。
まずい。
観察していたら、飛んでくる敵の拳に気づかなかった!
防ぐしかないか? 吹っ飛ばされダメージを受けるだろうが……。
「こうですか?」
「Akiさん、まさか」
「見よう見まねでございます」
見ただけで俺の受け流しを真似たのか、なんて底知れない人だ。
ともかく彼女のおかげで助かった。
「小柄なお人形さん方は、Sigridさまが対処しています!」
「なるほど、それは助かるな」
いいぞ、Akiさんともかなり呼吸が合うようになってきた。
それにヒーくんの巧みなバフ。
Sigridさんが敵を引き付け、火力の高いMariaがリトルゴーレムのルーンを壊し着実に減らしていく。
「こっちは終わったよ! 二人とも下がって!」
Mariaの合図で、俺たちは下がる。
これはファイアアロー。
ソーラーパネルのエネルギーを熱に変えたのか……!
「……やった?」
おっと、それは禁句だ。
「まだみたいだな」
リトルゴーレムと違って、ヤツはルーンという弱点がない。
どうすれば……。
「あそこです! 不自然な膨らみがあります! 弱点のルーンをカバーしているのかもしれません!」
左右対称に作られているのに、左肩だけ不自然に盛り上がっているのはそれが理由か。
「流石ヒーくんだ! あそこを狙おう!」
「でも、物理も、魔法もあいつには効かないよ、どうすればいいの?」
Mariaが不安そうな声を出す。
無理もない、あれはおそらく序盤の敵じゃない。
おそらくグラントレントと同等以上のエネミーだ。
もっと高威力のスキルを身に付けないと攻撃は通らないだろう。
弱点のルーンもその鎧を壊さなければ、そこを攻めることもできない。
だが、勝機はある。
「あの肩に炎を当て続けてくれ」
「何か考えがあるんだね……!」
ヤツに炎の矢が当たった時、水蒸気が見えた。
そして、この地下には巨大な水源がある。
「私たちは」
「陽動だな」
これだけの水があれば……!
水よ力を貸してくれ。
俺が準備をしている間、仲間たちは連携を用いてギガントゴーレムを足止めしていた。
そしてMariaの炎によって、ゴーレムの左肩は熱を帯びて赤みが増していく。
「Iruka! まだか!?」
「準備OKだ」
剣と腕の全体に水を纏わせ、突きの構えを取る。
火の姿勢・攻めの陣。
「あれは、水の槍……?」
俺が自然と調和できたのは、おそらくアチーブメントの効果だけではない。
今まで文字化けし、効果が不明だったユニークスキル。
【Chris:死η蘇ι0空・##??:SYS_WARNING!】
それは【形無きものを模る力】。
それが、俺のクリスシステムだったんだ。
「これが、俺のクリスシステムだ!」
突進し、ゴーレムの左拳が飛んできた。
それを迎え撃てば勝機が生まれる。
腕と剣に纏わせた水の巨大な槍を剣技【中級・刺突】で迎え撃つ!
その瞬間、魔法使いの力で水を凍らせ増幅する。
(氷結魔術・牙零)
<氷結魔術・牙零が発現しました>
「Irukaは剣士じゃなかったのか!?」
「あれでも、ダメなの!?」
ダメか……?
いや……時間差だ。
「左腕が破壊されていく! そうか……あれは、サーマルショックです!」
そうだ、熱のこもったものを急激に冷やす。
冷たいものを急激に熱することで起こる、物理現象。
いくら魔物や機械人形だろうと、自然の法則には抗えないはずだ。
「情けないけど俺はもう魔力がカラだ。 頼んだ、Sigridさん」
剣へと氷を纏わせSigridさんへと託した。
<魔法剣・氷刃が発現しました>
「ふふ、はっはは!! 面白いな!君たちは!!」
ルーンが刻まれた黒玉は、Sigridさんの一撃で粉々に砕け散った。
ゴーレムは形を維持できず崩れていく。
<アナザーミッション。 ギガントゴーレムの討伐をクリアしました。 お疲れ様です>
【アナザーミッション。 ギガントゴーレムの討伐:Clear!!】
「やったー! 勝ったねー!」
「もう、ダメかと思いましたよ……」
不自然な扉の開錠……グラントレントの時のような仕切り……。
……ここにきて、誰かが俺達を監視していたような気がしていた。
あれは、きっと……気のせいじゃない。




