底深き迷宮(ダンジョン)――⑤靄の中へ
はい。雲です。
次回話執筆中の今日、投稿しました!
まあ、これで貯金分が無くなるわけで、はい。
頑張ります。
ってな訳で、第一章も残り半分。これからも宜しくお願いします。
「準備整うの即行でしたね」
「そりゃそうよ。このクエストに敗北したんだもの。対策ぐらい、作戦会議以前から考えていたんだからさ」
「そうだね、大敗したんだから、僕にできることぐらい探すのが筋だしね」
「ふむむーぅ。援助中心になるのが残念です」
「それは職業柄そうですから仕方がないところがある気はしますがね」
「さあ、作戦開始ですよ」
「ああ、お手並み拝見だな。ヒエロワさんと……〈干渉者〉の力をねっ」
橙色に包まれた鍾乳洞に彼らは再び、土をつけた。
入り口からしばらくして開けた空間にでる。そこで徘徊するのは、斧を引きずる骸骨5体。
『破士5体いるっぽいよ』
『5体ですか。なら、キーリさん』
『分かりました』
ヒエロワの指示を皮切りにキーリが広間に飛び出す。それに続けて来霧も。
二人の敵を足音をきっかけにか、視認、接近してくる〈人骸破士〉。それを冷静に見つめながら。間合いを測る。そして、先に動き出したのは来霧だった。
数歩の助走をとると急停止しようとする。その制動距離を利用して木刀で横に二体分薙ぎ払うためだ。そして、ヘイトが来霧に向いたのを確認すると、ささっとキーリラインより後ろに戻る。
それを確認したキーリは、来霧を追うホットな斧使いに対し立ち塞がる。
「〈壁役の重責〉っ。通り過ぎる前に忘れてるものがあるぞっ」
「ヒュー。なかなかだな。で、ここまでは事前の作戦通りってか」
来霧はヒエロワの方に振り向く。後衛の居場所が居場所が知られるのは避けるべきことだが、このヘイトならおそらく大丈夫だろう。
来霧の言葉にヒエロワは親指を立てて返した。
「よし。なら本番前の肩慣らしとするか」
来霧の木刀から冷気が現れる。この階層ならばこの能力は、本来の威力よりも少し劣るだけで問題はないらしい。
「まずは――」
キーリは来霧の行動に気付いて、距離を感じながらヘイトを高め続ける。
そして、ぎりぎりのタイミングで、その場から下がる。斧使いの視線は自然とそちらに移り、その刹那、来霧は間合いを合わせる。
「さあ、〈氷天桟〉っ」
並んでいた数体を弧を描く軌道上に斬る。
2回割れる音が届く。実感では4体ほど倒せたはずだったが、結構タフなのか、そんなに倒せてはいなかった。
(タフネス持ちか?)
