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誰ぞ彼のララバイ-せかせか異世界紀行-  作者: トウガ ミト
1章 『東露』の街
29/35

底深き迷宮(ダンジョン)――③橙色の鍾乳洞

一ヶ月後......やっとですね!

今回話も遅くなりました。

では今回話も宜しくです!

※携帯からの投稿・編集なので変換したい字が出なかったりします。なのでまた訂正するとおもわれます。

 雨垂れ岩を穿つ。鍾乳石からほぼ定間隔に一滴一滴と雫が垂れる。その先には小さな水溜りができていた。

迷宮ダンジョンって完全に再生すると思ったんだけど、自然なところもあるんだなぁ)

「何か暢気ね」

 シャラから突っ込まれた言葉は、果たして間違っていなかった。周辺を覆う橙色の輝きは温かみを含んでいたが、それだけでないことは今回よく解った。

「はあ、疲れましたよ……」

「すっかり出られなくなりましたねぇ」

「くそっ、迷惑かけてしまいました」

「そんなの気にするよりも、今のうちに調子を戻すのが先よ」

 そしてしばらくの間沈黙が続いた。

(とにかく帰らなきゃ……いけないのだろうな)

 来霧は高い天井を見つめると一回溜息をついた。


 そこは『沸明の窟』。ストックブルク周辺でタジンスタン山脈と並ぶ有名なダンジョンだ。規模では山脈の方が上のようだが……〈蔦竜アイビードラグ〉と戦った『冷壁の穴』と同じようにヒカリゴケの光が溢れる場所としても、よく聞く噂のある所としても有名だった。

「で、そのクエストにするのか?」

 そう言って来霧は一回溜息をつく。

「嫌なら変えるけど?」

「いや、そういうのじゃないけど」

(なんか、噂とかって危なっかしい気がするんだが……)

「嫌なのね」

「んん……、行くよもう何も言わないからさ」

 来霧は遂に折れると、シャラのどや顔を正面から見ることとなった。そこでもう一回溜息。

 暗く重みを帯びた空のもと、来霧は少し焦っているようにキーリ達には見える。

 そうして、先先歩いていくシャラを追いかけることとなった。


「――で、ここがその『橙色の鍾乳洞』か?」

「みたいね。光が漏れ出しているわ」

 シャラの指差す先には橙色の光が暗がりの森に漏れていた。今日は曇りのようだし、太陽光の可能性は薄い。きっとそこが鍾乳洞の入り口なのだろうと、思いながら一歩ずつ近づく。

「でも残りますかね……数年後の自分たちにここに来た記憶が」

「ふむむーぅ。残っていてはほしいですよねえ」

(記憶か……)

 元いた世界のものならとにかくこの世界で過ごした記憶。〈渡来民〉として生活してきた日々。二つの世界の記憶はその脳内に蓄積されている。しかしそこには限界がある。幼い頃のことを覚えてないのと同じで時間の経過による過去の剥離がどんな状況であっても発生する。ただ、その記憶はどちらの記憶のほうが先に消えていくのか、それともどこに保存されているのか。この世界で言う記憶の問題とはそういうものだ。

(この世界の記憶を持ったまま元いた世界に戻るということは……それなりに騒ぎや話題として立つはずだし)

「――楽しいことですか? うーん。思いつきませんねぇ」

「こっちであったことでもいいのよ? ほら、ない?」

 空気を明るくしようとしているのだろう。シャラがクララに問いかけると、クララは「ただ不運な一族だったのですけどねえ。ただ、結構沢山の人たちにお世話になりました。故郷を守る為に」と真剣に答えようとしている。その話にシャラが食いついて、もっと教えてっとせがむ。

 その様子をずっと聞いていた来霧は明るさを取り戻したような歩き方になっていた。クララの答えに、どこか自分とは違う血塗れた姿が浮かぶ。

(それでも落ち込んでいても、どんなに心配でもこのままじゃ進めないんだよね)

 そうして滑りやすそうな岩場を歩く。

「来霧さんは何かありますか? 凄いこととか」

「そうだなぁ。この前変な夢を見たぐらい? いやさ、よく当たる方なんだよね。だからちょっと心配」

「どんなのですか?」

「それは――」

 ある日に見たものだった。

 先先行くシャラたちを追いかけていると分岐点のところで追いついた。で、そこで一回休憩していると足元が崩れて落ちて行った。この夢の中で不思議なのは、罠だったのかは解らないが落ちた先は恐らく螺旋状の坂。そして、その先に着いた所で目が覚めた。

