Data 17. なぜ俺の名前が
Data 17. なぜ俺の名前が
「いっけぇ!!」
俺たちは戦線から退避。
Mariaの掛け声とともに、雷の矢が将軍トカゲに向かっていく。
直線に進む雷の矢を警戒し、将軍トカゲは上体をひねった。
……。
「躱される!!」
心配する必要はない。
直線に動いていた雷の矢は軌道を変え、ある物体をめがけて飛んでいき将軍トカゲに直撃した。
「あれは……! Irukaさまの短剣です!」
「忍法避雷針の術。 なんちゃって」
鱗の隙間に刺した避雷針が上手く役割を果たした。
将軍トカゲは倒れ……周囲から歓声が沸いた。
他のプレイヤーが俺たちの攻防を見ていたのか。
Mariaの周囲へと人だかりができている。
「すげー! 今のどうやったんですか!?」 「我がギルドに入らないか!?」
今が好機だ。
その隙に周りの電撃に巻き込まれ痺れている暴れトカゲを楽に殲滅しポイント稼ぎを終えた。
「はいはい、皆さん落ち着いてください」
そして困っているMariaの前に出て皆を宥めた。
「えーっと……近いうち魔法の使い方を発表するかも」
Mariaのこの言葉によってプレイヤーは散り散りになり、自分たちの狩りへと戻っていった。
それより、属性魔法をもうものにしたのか。
「驚いたよ、いつの間に出来るようになったんだ?」
「へへ、Irukaの魔法をヒントにしたんだ」
俺の魔法は自然と共鳴し、それを利用、増幅させるもの。
しかし、Mariaの場合はそれができなかったはずだ。
「魔法って自らの魔力で現象を生み出していたじゃない? それならコントロールできるかなって思ったんだ」
彼女は説明していく。
自分の属性魔法の使い方を。
魔法使いの基礎の黒魔法、それは己の魔力を通しある程度コントロールできるものだ。
しかし、増幅させ操るにはあまりにも極小でエネルギーが足りない。
例えば種火は、木へと発火させて自然現象にしてしまえば、自分のコントロールを離れただの着火となってしまう。
「それなら、これを使って自分の魔力を通せばいいんだって思ったんだ」
現象へと魔力が込められないなら、魔力を込めたものでその現象を起こす。
そうすればそれは、ただの自然エネルギーではなく【魔力が込められた自然エネルギー】になるってことか。
杖はそのための媒介装置だったんだ。
「なるほど、その杖にどんな仕組みが……」
「えーと、私も正直よく分かんないんだよね~……」
……なんともMariaらしいな。
皆で軽く笑っていると、ヒーくんがメガネを中指で動かしながら呟く。
「おそらく、太陽光ソーラーパネルですね」
「……そうか!」
彼の説明を聞いて納得した。
Mariaの魔力を通した杖に装着されている宝石に装飾を施した魔道具。
それが太陽光ソーラーパネルの役割として電気を生み出した。
その電気はMariaの魔力を宿し、さらに基礎魔法の静電気を加えることでコントロールに成功した。
無属性のマジックアローに電気を通すことで、ライトニングアローが発現したんだ。
「そ、そうそう! それを言おうと思ってたんだよね~!」
「流石Mariaさんですね」
「すごいですわ……!」
日々のデイリーミッションで溜まったポイントをアイテムに交換し。
ネットでソーラーパネルに必要なものを調べて【N型・P型半導体】を購入。
『なんかよくわかんないけど魔道具制作を依頼して作ってもらったんだ』
……ということらしい。
すごいな。
隠して使っているプレイヤーは中にはいたかもしれない。
でもMariaがこれを発表すれば、このゲームで属性魔法使いの先駆者となるのではないか?
法則に従えば任意で発現できるMariaの魔法と違い、俺のはあまりにも限定的だしな。
「そうですね、Mariaさんが魔法ならば……Irukaくんのは、魔術……と言った方が近いかもしれませんね」
「それは、確かに言い得て妙だ」
説明を終えると、再び暴れトカゲが湧きだした。
「よーし! バンバン使っちゃうよー!」
「そんなに何度も使えるの?」
「あ……充電も切れてるかも……」
威力も高いし、トカゲが痺れたように属性による副次効果も申し分ない。
けど発動には割と時間がかかり、今のところは使用回数も限られている。
個人戦闘では扱いにくいかもしれないが、多人数戦で活躍しそうだな。
討伐を再開し5分ほど経った頃。
威勢のいいプレイヤーが現れ、何かを叫び出した。
「パンテオンの子羊だ!! ここは俺達が使う!! お前たちは別の場所に行け!!」
最大手プレイヤーギルド【パンテオンの子羊】。
このゲーム内で一番規模のでかいマンモスギルドであり……。
こんな風に組織力を笠に着て傲慢な態度をとるヤツも存在するという話だが、初めて見たな。
プレイヤー達からは【パンテオン】と呼ばれている。
辺りを見回せば、周囲にいたプレイヤーは愚痴をこぼして狩場から去っていく。
「何をしている、はやくどけ」
「おいおい、ここは皆の狩場だろ?」
「お前たちのために言っているんだ。 逆らえばどうなるか分からんぞ」
「……」
皆、不安そうにしているな。
ここは引くか。
「ほいじゃ、代わりに良い場所を教えてくれよ」
「ふむ……イルカ村を知っているか?」
は?
「Chris townの近くにある村だ。 そこで、うまくはないがまずくもない安定した狩場があるらしいぞ」
「ご丁寧にどうも」
い、いるか村ってなんだ……?




