4話 寂寂と雪あかり--(3)
※視点変更されております。語尾などの表現の変更がされております。
来霧さんは特に反対もなく、心配もしていない表情で快諾してくれました。
ただただ優しい人ではないと思ってはいますが、その優しさにいつも、助かっています。
「で、オーツナムか……徒歩で行くとキツイな」
「まあ馬車に乗せてもらいましょうか」
「ま、まあ行けるな」
来霧さんはITTを覗いているような素振りを見せつつそう言いました。
馬車でオーツナム、ストックブルク間を往復すると大体2,000f程かかるらしいです。小さな漁村のため、大きな道が繋がっている訳では無いためでしょう。熟練の運転手で片道半日だそうなので日帰りは難しそうです。
それでも来霧さんは承諾してくれました。このパーティのリーダーに相応しい方ではないでしょうか。いつも迷惑ばかりかけて申し訳ない限りですけどね。
「とりあえず早朝集合でいいか。シャラはシャラで用事があるらしいし、キーリはいつも通りだ。2人になるが。まあ問題はないだろう」
どこか嬉しそうにITTを閉じた仕草をしていました。きっと馬車代しか脳裏にないのでしょう。
下心のあるような笑みではなかったので、凡そ親切心と馬車代で葛藤して妥協できたという感じですね。
「じゃ、今日のところは解散だ」
「そうですね」
やっと、楽しみにしていた日が訪れる。
つい、強く槍の柄を握ってしまう。
そして力んでいたことに気が付くと、無言で槍を片付けた。
◆
「来霧さん」
「ん、そうだったな……」
来霧さんは、まるで今まで忘れていたかのように、ハッとした表情になりました。
「じゃあ、クララは探索を頼む」
「分かりました」
「探索?」
「1人でさせるのかしら」
「ん、十分だろ」
槍の石突を地面に垂直に立てる。
黄色の結晶から不思議と光が漏れ出してきました。何も知らない2人はただ呆然と見つめているようでした。
複数に伸びた光の線は新たな『私の目』と言いたいかのごとく、黒く塗りつぶされた空間に光を齎した。
「……」
流石に広いせいか、全体の把握に時間はかかって仕舞いますが、現時点で下へと向かう階段は見つけたので成果は上々でしょう。
「……ありました」
方向が正しければ。
「こっちです」
「よし、異変かどうか見てみようじゃないか」
「解放したのね。クララ」
「そうですね。全開放までは程遠いですけど」
「でもナイスだと思う。索敵を1人で任せられるほどの能力だから備えもしやすいし」
皆から頼りにされるような能力でよかったと安堵しました。もちろん今扱えるのはこれだけではないのですが、お楽しみはボス戦に残しておきましょう。
光の筋を頼りに、足早に向かう来霧さんとシャラルさんを、キーリくんと追いかける形で駆け足で追いかける。その先にはポッカリと空いた、どこに続いているのかわからない穴がありました。
陽明子を使い中を覗き込もうとするも流石に奥までは見通せそうにない。
ただ微かに青い光が見受けられる。複数個に別れているのだろうか。大きさは確かに〈母なる森土竜〉のものと近しい幅にみえます。
となると、ここに起こった異変とは、迷宮外から〈母なる森土竜〉が侵入し、その前に土小鬼の住処を通過した。そのために繋がってしまった穴から土小鬼が侵入してしまった。
破壊されたため住処を替えようとした結果氷小鬼との縄張り争いに発展した。
「小鬼達は恐らく被害者でしょうね」
「そうなるだろうな」
「なら何故、森土竜はそんな大移動をしていたのかしら」
「習性か或いは」
第三者によって移動をせざるを得なくなったのか。
もしも後者ならば、時を改めて再調査する必要性はありそうです。
「大量発生ってほどの異変でもないでしょう。街が把握しているかどうかも微妙ですね」
「とりあえず外的要因ならば、僕は周辺事情も鑑みる必要があると思う。今日明日で判明することではないでしょう」
「そうだな。今回はここまでにして下へ行こう。案内は行けるかな?」
「ええ、既に見つけてありますよ」
「迷宮泣かしの能力ねそれ」
確かに固定されたものならまだしも、間取りの変化する迷宮の場合、難易度が一気に温くなってしまいますね。
楽しむ心も大事ですから、何だかんだ言い訳付けて、使わずに攻略も面白そうです。ただ今回はここまで来たのですから。
「階段はこちらです」
光の筋で示してみせる。
相変わらずですよね。道がわかれば、走って早期に攻略を急いでしまうのは。
まあ、ここに居ると外の時間がわからないので、夜になる前に終わらせたいという気持ちは分かりますけど。
「はぁ」
「キーリくん?」
「猪突猛進過ぎますね」
「ええ、罠の確認はまだ出来てないんですけどね」
でも、そういう所が彼ららしさだと思うと、引き留めようという気持ちが生まれないのは事実だ。
『出来ることがあるなら手伝ってあげたいって思うことなんて、よくある事だろ? ただそれだけだよ』
そう。先日、オーツナムまで、護衛半分相談相手として着いてきた彼が、逆に聖堂送りになりかけた時に、彼は笑顔で答えてくれました。
陽明子の光は直前の変な思い出まで、暖かく包み込んでくれるようでした。
そして〈灯火海霊〉の光は、燐光に負けじと優しく輝いています。
寂寂と雪あかり--(3) 登場人物
来霧・シャラル・クララ・キーリ