「ふぅん。きっとその先に何か素晴らしい所に繋がっているのね」

「さあ、どうだかね。――にしても、暖かい所だね」

 窟の中は暖かな橙の光に包まれている。とはいっても中は少し湿気が高く、光自体もヒカリゴケによるものだった。まるで表面にワックスを塗ったかのような足元を気にしながら進む。

 その来霧に不意に合図が送られる。キーリだ。行動を制するように横に腕を伸ばす。

「新手か?」

「ええ。〈人骸剣士ボーンソルジャー〉が四体います。後方の警戒頼みますっ」

 茶色のダッフルコート、更にローブを羽織ったドワーフは、心強い声でそう伝える。 そして〈人骸剣士ボーンソルジャー〉の前に躍り出た。言うまでもなく、彼らはその武士に狙いを定め、剣を構えてしまう。

「いいんですか?」

 斬りかかってくる彼らに武士は問いかけるように言いながら受け止め、又は往なして、その次の攻撃を予想し、一撃一撃と、ダメージを与えていく。

「こっちに気を取っていてーー」

 その刹那、彼らの内の一体の肩にやが突き刺さる。その一撃はパキィと、砕けた音をたて一体の〈人骸剣士ボーンソルジャー〉を葬らせた。

「他愛ないわね。一撃型特化じゃないのに、〈二×二連射(に にれんしゃ)〉」

 シャラの出鱈目な射撃は、やはりすべて当てるまでは至らなかったが、次に引き継ぐ数秒間の隙間を作ることはできた。

「ありがたいねっ」

 その瞬間に間合いを詰めた来霧が首に木刀を叩きつけると、そのまま振り上げて放り投げた。とは言っても、脆い脛椎は叩きつけられた時に砕かれ、頭蓋骨と胴体が後ろに仰向けの状態で倒れたと言ってもいいようなものだったが。

「おっと。コアは砕けてなかったな」

 来霧は倒したと思われていた〈人骸剣士(ボーンソルジャー)〉のバラメーターを見て生存に気付いたのか、脇腹の丸い塊を砕く。〈人骸剣士ボーンソルジャー〉の場合はコアがその骨しかない胴体のせいではっきりと見える。このコアの頑丈さ、そしてレベルによってHP値が決まるのだとか。

 逆にコアさえ砕けば相手を聖堂送り可能になる……ということだ。

「じゃあ、残り二体も」

 そう言って〈人骸剣士ボーンソルジャー〉を始末すると、来霧 達は一階層を進む。

「さっきの骸骨って、〈地民〉のご遺体に魔力でもこもっていたのかなぁ」

「何で?」

「あ、何でもないです、独り言だったので。ふむむ~ぅ」

「そうかい。ならいいけど」

 ふと見た地図エリアマップ。目の前にはより道が細くなって続く。そしてその先には……不自然に広い空間。

「もうそろそろ〈階層主フロアボス〉かな」

 そう言って目配りをする。横の二人、正面の一人、後ろの一人は〈出現区域エリア〉と解りつつも、装甲の変更を行う。そうして、税院の準備がひと段落したのを見てとると、来霧はキーリの後ろに続いて、やっと一人通れるような橙色の道を歩きだした。


 その先で待っていたのは床を埋め尽くすほどの白。それは常に揺れ動き、数の暴力を感じさせる。

(まだ見つかってないだけセーフかもね)

 これを見ていると、向こうの考えが伝わってくる気がした。

「消費狙いですかね」

「そうだろうな」

「でも越さなきゃいけないものは、何としても越しに行なくちゃね」

「でも越さなきゃいけないものは、何としても越しに行なくちゃね。竹光」

 来霧はそれに苦笑して返す。いや、間違いではない。ただ、すぐに氷を張る予定だったからだ。

「ふむむーぅ。私達が後ろから支援するので、心置きなく暴れてきてくださいね」

「そうですよー。私にパロメーター管理はお任せを」

「ありがとう。じゃあ行くよ」

 来霧は〈冷空〉を発動させると、白き流れのなかに身を投じた。〈氷天桟〉で取り囲む骸骨達を薙ぎ払い、先に進んでいく。ただ、この流れには〈人骸剣士ボーンソルジャー〉一種と言う訳ではどうもなさそうだった。

『広間には、〈人骸剣士ボーンソルジャー〉と斧持ちの〈人骸破士ボーンブレイカー〉。階段上がって、二階の眺望テラスには〈人骸射手ボーンアーチャー〉と〈人骸術士ボーンマジシャン〉がそれぞれ近・遠距離攻撃で襲ってくると』

