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誰ぞ彼のララバイ-せかせか異世界紀行-  作者: トウガ ミト
1章 『東露』の街
20/35

3話 揺らぐ箙--(5)

誠に申し訳ありませんが1章 揺らぐ箙--(3)の後書きに1部書き忘れがあったことをこの場にてお伝え致します。


 喩えなくても沼だ。

 何故こんな職業にしたのか今もわからない。

 〈武士サムライ〉は攻撃力にも体力にも秀でている上に、極めようによっては回避や防御を高める人も多いという。

 だが、結局のところ武士サムライは、一タンクでしかない。


 要は耐久職だ。


 誰かが戦うのをフォローする上に生存しやすいというのが特徴だが、それはレベルが低いほど上手くいかない。

 経験の数もあるだろう。

 しかしそれ以上に、守る仲間がいないのだ。


 つまりはただ溶かされるだけのために溶液草メルティフィドの前に立ちはだかっている。そして餌となって果てる。


 分かっているものの、期待は裏切られない。諦めなければいづれ勝てるとも言うじゃないか。


 だが、そろそろ無理も理解しつつある。

 これで何度目の吊り上げだろう。

 これから何度目の白い石台だろう。

 ソロだとここからの対応は個人の能力がない限り困難を極める。

 かと言ってこの依頼クエストの対象レベルは低かったから、1人追加したところで上手くいくとは思えない。


「このままじゃ……いつまでも……」


 期待に応えられないままだ。

 あのお爺さんには恩があった。

 だからこそ報いなければ、いけないのに。


 心の底から叫びたくて仕方がない。

 しかし叫んでも、強い人には見えないのだ。この苦しみは。


「毎日同じご飯ばかりで幸せか? うん?」


 聞きなれない声とともに衝撃を感じた。

 聞いたことの無い叫び声が混じり、さっきの声の主が誰かわからない。

 視界がおかしい。

 まるで地面が突っ込んできているかのようで。

 いや、これは。


「ぐえっ」


 まるで蛙を潰したかのような声。

 誰かが下敷きになってくれたのだろう。

 かと言って、人がクッションになれる訳もなく、ダメージが入っているのを感じる。


 その姿を拝むと、若い少年だ。同年代だろうか。

 いや、そんな僕を見たら年下だと思われるかもしれない。


「ドラマみたいな救助って結局フィクションなんだな……」

「ごめんなさい!」

「気にするなって……キーリくんなんだろ?」


 どうして自分の名前を知っているのか。直ぐには理解できない。

 そもそも、足を切った時点で溶液草メルティフィドはお怒りだ。まずは場所を移さなければ。


 そう思って肩にかけようとした時、影が浮かんだことに気がついた。


「バッカじゃないの?」

「う、うるせぇ」

「まだ、回復能力身につけてないんですから無理しないでくださいよ!」

「せっかく高い矢を使ったんだから、生きなさい」

「分かってらぁ……僕はこんな所で聖堂にお世話になるつもりはないしね」


 3人でパーティを組んでいるのだろうか。

 だが僕のことを見知っているような言葉尻だ。

 そう思った時、最近あった事故を思い出す。


 もしかして……誤ってパーティ参加了承したせいですか。


 素直に今言い出すことは出来ない。

 せめてこの依頼クエストを終るまで。

 そもそも、彼らも同じ依頼クエストを受けているのだろうか。


「よし……行ける」

「無理しないでよ白髪」

「分かってるって緑髪」

「は?」

「ん? 間違ってたか?」

「……合ってる」

「なら改めてよろしくシャラ」

「なんで緑髪って言わないのよ」

「長いから。それにそう呼んでと言ったのはシャラだからね」


 仲がいいのか悪いのか分からないが今は協力をするとしよう。


「確かに僕はキーリです。ただ後で言っておかないといけないことがあるので」

「本人確認了解!」

「さぁ、収穫祭です」

「食べたくはないわよ?」


