第31話 試験合格には特訓あるのみ!
特訓回です。そこまで話数は取らない予定です。3章が元々短めの予定なので。
◆
[学校]
[悟川心冶]
朝6時に起き制服に着替える。荷物を準備し一度学校の方に向かう。教室には既にまばらにクラスメイトがいて、隣のR組にも人がいた。教室内に3体の学校アンドロイドがいて、何か大きな荷物たちを囲んでいる。一体が僕に気づいて近づいてくる。
AI「悟川心冶様ですね」
「あ、はい」
AI「こちらをどうぞ。前々より用意していました禍福課専用の制服でございます」
「ありがとうございます…!」
AI「それでは実技試験の健闘を祈ります」
あの荷物の一部を取り出し、僕に与えられたのは禍福課の制服だった。僕はアンドロイドにお礼をして教室を出る。正直ここが自分の部屋だったら小躍りしていたと思う。体中でダンスを踊ったって誰も止められなかったと思う。
遂に制服が着られるんだ!語り出したら止まらない。いや、今語らなければいつ語るって言うんだ。
禍福課には必ず制服が与えられる。警察や消防署の人達と同じように指定の制服を着ないと仕事を執行できない。まあ私服警察と同じように免許とかがあればOKだったりもする。
ただ警察の制服と違うのはカスタマイズがとても自由なこと。禍福課であることを証明するマークとナンバーをどこかに入れておけば後はもう服の色や見た目全てが自由。現にこの学校の禍福課の免許を持っている先生たちは、全員もれなく禍福課の制服を着ている。(水島先生が着てる白色軍服の胸ポケットに禍福課のマークあるし)
公安の人達も色以外はだいたい統一された制服でネットで人気あるし。メカの顔を覆ったヘルメットに仕事人みたいなフォーマルな服と細かな機器のアクセントは確かにかっこいいと思う。
いやー遂に僕たちにこの制服が与えられるなんて夢みたい。この先校外学習やらインターン色々あるから、今貰えるのはタイミング的に良いのかも。
「あ、そろそろ行かなきゃ」
前もっての行動は重要。時間に余裕を持って行かないと。
僕は学校を出て独りで駅に向かい電車に乗って行った。燈爾君は全然違うところに行くから独りなのは久しぶりかも。
◆
[神社内・湖の畔]
学校の最寄り駅から3駅で降り、体感徒歩10分。長い神社の階段の前に立っている。目的のここが【寒野坂神社】。その敷地内にある湖の名前は【渡夜湖】。
「この階段結構長いなー…」
持ってる荷物はそこまで多くないけど、見るからに30段以上はある。体力奪われないように登って行かなきゃ。
一段。一段。ちゃんと登ってやっと頂上に辿り着いた。赤色の綺麗な鳥居が待ち構えている。真ん中を通るのは申し訳ないからちょっと端の方から失礼します…っと。
「いたっ」
鳥居を通った瞬間、少し静電気が体に走った。もう冬じゃないのに静電気とか、まあちょっと痛かっただけだし気になることじゃないか。僕はそのまま湖の方に向かう。スマホで時間を見れば午前7時。30分早く来ちゃった。
「ここだ。わ、湖綺麗」
辿り着いた人がいない神社の湖を僕は眺める。湖って少し汚れてて底が見えないものだと思ってたけど、意外と泳いでいる魚も底にある石が見える位には綺麗なんだ。
「いつか琵琶湖とか見たいな~」
喰田「あ、あの…」
「喰田君だ。おはよう」
喰田「お、おはよう。その、えっと…」
湖を見ていると後ろから同じチームの喰田君が話しかけてきた。黒色の前髪にオレンジ色か琥珀みたいで綺麗な目。身長は僕よりちょっと高めで、いつも外室内関係無く帽子(確かフライト・キャップって名前の帽子)を身に着けている。声がちょっとどもってるけど何か思いつめてるのかな?僕も同じようなことあるし分かる。ここでサトリの能力の出番だ。どれどれ…
喰田「(どうしよう。お腹空いちゃった…。コンビニ寄れば良かったんだけど、時間気にしていけなかったし…なのに勢いで話しかけちゃった。まだちゃんと話したことが無いのに、急に挨拶して何か恵んでくださいって乞食じゃんソレ。む、無理…)」
喰田君すっごい思いつめてた…。しかもお腹が空いてて。何か持ってたかな。
ルナ『(きゅう)』
「あっ。良かったコレ…」
喰田「!!」
ルナに言われて思い出した。もし練習中にお腹が空いたらでお昼ご飯とは別に用意していたお菓子だ。スティック状のチョコのやつ。何本かあるから二本取り出して喰田君に渡した。渡すときの彼の顔は凄い目を輝かせていた。
喰田「え、なんで?いいの?」
「何かお腹空いてそうだったし。これくらいどうってことないよ」
喰田「えっと、心冶君だっけ?あ、ありがとう。これでお腹の方も喜ぶ」
「うん。いいよ。試験一緒に頑張ろうね。晴鬼君」
お腹の方が喜ぶって表現は不思議に思った。けど、新しく話せるクラスメイトができて僕はそれに満足だ。喰田君って牛視君位に背丈が高いし体格もしっかりしてるけど、結構気弱?なのかな。これは、ぼ、僕が試験のアシスタントしないと…。
??「それワシにもくれんかのう」
「ぅえ?」
喰田「うわあ!!」
??「そんな驚いて人を盾にせんでも…」
「ど、どちら様ですか??」
さっきまでほんわか新しい仲良しを構築していたところに、知らないお爺さんがひょいと間から出てきた。白髪に蓄えた立派なお鬚で、僕たちよりずっと小さい背の杖をついたお爺さんだ。
??「ワシか?ワシはこの近所に住む錦城…」
喰田「だ、ダジャレ?」
錦城「苗字より名前で呼ばれるのが気に合うからのう。海英…まあうみひろ爺ちゃんとでも呼びたまえ」
「うみひろお爺さん…」
喰田「うみ爺さん」
錦城「よいよい…で、そのお菓子はくれんか?」
「あ、どうぞ(欲しいのは本気の言葉だったんだ…)」
僕は喰田君にあげたものと同じお菓子をうみお爺さんに渡した。安かったから別に良いんだけどね。僕はそこまでお腹が空くかって言われたら成長期なのにそこまでだし。
水島「何生徒に集ってるんだ爺さん」
「あ、先生おはようございます」
錦城「来たか静史郎。いやーお前さんがこうも生徒を教えるようになってたのには驚いたわい」
「お知り合いなんですか?」
水島「昔の俺の師匠だ。そして、今回お前らが相手する講師でもある」
喰田「お爺さんが?」
河野「ほーい着いたんね」
白星「皆さまおはようございます」
百沢「ふわぁあ。ちょりーす…」
続々とクラスメイトがやって来る。元気そうな河野さんに、いつも身綺麗な白星君。眠そうな目で欠伸をする百沢さん。
水島「全員来たな。これより実技試験に向けての対策練習…特訓を始める」
【ここだけの話】
・鳥羽君のお父さんは物凄いイケメンでエリート。そして鳥羽君以上の鳥愛好家で能力も父由来。
・喰田君はとにかく腹が減って仕方がない。自分や手の方は結構食いしん坊ですぐに腹が減るが、お腹の方は腹持ちが良い。
・悟川君はとても絵が上手い。手先が若干器用で裁縫も料理もできなくはない。
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