視線がキーリから移り変わる。
「まだまだってことかっ、ならそのまま」
氷に繋がれた二体を放っておいて、来霧は残りの一体に接近する。後ろでは氷の割れた音と、風を切る音が順に起こる。
(やっぱタフネスか)
後ろを信じて、来霧は斧を振り上げる骸骨に接近する。
「そう来るなら、脇から……心臓だ」
がりっと、抉るような音がなった続けて地面に骨が落ち、響く音。
急所狙いの一撃で斧使いを沈める。
「っと。そういやあ、この斧って」
「職業適合者以外が使用すれば、威力は紙クラスになるだけですよ」
「ああ、分かってる。でも使えるっちゃ使えるわけだよな」
「そうですね。おっと、早く追いつきましょう4人に」
周囲を見渡すと来霧は頷いて返した。
「やっと来ましたか。この大規模エリアなら、ある程度退治しておきました。さあ、早く地下層へ向かいましょう」
ヒエロワとシャラの広範囲攻撃によるものだろう。
(にしては、減少が小さいな)
「今回はSnow温存ってことで吸収でできる限りはさせてもらいましたよ」
ドヤ顔になるクララと、活躍できなくてか拗ねているSnow。その二人にありがとうとだけ告げると、先に階段前に向かった。
「あ、確保忘れてましたね」
「ま、結果オーライってことでいいんじゃないんですか?」
「それは攻略後に言うともっと気持ちいいかもしれません」
ヒエロワがチッチッチッと人差し指を立て手を左右に揺らして答える。
「あ、こういうのは意外とあるあるですからね?」
確保忘れの言い訳かそう答えると、来霧を追うヒエロワ。その後を続けて4人は追う。
ヒエロワの職業。〈干渉者〉。補助職の中でも、全職の中でも、範囲が最も広いと言われる職業だ。名前から察せるように、特殊な事柄に干渉することが可能だ。メインとして取るのは、お薦めされない扱いづらい職との話だ。
ヒエロワによると干渉者には、扱う『組み合わせ』があるらしく、2つの事柄を組み合わせ、自らの領域として扱う。これにはメイン・サブ問わず変更は一度までのようで、変更には気を使う必要があるといえる。サブ職の干渉者を取り直すという、方法もあるのだが、それはおいておこう。
この組み合わせの結果として「追憶干渉」や「元素干渉」といったものが生まれる。それが、自分の範囲となる。
ちなみにヒエロワの干渉術は××××。
そして、駆け抜けた地下中1階。
その先の地下1階部分に、6人はたどり着いた。
体力の温存をするらしいが、詳しいことは聞かされていない。なぜかを考えている内に、唐突にヒエロワが言う。
「そこから6歩先まで走ってみてください」
「ん? こうか?」
異常に広い空間の中を、来霧は指示に従って走る。その途端。
「地面揺れてません?」
以前にはなかった異変に来霧は内心慌てながら訊いた。
その疑問に対し、ヒエロワはええと答えると、続けて答える。
「罠ですもん」
地面が勝手に崩れだす。その先には親切の塊かどうか分からないエリアが広がる。
「ショートカットです。でも主戦対策する前に、初見殺しするという目的、復路目当ての罠でしょうね」
思うに、この空間内には崩れやすいマスというのがいくつか設置されているということだろう。
来霧を追いかけて5人は落下する。落下先は蒸し暑い空間だ。
「!」
それぞれが着地すると、それを待っていたかのように周囲にモンスターが現れた。
「〈業火明子〉が4体っ。主ですかねー」
橙色の世界の中に青白い光が漂う。〈紫電明子〉と比べると約3倍の縦幅だ。その上、こちらも魔法以外無効なのだろう。
クララの声に対し、そう思いつつ、来霧は構える。
「いいえ、あれはモブですね」
そう言うヒエロワの背後で目覚めるモンスターの存在。来霧はその視線を感じ取ったのか、その方を向いた。
「ただし、現の主は、物理攻撃可能なので、頼みますよ? 一人で」
「上等だ」
一瞬、『一人』という言葉に、不安が芽生えたが、試しにやってみようとの思いで、ある程度払拭された。
「よし、〈冷空〉」
木刀から発せられた冷気。
それは一気に周辺温度を下げ、霧を発生させる。
「よし」
少しずつ濃くなる霧。地面、壁面からにじみ出てくる熱を吸い上げるように。
「共有、〈霧進瞳〉」
イートを通じて全員に送られる補助技。
「行くよ、〈灼熱の大蜥蜴〉。狩らせてもらうよ。この霧のステージで」
『――なら、勝算があります。来霧さんのサブ職を駆使すれば、火の威力を軽減、加えて命中力・回避力の減少。これらが見込まれますね。でもどうしてこの職を? マイナーでしょ?』
昨日の情報共有の時に、ヒエロワはそう訊いてきた。その質問に対し誤魔化すことしかできなかったが、終わってから答えることを約束した。ただ、どこまでとは指定してこなかったので、今度も簡単に答えて済ます気だが。
「〈氷天桟〉っ」
しかし、軌道線上の氷は張りきる前に砕かれる。空に溶けていく。
(やっぱそうなるよな、ならこれなら?)