「ありがとう。じゃあ、こうしようか」

 続けてシャラの叫び声の命令を聴きながら、立ち止まる。

「先ずは二階からだ。地の利をもらいに行くぞ」

 来霧は後ろから襲いかかってきた〈人骸破士ボーンブレイカー〉の攻撃をかわしきれず、右肩で受け止めると、それに報復した。そして、正面の骸骨達に足場として〈氷天桟〉を食らわせる。そうしてできた氷の階段を来霧は登っていく。

 来霧は頭上から姿を完全に現した。そうなると二階からの遠距離攻撃が降り注ぐことになるのだが、来霧は〈氷通滑〉で、足元の骸骨達を凍らせ、足場として走り出した。二階からの攻撃は広範囲の為か、足元の骸骨達と同士討ち的なことになり、氷の割れた所から、白き者達はくだけちっていき、数の利で負けていたシャラ達に精神的な意味で恩恵を与えてくれる。

『約二〇〇ってところですかね。蘇生まで大体一〇分みたいなので、殲滅は無理かと』

「まあ、そうなるか……っつ」

 気付けば、HPが一割近く減っている。さっきの斧のやつだろうか。右肩に片手を添えながら来霧は〈人骸術士ボーンマジシャン〉を一体切り落とす。

「ねぇ、竹光っ。射手の方はどう? 私の攻撃届かないからさっ」

 〈IITイート〉通じてなら耳を壊しているだろう音量でシャラは問いかける。

 〈四×四同射〉に〈四×四連射〉、〈二×二同射〉そして〈二×二連射〉の連続使用による矢の雨で徐々に追い詰めているようだった。しかし、一階から二階までの高低差や、居場所からの距離がまずいのだろう。来霧はその場所にいたので二返事なく請け負ったようだが。

 そうとは言ってもしかし、彼らの蘇生にかかる時間は一〇分ほど。正直、無限ループになりそうな気もしてしょうがない。


「ほいっと。二階鎮圧~」

 階下を見ると、攻撃の回避による誤打。つまり、同士討ちが所々で見られる。その場合、通常よりドロップ量が減るという問題が。

「きりがない。ある程度倒したら、つきのフロアへ向かうぞ」

「そうね。なら一発決めてから……」

 一撃型『紫陽』の高めの軌道で相手中心に穴を開ける。そしてキーリを最後にその空間を抜けた。


 中地下一階の狭いエリアを抜けた先。地熱の為か上昇していく気温にそれぞれ悩みながら、五人は進んでいく。まるでヒカリゴケの橙の光が白熱灯のように高熱を発するように感じながら。

「くそぅ。やりにくいな」

 自動的に減っていく体力と意識の中、来霧は呟いた。その一言は救助を求めているようにも見える。が、しかしその視線の先のシャラは何も気付いてないふりをしているのか、視線も向いてなければ、言葉もかけてこない。

(ある意味当然なのかもしれないな)

 ステータス画面を開いて来霧は溜め息をついた。

 水属性からならまだしもそれを飛ばして氷属性から始めた。こうなるとは解らなかったとはいえ、自業自得としか見えない、だからだろう。

 クララの配慮から、体は麦茶のような色に包まれる。

「クララ……ありがとう」

「どういたしましてですよ。でも気にしなくていいですよ。だって、来霧さんはこの部隊パーティー髄一の攻撃手アタッカーです。だからですよ」

「クエスト攻略のキーマンになり得るってことかな?」

「まあ、そういうことですね」

 後ろからシャラの視線を感じながら来霧は周囲を見回す。Snowと、クララのお陰か、HP・MPのパロメーターが最大値近くまで戻っていた。

「さあ、行きましょうか。来霧さん」

「ん、ああ」

 値確認中に届いたその声に、来霧は即答……ではないが返すと、皆立ち上がって次の階層フロアーー地下一階層に足を進めた。


 暖かな橙色の光溢れる空間。そこはどの階層フロアも同じなのかもしれない。勿論、階が違うだけに温度の面でも違いは顕著に現れていたのだが。

「鼠ですかね。骸骨の次は」

「〈母なる土竜(モグリュ)〉もいるよ!」

「向こうには〈炎鬼フレイムキラー〉や、〈燃え盛る赤蜥蜴(バーナーリザード)〉がいるみたいよ」

「あ、あれは〈紫電明子ウィルス・ブライト・フェアリ〉ですよっ! ふむむーう。モンスターながら可愛すぎですよね! 連れて帰りたいですよね、来霧さん」

 目をキラキラさせながら言うSnowに押し負けて、苦笑する。

(か、可愛いのか? て言うか連れて帰るのは可能なのか?)

