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誰ぞ彼のララバイ-せかせか異世界紀行-  作者: トウガ ミト
1章 『東露』の街
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3話 揺らぐ箙--(6)

寝落ちしました!

そんなこと言う必要も記録する必要も無いですが!

 駄目だ。

 間に合わない。

 いや間に合わせるんだ。

 パキパキと木刀が音を立てているのを感じる。同時に指先が冷たい。冷え性では無いはずだ。


 それはつまり?


 ブリンクの後に超至近距離にまで間合いを詰める。


 問題は無い。


殺法デスティネイト


 当たった感触はあっただが溶液草メルティフィドの胴体は真後ろ。


 いや。


 ここにいない。

 白い粒となって崩れていく。

 パァンと風船が割れるような音を立てて溶液草メルティフィドを構成していた何かは崩れていった。


 だが油断はしてはいけなかった。

 現に今、落下中だったから。


 ◆


「これは凍結の塗膜と言う」

「トウケツノトマク?」

「そんなカタコトで話した記憶はないぞ」


 茸を食べたあと、アファル亭の正面で、カツトヨが待ち伏せていた。

 心配をしてくれていたのだろう。


 大丈夫。僕はいい仲間に出逢えた気がするから。


 そう思っている時に取り出したのがそのワックスだ。


 氷属性の威力を高めたり、部分的に氷属性の能力が使えるようになる。確かまあまあレアなアイテムのはずだ。


「お前の木刀を見る限り、攻撃力が圧倒的に足りない」

「ですね。だけど、それをフォローするために」

「そのフォローも弱いんだ」

「……」

「だからドーピング(・・・・・)をする」

「ドーピングですか?」

「字面で判断はするな。ただ単純に合成で能力スキルを強化してやると言っているだけだからな」


 凍結の塗膜はそもそも氷属性の威力しか強化できない。

 だから加えてこれも聞いてみた。


「時間は……」

「まあ1日だろう。別に丁寧に塗って乾かすだけだからな」

「もう1つの能力があるみたいなんだけど」

「ああ確認している。移動型の『熱』属性。つまり陽炎のように揺らがせながら、ブリンクが出来るスグレモノだな」

「そっちは」

「悪いが移動型は、個人の能力が直接影響される。つまりは強化しても意味が無い。耐久フォローならばあるだろう」


 陽炎のように距離を詰める。

 確かに相手の間合いの時、これは便利だ。

 恐らく、そんなに長い距離を移動できるとは思えない。

 そしてレベルを上げたら移動距離が伸びるなんて、どう考えても思えない。確かに、個人の能力に依存するのだろう。


「そうだな……実は俺も似たようなものを持っている」

「えっ」

「試してみるか?」


 もちろん二つ返事だ。

 使いこなせると強い。それは間違いがないからだ。


 そういえば虹を見損ねた。

 でも強くなってからとても美しい虹を眺められたら。しかも秘境でだ。

 どんなに気持ちがいいのだろう。


 それまでのお預けだ。

 今は……武器になれることからだ。

 そして役職についても。


 ◆


 命名すらしていない〈殺法デスティネイト〉。

 とりあえず生き返ったら、何かいい案を募ろう。


 痛い。


「……」

「あ、起きた」

「白髪の起こし方ってブラウン管と同じじゃん」

「つぅ……なんだよその言い方」

「あの……今、別の溶液草メルティフィドと戦闘中なんですけど……」


 一瞬思考が止まった。

 てっきり走馬灯が走っていたのかと思ったのだ。

 顔を手のひらで触って確認する。

 感覚はちゃんとある。

 だがこのパーティには回復が使える人はいないはずだ。少なくとも現時点で。


 手のひらの木刀『凍刀:氷空そら』は、まだ冷たさを保っている。


 凍結の塗膜は、氷属性を高めるのみならず、周囲の温度を吸収する。

 その熱は使用者に移動するわけで、便利なエアコンにはなるのだが、それはこの寒い環境だからこそだろう。しかし使えば使うほど溜め込む温度は高くなる。使いすぎは厳禁だ。逆に高温で自滅してしまう可能性があるためだ。結局、いいことまみれではないという事だ。


 そんなこんなで今回は、属性一致でかなりの威力がでたのだろう。想定していたものよりも火力が高かった。



 これが所謂『臥薪嘗胆』だろうか。

 正面をぼーっと眺める。

 慣れてきた味に少し格好悪さも覚える。

 キーリが挑発をし、クララは初心者用の槍で突っついている。


 それぞれいい仕事をしているのだ。

 まあクララにとってはひもじい思いなのだろうが。


 確か彼女の自分語りの時だった。何故、眷属使い(イランダー)を所得したのか。

 なぜ槍を選んだのか。


 彼女は答えてくれたのだ。

 それは僕にもあった現象だった。

 この次元せかいに来る時、その時持っていたものをおまけとして引き継いでいた。

 僕の場合は教科書、筆記用具……つまりは勉強アイテムだ。

 そして彼女は、愛用していた魔槍だそうだ。

 この次元せかいに来てその魔槍が、引き続き使えることを知った。

 半年使った教科書のような、文字の奔流ではなく、長く親しんだ武器だからこそということだろうか。


 そして、その能力を引き継ぐのに必要となるのが、眷属使い(イランダー)だったということだ。

 とりあえず槍として扱う手腕よりもそちらの方を優先したようだ。

 確かにそれは正しいのかもしれない。


 先に槍術士を目指した時、それまでの過程でどれほどの記憶を失うか。

 槍の扱いよりも、魔槍の主となる要素を優先する方が合理的だった。


 つまりはサブ職に『槍術士』を手に入れるということなのだろう。


 だからこそ、今のうちは脆弱だ。

 それを理解してキャリーするつもりだった。が、逆の立場になったらしい。


「待たせたね」

「あ、回復出来ました?」

「ああ」

「では残り400mlと7本頑張りましょう!」

「もちろん、任せてよ」


 一回り小さな溶液草メルティフィドが数体いる。

 最初の溶液草メルティフィドはボス格のものだったらしい。

 そりゃそうだ。あんな蔦振り落としで武士を一撃だなんて桁がおかしい。

 だがそんなボスでも逆に一撃にできる力が、刀剣士スワーダーにはある。


 尤も連発は出来ないが。


「シャラ」

「何? 改まって」

「フォローは頼む」

「構わないけど基本クララのフォローに回るから覚悟してちょうだいね?」

「ああ、問題ない」


 潰される瞬間を見逃さず、矢を射てくれればいいだけの仕事だ。


 日は沈みつつある。だけどこのペースならば、間に合うだろう。

 それこそフィクションのよくある展開のように。

揺らぐ箙--(6) 登場人物


来霧・シャラル・クララ・キーリ


カツトヨ

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