来霧は別のモーションに入る。
「〈殺法:氷華〉」
鈍い音を引き替えにゲージが大きく減少したのを来霧は確信した。
その握った手には氷分が消え、それでも艶を残した木刀。おそらく、蜥蜴の特性かそこらだろう。
ただの木刀と化したものの、貫通攻撃は貫通攻撃で氷版よりも少し劣るが効いているようだった。
「よしで……いいか」
焦げた香りが鼻につく。
反射で吐いてきた炎のせいで服が一部黒ずんだのをチラッと確認する。反射なだけあって狙いがバラバラではあったが。
(あと8割っ)
続けて来霧は木刀を振り上げた。そこから振り落とすかと思えば、一瞬で斬って落とす。その間に十数個の新たな傷跡が残り木刀のコーティングから核が割れたときのような物音が聞こえる。
(確実に耐久値が下がってきているってか)
予想以上に低い蜥蜴の体力に半ば安堵しながら、同時に剣が耐えてくれるか不安になってくる。
後ろから聞こえる爆発音。まだ援護には入れないのだろう。背後で苦戦している5人の声に、気を付けながら対峙する。
幸運なことに素早さも靄によって下がっているのか、反射以外はほぼ回避出来るとろさだった。
「急がせる気かよ」
来霧は手つぎ早に蜥蜴に攻撃を加える。薄目の靄のかかるエリアで一方的に加えられるそれはどこか、浦島太郎の亀のシーンを彷彿とさせるものだったが。
そんな中、後方から再び爆発音が発生する。
(いや、爆発したというより撃破したってところだろうか)
蜥蜴から視線を外し、その音の発生源を睨み付ける。その一瞬に体が緑に包まれたのを手のひらを見て確認した。
「そっちは終わったってことだよな」
「そうですよ。来霧さん」
クララが手を振りながら答える。
(て、ことは)
来霧は振り返って蜥蜴の方を見つめる。何か変化はないか、ステータスに、弱点に、特性にその姿に。
のそりのそりと近づく蜥蜴を、横に〈イート〉を開きつつ直視する。
そこに戦闘開始時との差はあった。
(そもそも、主戦でオマケエネミーが現れるのにはそれなりの訳があるに決まっているものだろう。軍隊率いたものなら、そういう設定を堅くするためだったりするからな)
そう思いつつ、納得し、続けて安堵する。
「本当に初見殺しの場所だ」
そう呟きながら。
体力はほぼ回復、いや、それ以上だった。でもなにも気にせず、体力の低さで侮って後回しにしていたら苦戦することになっただろう。
今の蜥蜴のHPは631万強。蜥蜴の削られた後、残り体力の約5倍だった。
来霧は身体中に感じる温かさを噛み締めると、再び霧をかけ始めた。
(これで、さらに一歩手前へ)
パラメーターを見つつ、来霧は背後を気にする。
蜥蜴の適さない、寒く見通しの悪い世界。
体内と壁面からは少しずつ熱を奪う。地下から伝わってくる壁面地面はともかくも、体内の熱と、温暖な空気任せに戦う蜥蜴には、寒気は天敵であった。
氷と炎の関係を覆すような情勢に、にやつきを押さえられない。
そんな調子で後方を陣形の確認のため何度か振り向く。その表情は真剣そのものだが、内心はにやついたまま。
残り600万残っているらしいが、何だか上手くいきそうな予感さえもしてくる。
その油断を見たのか、感じたのか、ところ構わず火の弾が飛んでくる。流石の来霧も正気に戻って、目の前の弾をかわしてみせた。
「さぁて、行きましょう。〈流星群〉」
ヒエロワは、蜥蜴を押さえつつ天体魔法を唱える。空中を突き破って突如現れた石片が蜥蜴に向かって飛び込む。途中で方向転換をしていたところから、必中広範囲攻撃だろうか。
続けて浮上する蜥蜴に、何となくヒエロワが予感に応えてくれているようにも感じる。
「ありがとな、ヒエロワさん」