 空中に浮くプラズマというか電気の塊を見ながら、来霧はそう思う。

「にしても、一階降りるだけで種類が結構増えるんだな」

 横から「お持ち帰りっ」と軽快に言うのを少し気にしながらキーリはモンスターの前に躍り出た。

「〈威圧法コウアーズ〉っ」

 キーリが後ろに合図を出す。そうして来霧は瞬時に飛び出し、キーリの邪魔にならないように倒せるものから手をかけていく。炎属性の赤蜥蜴トカゲキラーを、避けるようにだ。

(対炎と、対熱で分が悪いのは分かっている......だから)

「仕方がないわね。それらは私に任せなさい」

「そうするよ」

「ふむむーう。私だってやりますよお」

 Snowは傘を取り出すと開いて〈梅雨ばいう〉と告げる。

 天井のある空間に継続時間5分だが、雨が降る。洞窟に棲息するモンスターからすれば、初の雨かもしれない。少なくとも大粒の雫が雲のない空間から降り続けると言うのは初めてだろう。

 その広範囲攻撃は殆どのモンスターにダメージを与えた。特に炎属性のモンスターとなると全滅だ。

 この攻撃は広範囲に渡った技だった。

 その為だろうか、奥から多くのモンスターが現れた。炎属性のも数体ほど紛れ込んでいたのだが......

「やべーな。目の前がチカチカしすぎだろ」

「そうですね、危ないです。〈紫電明子ウィルス ブライトフェアリ〉。病原効果バットステータス『目眩』・『感電』持ちです。下がって!」

 来霧がここで借りを返すつもりか、〈氷天桟〉で攻めるが効かない。シャラやクララが後ろから支援するがこれもまた。

(何でだ? どうしてこんなにも当たらないんだ?)

「恐らく、ヘイト上位一人による攻撃――」

 キーリがそう呟きながら黒い光に切り込むが、 ダメージはない。

「――かつ魔法攻撃であること」

 つまりヘイトの向いた先がSnow又はクララならダメージを与えることは可能と言うことだ。だがそれはそれなりのリスクを負う。

 キーリからヘイトの向き先を変えるのはより脅威と思われる技を使うのが手っ取り早い。が、キーリ以上のヘイトを越える技を持っているかと聞かれれば、今のところないとしか言えない。

 Snowは回復重視であり、さっきの〈梅雨ばいう〉が一応あるもののヘイト率は低め、さっきのも奥から逃げ出してきたに過ぎないだろう。

 そしてクララは、吸収技を使うが便宜上相手に気取られないように使うことが多い。たとえわざとさせるにしてもキーリ程のヘイトは生み出せない。

「効果切れはあとどれくらいだ?」

「あと五分。これは持ちこたえられないです。一方的な攻撃ですから」

 来霧の頭の中に『撤退』の字が浮かび上がる。確かに戦略上必要な選択肢だが、何より一階の骸骨の集団の方が気になって仕方がない。

 そんな時、来霧は右側の壁際に小さな道を見つけた。


「光の方も問題ですが、鼠の方も侮れないと......病原効果バットステータス持ちのようですし」

 確か『火傷』と『感染』だったはずだ。どちらも長時間体力を削る注意が必要な効果だ。素早さ・繁殖力も問題だが、今回はあまり気にしなかった。

「あの黒い光の方ですが、種族が妖精なんですね。つまりは属性効果無視ということで、属性攻撃は使っても意味がないと」

「そうか......」

 暫くの間、沈黙の時間が生まれた。

 静かさのせいで、雫か落ちる音がより広さを難しさを際立たせた。

 残り二割のMPとHP。その数値は脱出には少ないものであり、出るのを自然と押し止められている感じかする。そうなると、死して脱出するか、命辛々脱出するか。その二つは新たに手に入れたアイテムの保有の点で異なってくる。アイテムを損失するか、しないか。

 最初の勢いを殺された五人はただ、小さな空間で籠っていることしかできなかった。

「上の骸骨たちは蘇生しまくってんだろうな」


「ですねぇ」

 細い道の先は〈非出現区域ノットエリア〉。天井が高く見える橙色の空間だった。雫が鍾乳石から垂れ落ち、その先の小さな窪みに落ちている。その音がはっきりと聞き取れる程、静かさが増していく。