 元気な人達だと思いつつ、それぞれの役職を見る。

 1回頷いて、もう1回頷いて、最後は「ん?」となったがまあいいだろう。


「前線に出ます。皆さんは」

「それは乗れないな」

「何を言ってるんですか? タンクが前線を出るのは当たり前でしょう?」

「落ち着けよ。今はいい。今の間にセットで回復しておいて欲しい」

「白髪の言う通りよ。溶液草メルティフィドに慣れているのはキーリに間違いはないわ。だけど、あなたがいない状態で戦えるとは思っていない」

「買い溜め沢山してますから!」


 自分の体力を確認する。2桁になっているがまだ4割は残っていた。

 4割もあれば十分ではないのか?


「ですが」

「ふざけないでよ」


 弓使いは急に声を荒らげる。そんなに悪い事なのだろうか。

 困るのは結局僕のみなのに。


「タンクタンク言っておきながら、体力管理も怠った。その結果が連敗でしょ? 少しは自分の体も鑑みなさいよ」


 弓使いの女の言う通りだ。

 タンクとはいかに生存して味方のフォローをするかどうかだ。

 攻撃の手を緩めさせないためにも、ダメージを引き受けるのが。


 だがさっきの自分はなんだ。今までの自分だ。タンクタンクと言いながら、やっていることは前進のない自己犠牲。

 そんなもの勝てるはずないじゃないか。


「……」

「……黙っててもいいわ。でも体力回復しておいて」


 こんなにも苦いのか。

 薬草というものは体に効くと聞くが、やはり効くのだろう。この苦味が全てを物語っている。



 数分経ち満タン近くになる。

 吐き気を催しているが、これは素直に口に合わなかったからだ。


『今行きます』

『ああ、さっきはゴメンな』

『気にしないでください』


 覚悟は決まった。

 溶液草メルティフィドは1番脅威ヘイトを覚えた人を狙う。

 数分間見学していて気がついたことだ。

 刀剣士の男が狙われ続けていたのに、数秒間狙いが変わっていた。

 そのタイミングは弓使いの女が特殊な矢を1発射た後。

 それまでの数で圧倒しようとした作戦から1本弓に変えたのだろう。


 弓使いの特徴として主に2つあり、総合的な命中率と1本のダメージが、矢の本数が少ないほど高くなるということ。そしてそれぞれ『複数』の矢を射る人と、『単数』の矢を射る人がいる。専門的な人が多数だが弓使いが一人しかいない時、単数の矢を利用することもあるという。


 そして脅威ヘイトを与える条件。それは瞬間火力と。


「〈若武者の威圧コウアース〉」


 ちらっとこっちに足が揺れたのを視認。

 フェルトのコートの砂埃を落とす。

 そして走る。

 数ある能力のうち、攻撃速度が下がったようだ。


 地面を打ち付ける足。それは鞭そのものだ。体力回復しても、あれの直撃を受けるとお陀仏だ。

 タンクである僕が言うのだから間違いがない。


『今の鞭は、ほぼ一撃必殺です』

『なるほどサンクス』

『間合い考え直すわね』

『待ってください回避力低いのに……』

『だからこそ、僕はいるんですよ』


 連続で襲いかかる、今の僕には一撃必殺の攻撃。鞭は1本ではなく6本程ある。

 何とか3本は避けた。

 後少なくとも2本避けなければ。


 影とスピードを測りながら既のところを躱しきる。

 しかし、モンスターも頭がない訳では無い。なんてったって、僕単体の攻略法を知っていた。だから何度も……


 だからって何度も死んでいられない。

 恐怖が何だ。

 体力が何だ。

 昨日までの僕じゃないぞ。


 脳裏を駆け巡る言葉は1人では得られなかった言葉だ。

 タンクである僕が言うのだから間違いがない。


 5本目は。


 そう思った時に溶液草メルティフィドが残りもう1本を利用してフェイントをかけてきたことに気がついた。

揺らぐ箙--(5) 登場人物


来霧・シャラル・クララ・キーリ


(トトノカ)

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