「言うの早すぎですよ。まだ勝ってません」
「ま、まぁそうだな。確かに」
そして地道に削り続ける。
それぞれの耐久勝負はまだ始まったばかりだった。
「確かに、それには賛成です」
賛成側に立つクエーサー。目の前でゴッツイ男と、白髭の小太りの商人が頷くのが、視認された。彼ら『輸送隊大連合』は名前の通り商隊系では、トップクラスのギルド体だ。
ストックブルクの代表支配ギルドのひとつでありながら、それは『ストブル支部』っていう感じの巨大商業ギルドの端ではあったのだが。
それ以外の出身ギルドからすると、『よく来る商業ギルド』の存在である。しかし、そのために商業都市であるストックブルクでは、代表ギルドの一員に入っている模様だ。
会議室はいつも通りの殺風景な壁、さらに机と椅子が囲むように並べられており、その場に漂う殺気のような雰囲気をより醸し出している。
「このままでは、新興の商隊を潰しかねません。足を止めて、そして商売をして頂かないと」
(この町は、財政の大部分を露店代などで賄ってきた。市民から搾り取る訳にいかない、なんとか捻出していくが、限界は近くなってきている。
ちらほら見られる露店貸出し空間。
「天候や災害。そしては怪物による襲撃。様々な要因で遅刻は考えられます」
それに、商人の体力とかも関連するのだろうか。
時々、1日貸出しを延長する商隊もいるらしい。到着時刻が極端に遅かったり、事故などによる士気の磨耗だったりが主な理由としてあげられる。
「確かにそうですが、ある程度秩序もっておいた方がいいのでは? 早い者勝ちだと以前のような暴動に近い状態になるでしょう?」
「そうですね。なので一つの商隊ごとに使用できる範囲を明確にしておくべきです」
そう言いつつ、資料のページを告げる。
「資料のようにストブルの商業は露店のみならず、土着の方もいる。つまり店舗を持っている商人もいます」
「その商人には露店貸出しを禁止するということですか?」
「いや、禁止までとはいかん。ただし制限はさせてもらう。そうだな。多くて1つだろうか」
「ジヤーファさんに先言われましたね」
頭を少し掻き、苦笑いしつつ商人は答えてさらに続けていう。
「少し被りますが、我々は店舗自体は、露店の数に数えるつもりは全くありません。逆にそうしてより店舗が増え、活発化していくのが上策でしょう。また、店舗を構えている以上は露店土地貸出しは、最小限にしていこうと考えております。最終的には、世界を流浪する商隊専用に残せるように」
そう言って、商人の言葉は止まった。そこにカツトヨのギルメンの一人が訊いた。
「では、その残骸......と言うか露店の利用契約をしたままの商人はどうなるのでしょうか」
「契約をした商人に関しては、このまま続けていこうと思っております。ただし1年ごとに契約の更新を行います。そうして空いたところを有効活用、貸出しに使えればと思っております。ついでに蛇足ですが、貸出金は、そのときの店舗購入レートに合わせていこうと考えております。別に店舗購入を促しているわけではありませんが、レートの3分の2ほどですかね」
(まあ、また問題があればこれに付き足したらいいんしゃないかな。ここは商業特化の町だ。支える商隊がいるからこそ、我々が護衛につく必要があるわけだし)
そんな時、議長の話題転換を図る拍手音が狭い会議室内に響いた。
「今日はここまでです。『先取制』についてはまた今度行いましょう。まだ重要な議題があります」
『重要な議題』その言葉に、室内の空気が重くなった。中にはひそひそ話をしているところさえ見える。
(まあ、そうなるよな)
いつ重い口が開かれるのか、カツトヨは待つ。