 それでも入り口を固める来霧。このエリアは非出現とはあるが、別にモンスターは侵入可能だし、戦闘も起こりうる。この非出現とはただ単にそのエリアは〈再来・蘇生リボーンの法則〉の適用外ということだ。ここでモンスターは蘇生することがなければ、味方の蘇生もまた……


(果たしてモンスターに対して有利に立ち回れるのだろうか)

 来霧はそう心に問いかける。それに帰ってくる答えは残念ながら「ノー」だ。属性的な観点、環境的な観点等から見てもだ。

 このクエスト自体も四〇レベル以上で構成された一小隊パーティーが推奨だったようだ。

 つまりは、このクエストは今の来霧達には不適当なクエスト……だったのだ。

(でも、それを認めてしまうと……)

 来霧は無力感に襲われる。以前の自分がまた帰ってくるようで。苦しかった。

「だから決めた。帰ろう。みんなで脱出しよう」

 そんな声は〈イート〉越しに全員の耳へ届いた。

「クララとSnow、シャラの三人は僕と共に階段を登り先に中階と一階を繋ぐ階段の元で待機。恐らくそうなるとキーリに敵全体が向くと思うけど......」

『任せてください。あとから追いかければいいんですよね?』

「ああ。そうだけど引き付けながらな。モンスターは中階で迎撃する。合流後はキーリに回復集中で。そして、確かめたいことがあるんだ」

 そう言うと、来霧は道を抜けた。

 そこで待っていたのは完全復活直前の〈人骸〉の集団だった。


「さあ、ここは僕に任せてシャラ達は先にっ」

 来霧は最後に何らかのアイテムをシャラに投げると、白い海の中に飛び込んだ。

(凄いな。既に一部が必中になってるし)

 上を少し気にしながら来霧は氷の張った木刀を振り回す。二階の〈人骸射手ボーンアーチャー〉の目が青く光る。その弓から放たれた矢は途中で比例のグラフのような軌道を描くと来霧に向けて飛び込んでくる。来霧はその飛び内の幾つかをすんでのところでかわす。が、それは地に突き立つことはなく、スレスレのところで軌道を修正する。

「っ!」

 骸骨に囲まれた来霧には足元からの攻撃は防げない。減少値は思ったよりも少っなかたが、こちらの範囲外からの攻撃は減らしたかった。

「――〈殺法(デスティネイト〉っ『氷華』」

(だから無理矢理道を作るんだ。全て託した彼女たちに)

「いざ」

 残りHPは二割弱。限界がちらほらと見えてきたとき来霧は飛び込んだ。白き暴力の中に。


『シャラ達は職業上、荷物補正があるはずだよな』

『ええ。私とSnowにあるわよ』

 キーリは中地下一階で奮闘していた。〈紫光明子ウィルス・ブライトフェアリ〉はそこにいない。何故か中一階まで上がった時いなかった。威圧はかけていたはずだが、どこにも見当たらない。もっと言えば〈火鼠ヒートラット〉もだ。

 ただ、暫く考えてみると思い当たる節がないでもなかった。

(この場にいるのは......成る程モンスター(彼ら)には種ごとによって出現する範囲エリアが違う。たとえ階段が出現範囲エリアであってもだ。

「それが知りたかったのか」

 キーリは〈イート〉で来霧に連絡すると再び〈威圧法コウアーズ〉をかけた。


 白の暴力は数の暴力を武器に一人で戦う来霧に襲いかかる。来霧の役割はこの広間を全員抜けるのを補助すること。三人は何とかなったがあと一人。キーリを待つ。

「あと一割をきったか」

 パロメータを見ながら呟いた。

 二階は既に制圧後であり来霧は一階の骸骨を潰していっていた。

『何とかなりました』

「了解。待ってるから」

 来霧は意識的か、急かす言葉は出なかった。ただ、安心感があったのだろうか。あと少しあと少しと呟きながら正面を見た。相変わらずの白の暴力だ。うじゃうじゃとうねっている。しかし、いつも通りではなかった。

 ここでの戦闘は三〇分を越していた。

 だからだろうか、見逃しがあったのは。目の前の骸骨たちの目の光が炎のように紅蓮の瞳になっていた。

 そして来霧がそれに気付いた刹那――陶器が割れる音が広間に儚く響いた。

☆登場人物☆

来霧

シャラル

クララ=ミレル

キーリ=ジェイン

Snow

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