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誰ぞ彼のララバイ-せかせか異世界紀行-  作者: トウガ ミト
1章 『東露』の街
17/35

3話 揺らぐ箙--(2)

7分の2です。

ふと思ったのが会話文の間に全て空欄をあけることですが(オーソドックス)、どうなのだろう……やはりそちらの方が読みやすいでしょうか?

 あの日、例の役場の男性が問いかけた。


『キミはそのままでいいのかい?』


 唐突だった。

 内容を聞いても、特に迷うようなことも無かったが、面白いとどこかで感じている僕は確かにいた。



 狩人の少女、シャラルの耳は見慣れない尖り方をしている。刃物と言ったら言い過ぎだろうが、まさにそんな感じだ。

 横に長いというのだろうか。


 この次元せかいには、複数の種族の人々が生活している。

 そう役人は語る。

 6種類の種族が存在していたそうだ。

 種族と言っても国ごとではなく、素直に特徴に則って区別した結果だろうか。


 エルフ、ヒューマン、ドワーフ、ジャイアント、フェアリー、エンシェンタ。


 詳しい説明はなかったが、どこかで聞いたことのあるような名前ばっかりだ。

 この6種類のなかで特に人口が多いのがヒューマンだそうだ。まあ妥当の結果なのだろう。種族に興味があっても、変えたあとの違和感が怖いのだ。


「……」

「ねえ白髪」

「……何?」

「死ぬわよ?」

「え?」


 考え込みすぎたのだろう。

 周りには6体ほどの赤茸マッシュが、構ってほしそうに、いや、非常に邪魔くさそうに叩いてきている。


「……」


 棍棒を持っているとはいえ、このレベルに併せて、このサイズ。特に痛みを感じる程ではない。

 しかし、容赦なくダメージは受けているようだ。


「うわぁっ」


 事を理解した。

 木刀で振り払うと2歩下がる。


「あれー? 白髪さんって茸も怖いの?」

「な訳ないだろ。痛みが無さすぎて気づかなかったんだ」

「どうせ嘘でしょ?」


 必死に言い返すが、そのままの流れだと思っているのか、『嘘』の一言で一蹴された。


 どんなに毛ほど痛くなくても、コンマ1分でもダメージを受けたら、繰り上がりで1ダメージになる。

 意外と判定には強い茸達だったのだ。


「まあ無理せず行きましょう!」


 シャラルが〈エルフ〉に対して、クララは普通の〈ヒューマン〉だ。詳細を教えてもらえなかった〈エンシェンタ〉の可能性もあるが、彼らは絶滅したらしいからやはり違うのだろう。


「……大丈夫ですか?」

「え、ああ、大丈夫だよ」

「体力1桁ですけど……」

「あー……あはは何とかなるよ」

「……」


 何かを疑っているような鋭い目を向けられる。

 そんな2人の手柄を奪うようなことをした記憶はない。それとも、雨についてやっと気がついたのだろうか。


 レベルが同等とはいえ、基準と平均がまるで違う。

 Lv5程度の〈棍棒持ちの赤茸(ストラークマッシュ)〉で体力が20。こちら側の攻撃が1発、7から8程度だから大体3発程度。それに対して相手の攻撃は1発、2ダメージのため、油断しやすいのかもしれない。無理しやすいのかもしれない。だが仮に無理をしても生存率は比較的高いと言えるだろう。


「……これ」

「苦いやつじゃん」

「それでも良薬よ」

「真に良薬ならば全年齢層向けの味にするだろうよ……普通」


 色々繋げられたかのような不思議な感覚に包まれる。味の苦さよりも際立って感じるそれは、数値化された体力に、わかりやすく表された。


「薬剤師じゃないんだから、私に言われてもどうにもならないけど」


 それもそうだ。だがこんな汎用的な薬ですらこの味で流通している。

 ここでは薬剤師に期待は持てないだろう。


「まあ……ありがとう」

「当たり前でしょ。前衛が死んだら……大変じゃない」


 ハッキリとツンデレですと、その表情と声色が伝えてくれると、無意識に一礼した。

 そしてその言葉が素直ならばシャラルが前に出過ぎることは無いという事だ。

 出るなら自己責任にしておこう。


「ら、来霧さん安心してください! キーリさんが合流すれば……」

「どっちにしろ前に出るでしょ」

「そうですけど……」

「ああ、その通りだな」


 シャラルのような遠距離武器に対して近距離武器である木刀。間合いのことを思慮に入れても比較的に前線に出ているということには間違いがなかった。


 耐久の薄さは、後衛とは引けを取らないが最大の物理火力を誇る職。

 それが刀剣士スワーダーの魅力であった。


「今は、目の前の狩りに集中か」

「分かってるじゃない」

「舐めてたのか?」

「見た目だけね」


 髪の白さをいつまで引っ張っているのだろうか。そんなに物珍しいものでもない気がする。むしろ黄緑のシャラルや、水色のクララの方が珍しい類いだろう。


 ただポジティブに考えるとそう覚えてもらっている。言葉と裏腹の優しさを垣間見ることが出来そうだ。





「あまり怖くなくなったな」


 慣れというものは何事でもこんなに早く来るものなのだろうか。

 耳元で1回鈴の音が鳴る。


「レベルアップか」

「お、おめ」

「ナイスです!」


 ところで、ゲームの流れだと一気にレベルアップを遂げるのか開幕だけだ……と聞くが、レベルが上がるほど未知の見聞が減るからだろうか。どうしてレベルアップしずらいようにしているのかわからない。

 サクサク上げられた方がいいものでは無いか?


 過去に脳裏を駆け巡ったその言葉も、今となれば少しわかる気もする。


「……」

「お、より強いの探す感じなんですね」


 憐れみではなく興味無しにまで昇華した存在の相手よりも未知の存在に憧れるからだろう。

 そして同時に自らの『成長』と言う実感が、薄まっていくようだ。言い方を変えると、普通アベレージが無意識のうちに上がっていくということだろう。


「慣れた敵に相手していても、大体の場合美味しくないのはそのせいか」

「ん、食べるの?」

「焼きキノコって美味しそうですよね!」

「あ……そうだね」


 独り言が漏れて少し焦りを感じた。

 これまで独り言のせいで人から敬遠されがちだった過去は、まだ記憶に新しかった。


「そう言えば、近所に採ってきた食材を調理してくれるカフェがあった気がします!」

「ならそこで決まりね」

「ああ……いや、それはいい提案だな……」


 まだ温かくはなかったが、心を充足させる意味合いでは最適の答えだ。


「さぁ、さっさと2桁行くわよ!」


 シャラルのやる気の漲るその言葉に、小さく頷いた。

 その裏腹で騙しにかかって来ているこの小雨に、本当は誰が騙されていたのか。と思うと、ついニヤケを抑えられない。


 騙されていた3人はまたそれぞれ異なる思いを胸に秘めながら狩りを続けた。

揺らぐ箙--(2) 登場人物


来霧・シャラル・クララ(・キーリ)


役人

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