待ってくれない嵐が、この町にくるのを感じているから。そう嵐だ。戦争だ。
「まず偵察からだが、これからの1年の間に攻めてくる可能性が高い。もしかすると四半期いないかもしれない、と言うことだ。彼ら――ドボルメントにはスルディアと繋がっている可能性だってある。勢力は高めと考えていいだろう。あとは、それまでにこちらがどう対策するかだ。」
「......ところで、クエーサー殿」
クエーサーは少しビクッと怯えたかのような反応を見せて振り向く。カツトヨにとってもそうだ。前回の豪語した分がまだ残っていた。簡単なことのようで難しい、兵力の問題だ。
兵力とは言っても防衛分。町を守ろうとする有志、またはギルドがあればいい。相手のドボルメントの方もそうだ。立場は逆だがそういうことだ。
「前回の件ですか? なら......順調です」
怯えつつ答えるが、証明がない分説得力がない。
(1000万が1に、成功している可能性もあるが)
緊張か、何かの心配か、気圧されたかは分からないが、どこか牝鹿を見ているようで可愛かったのは秘密だ。
残り1割強。
シャラは来霧の〈氷天桟〉の氷を足場に飛び上がる。向いてなくても感じる強すぎる感情に、来霧はただ応えようと立ち上がる。
MP切れで意識が飛んだときは、どうなるかとは思ったが、仲間がいてなんとか助かったのだ。だから彼らには、本当に感謝しかない。
横で止めようと、おろおろしているSnowになにも言わず、微笑みで答えると、走り出した。
(残り5%がなんだ、相手は約15%だろうし、シャラだって体力は限界近くだ。なのにどうして両方に応えてはいけないんだ? みんな死闘を繰り広げているんだ。入らないわけはない)
後光のようにも見える黄金の光に、追い付こうと来霧は走る。シャラが本気を出そうとしているのだ。
(上空からの射撃。足場も跳んでしまえば無いし、不安定にもなる。それにこの最大出力の奇襲に勘づき、かわされる可能性だってある)
恐らく本人だって、そのくらいのことは気付いているだろう。分かっているだろう。それでも賭けたのだと、来霧は思った。こんな環境の中でするなら多撃型のほうが命中は高いから、やり易いのは自分もわかる。
この場面でこうしてきたのには、なにか理由があるのだろう。発射モーションを見ながら、考察してみる。
〈殺法:一点衝〉」
急降下するように発射された光は、蜥蜴の頭を狙ったものだ。
「っ!」
しかし、危険を声から察知したか、体ごと右に避けた。その2方の間近で見た来霧は声にならない声をあげたまま現場に突っ込む。
(で、でもまだ)
咄嗟に〈氷通滑〉で足場を凍らせ〈氷天桟〉で氷を斜めに張る。そしていつぞやの〈銀色の反射布〉を氷に覆わせた。
その勢いのまま滑り込んだために、蜥蜴には蹴りを食らわし、反射した光の矢は頭を外したものの、なんとか命中した。
但し、来霧が布の方を向くと氷は溶けてるし、地面は焼けてるしで、来霧にとっても、白い世界へ行くことは危機一髪防いだ。
「シャラさん、来霧さん。バロメーターが大きく減少しましたよ! 大体3分の1の減少なので、200ちょっとでしょうか」
ステータスの監視をしていたクララから嬉しそうな声が生まれる。その一言に対し、シャラは来霧を非難するように答えた。蜥蜴を押さなければ確一だったと。それに対し来霧は、方向転換なしでは、命中すらもしていないと言い返す。
しかし、そこでふと思う。
(もしかすると、シャラは僕が追い付くってわかってたからこんなことをしたのか?)
重力魔法で再び押さえつけられた蜥蜴を尻目にそう感じた。クリティカルヒットで削られた210万ダメージを見ているとそうだ。核の場所も大体想像がついた。そのためだったのか?
