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誰ぞ彼のララバイ-せかせか異世界紀行-  作者: トウガ ミト
1章 『東露』の街
16/35

3話 揺らぐ箙--(1)

7分割その1!

改めて読み直してみると、違和感が多いですね。

内容は刷新したものの、不安は残ります。


 刀と剣の違いは簡単に言うと、刃が両面についているか、ついていないかという。

 現に、木刀を持ってみなければ感じることは無かっただろう。これまでは、刀とは先端から鍔を見ると、菱形に近い形の両刃だと考えていたのだが。

 実はそうではないのだ。

 包丁の形状の思い違いのような思い違いだ。


 じっくりと刀身を眺める。


「……」


 曇天の掠れたような光に、刀身が応えるように艷めく。

 冷たい風に晒されながらも美しさを保つそれは、直ぐに一喜一憂する僕には羨ましい存在だ。


「にしても……」


 何かがあったのだろうか。

 連絡した時間を優に超えている。

 まさか先に草原に出たとかではないだろうか。そう思い、軽く眺めるが、人影という人影はない。

 では場所が違ったのかと思い、周囲を見回すが、集合場所は西門。

 目印を利用して、地図を整合してみても、やはり西門。

 漏れる溜息。止まない雨がこのまま不安を増長させて終わるのだろうか。


「いや、待たせたね」

「……」

「きみ……だよね、来霧って人は」

「ええ」

「ちょっと合流優先していたのよ」

「あはは、迷っちゃって……」

「無事に辿り着けたならよかった……」

「で、3人でしたっけ?」

「ん、ああ今日はね」


 カーキのコートを羽織った緑髪の少女と、ベージュのコートを羽織った水色髪の少女。

 弓使いのシャラルと、槍使いのクララだったか。


 他所から見ると、両手に花の状態だが、まだどこかよそよそしい。これが初対面だから……ではあるが。


「でも、不運でしたね」

「と言うと?」

「予定してた日が、中途半端な小雨の日だなんて」

「充分でしょ。小雨という事は、雨天時の湧くモブが出るらしいから、確認にはなるわ」


 この西門の先の草原は、雨天時土が泥濘むため、それを影響としたモブが現れるという。降水量によっては増水した川の水が流れ込んだり、至る所が泥濘始め、水溜りができたり環境が変わる。環境の影響を受けやすいということだろうか。

 同時にそれに合わせたクエストも、議堂裏の広場の掲示板にて掲載される。


 なにはともあれ、移動する時や戦闘時、泥濘に足を取られないように行動しつつ、戦わなくてはいけないそうだ。


「ずっとここにいても埒が明かないから……行きましょう。白髪くん」

「ああ……て白髪って何だよ」

「愛称よ。似合ってるでしょ?」

「……」

「確かに可愛らしいですね!」


 100%外見から名付けた愛称だ。

 個人的には老けているように思えてしまい、賛同できない愛称なのだが、何故か、クララも乗り気だ。


「ああ、そうだった」

「これ以上何を?」

「私の事、シャラと呼び捨てでいいわよ?」

「じゃあそっちも」

「分かったわ。くん付けはやめることにする」


 いや、そうじゃないだろと思いつつ城門から外に出る。

 頑丈な城門は、その構造から大きな雨宿りとして機能していた。接合部が見えないところからコンクリートの作りに思えるが、この街に来てからコンクリート建築は見た覚えがない。となるとこの壁は一体材質は何だろうか。


 そんなこんな考えているうちに、2人は雨合羽の水滴を篩い落す。特に濡れているようには見えないが、恐らく小雨だからだろう。


「傘やっぱり持ってきた方が良かったかな」


 点々と感じる冷感に、軽く後悔を覚えつつあったが、あの2人に負ける訳にも行かない。


「バカね。逆に邪魔でしょ?」

「まあ、風邪をひかない程度に頑張りましょう!」


 こういう時のために、雨合羽はあるのだと痛感しながら、〈非出現区域〉を走り抜ける。

 ぱつぱつと不規則に訪れる音声は、比例して衣服を濡らす……というわけではなかった。

 まるで染み込む過程で蒸発したかのように、痕跡は残らないくせに、不規則なリズムが肌を撫でる。


 雨とはなんだろうか。


 そう考えつつも歩みはとめない。

 そして目標物が視界に映り始めるのだ。


「見つけましたよ」

「雨天のみだって聞いたからどれだけドロドロなのかと思ったら……少し濡れただけみたいね」


 雨合羽を装着して走っていた2人には、やはり気づかれていないのだろう。

 ゆらゆらと風に合わせて揺れるそれは、雨に邪魔されているものの、水滴の重みに凹むことも無く、ずっとその身を委ねている。


「早速始めましょ」

「ですね!」

「先々行くなって」

「遅れる方が悪いんですよーだ」

「まあまあ、文句の言い合いは終わってからにしませんか?」


 間に入るクララだが、ここまでの流れから小さな隔たりが出来ているだろう。



 歩調を合わせるように、二たび三たび、翻しながら、雨を楽しんでいる。


 僕にもそういうのは必要かもしれない。


「あら。後ろから見てるだけじゃ、強くなれないわよ」

「はいはい。今行くよ」

「これで、狩るペースも上がりますね!」


 見学に、経験値は付与されない事を予め聞いていたが、なんと矛盾していることだろうか。

 だけど、楽しそうなふたりを見ると、その矛盾の理由も理解できそうだった。


「ハメ外すか」

「おっとー?」

「ん?」

「抑える必要なんてないのよ。全員で上げなきゃ、一緒のクエ行けないもの」

「そうだね。だから暴れるんだ」

「そうですね。楽しみましょう!」


 ああ、そうだ。

 楽しまなくては。

 今日はなんだかんだ初の雨なんだから。


 掌を強く握りしめる。同時に、ITTイートを開いて確認した。

 氷属性は水属性の強化版らしいが……雨天に限って、特別補助の入る訳では無いそうだ。


棍棒持ちの赤茸(ストラークマッシュ)


 読み上げたのは、後衛役職の癖して先鋒を務めているシャラル。


『ただのキノコじゃない』

『持ち帰って、炊き込みご飯にしましょうよ!』

『こっちでも、炊き込みなんてあるのか?』


 どこか残念そうにシャラルは呟く。

 それに対して、初の戦闘だ、と口角を無意識にあげながら、ニヤケを抑えられてないのを自覚しながら、木刀を構えた。


 赤茸マッシュは、奇声を上げる。

 それは襲撃に気づいたためか、単なるあくびみたいなものなのか。

 その一瞬ではわからなかった。


『ダメージははいるのね』

『当たり前だ』


 だってこの木刀は、ただの例示商品では無いのだから。


 体が温くなるのを感じながら、触感だけの雨の中を駆け巡った。


揺らぐ箙--(1) 登場人物


来霧・シャラル・クララ

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