シャラの一撃に様々考察しつつそこに立つ。
そして、押さえつけられた蜥蜴を見て呟く。
「次は一気に行くよ」
5万を切った蜥蜴の前に来霧は歩いて寄る。不思議と火炎放射とかはなかった。そして、靄も意味無いほど至近距離で、来霧は(今頃)宣戦布告を出す。
続けて、耐久も危なくなっている木刀を見せる。靄でよくは判別できないが、冷気が発生しているのだ。それも普段とは規模の違う。だからこそ周りの霧により混ざり混み、見にくくくなる。
「〈殺法:氷華〉」「〈殺法:断空〉」
至近距離でのその一撃と一撃は、蜥蜴に致死の一撃として与えられた。
直撃した瞬間、反射の火炎放射。まだだった。しかし、あと四桁。
(まだ足りないっ)
「気にしないで。〈四×四れ......いや、接射」
「グレイトっ! シャラさん。〈流星群〉」
16本の矢、いくつもの岩片が容赦なく飛び込む。
そうして光が靄のカーテンを突き破ったのだった。
「シャラさんって多撃型なんですね」
ヒエロワは唐突にそう言った。
「ええ。一撃型は、〈殺法〉で十分でしたから。それに、攻撃の種類も豊富ですしね」
「では、さっきのは?」
「あれは応用技よ。あの距離で遠距離はあれでしょ? 真正面にいるのに使っても当たらない分はもったいないでしょ。だから近距離型に切り換えたってわけ」
多撃型にも攻撃の種類がいくつかある。
基本的に使う『連射』に『同射』。連続で分割矢、出現矢を射るのと、同時に分割矢、出現矢を何本か射るもの。狙いなぞ無視し、その分、力を込めて射る、『乱射』。そして稀に聞くような射方もいくつかあるそうだ。
「じゃあ、今の職を選んだ理由はなんなの?」
「それはね、ここに来る前にやってたゲームでね、メインが弓使いでね。一応他の職もやっていたわけだけど、一番好きだったの。ほら、これ系って補正は命中向きでしょ? 多撃型なのはそこにもあるの」
生き生きと答えるシャラに対し頷くヒエロワ。その様子を見ていたクララが今度はヒエロワに数人の代表的なものとして問いかける。
何で、ヒエロワさんは干渉者を選んだんですか? と。
そのクララの質問に対し、彼女は懐かしみを込めてか、そう答えた。
「昔はよく天体観測していたもので」
(だから、天体魔法を専門と出来る干渉者を選んだのか。きっと魔術師を選ばなかったのは、天体魔法習得までが遠いからか。それほど星が好きなんだな)
「そうなんです。何だか星に縁を感じたのもありますけど」
(流石は天体干渉者だ――)
そんな時、ふとヒエロワの言葉が蘇る。
『でもどうしてこの職を? マイナーでしょ?』
そんなものどうでだっていいじゃないか。
今ならそう答えられるだろう。その言葉によって疎外された記憶があるのを知っていたとしても。
そう。知っていても同じだった。
その職業への思い入れは、思い出は、これから一つ一つ積み重ねるものだから。
(答えるのは、また後にしよう)
そう脳裏で呟くと、じぃっと東門のほうを見つめた。薄く白い靄のかかりつつある世界で、狙いをつけるように、虚空の中を。
☆登場人物☆
来霧・シャラル・クララ・キーリ・Snow・ヒエロワ
カツトヨ・クエーサー・ジアーファ
ビッグトレーダー提示 露店先取制(仮)
①同時に出せる露店は商会、商人、商隊に最大二つ。
②常設の場合は一年間ごとに、一ヶ所での使用を申請する。
③店舗は露店に含まれない。
④到着した商隊は指定された範囲内の露店の土地を利用できる。ただし、場所取り後、申請を必要とする。申請後、マーケット担当者によって宣伝をする。




