2話 アファルの隠し子--(2)
前回と比べ3分の1の文字量に抑えたはず……なのに……3話を超える……だと……!
という心境です。お察しありがとうございます。
近づけば近づくほど、神聖さは肌身感覚で感じるようになる。
「ここが『聖堂』か」
荘厳とした造りの教会は、その名の通り独特な雰囲気を醸し出している。
分厚すぎる扉がまるで聖なる気を逃さんとばかりに、立ち塞がる。が、さすがに年季があるのだろうか。扉には隙間が空いている。そして、そこから中に誰かがいるのか声が漏れてきた。
「カッコわりぃ」
「そうでも無いだろ。よくやってくれたと思うがな」
「でもよぉ、あのまま反射しまくってたら確実に勝てた奴だしなぁ」
「まあ、お前の弔いはとったし気にしなくていいだろ」
「気にするって、完全勝利出来なかったんだからさ」
「まあ、身軽じゃないのが悪いのです」
「装備柄仕方がねえだろ」
どこか荒々しい声だったが、それは仲の良さを間接的に伝えてくれている。
複数人いると教えてくれる足音は、時が経つごとに近付いてくる。恐らくこちらの扉を使うのだろう。又は扉が一つしかないのだろうか。
どちらにしろ扉の裏にいては危険だ。
2歩下がる。
「あ、すまねぇ」
「おいおい、誰に謝ってんだよ」
「ふむむーぅ……どうぞ」
重そうな扉が閉まるのを片手で抑えている。この様子を見ると、非常に軽いのではないかと思えてしまう。
そして用事のある人物だと思われたのだろうか。
中に入るのを急かしているように見えたが、そのあとの素振りを見る限りでは、ただ単なる親切心だろう。
「ふえー」
間抜けな声が、無意識のうちに漏れた。中は画面越しでしか見たことの無いような白い大理石の空間が広がっていた。
なんの用途があるのか分からないような、大理石の台が、直感で50近くある。
人ひとり寝転がれるようなそれらの台の中心には、神々しさを醸し出している噴水が、よりこの聖堂の神聖な雰囲気を昇華させている。
目に見えないマイナスイオンが、神々しい何かになる方程式が成り立っているが、意味合いにとっては間違いがないだろう。
「ここは一体」
「……神々のお導きを」
「失礼します、あなたは……」
「フランクリンとお呼びください。ストックブルク聖堂の管理並びに、司祭を務めております」
「そうでしたか……フランクリン司祭さん」
「……どうなさいました?」
「こちらは一体」
「こちらは〈渡来民〉の皆様がご利用になられる再誕拠点というものですね」
確か、この次元には、大きく分けて2種類の人々が住んでいるという。
〈地民〉と、〈渡来民〉と分けて呼ばれているそれだ。
前者は、この次元で生まれ、そして死んでいく最も身に染み込んでいる一生を送る人のことを呼ぶそうだ。
それに対して後者は、別の次元に生まれたひとのことを表すのだろう。
ここが遥か未来の地球でない限りは、後者に僕も当てはまるのだろう。
では後者の場合の死の観念はどうなのか。それを解決するものがここなのかもしれない。
「つまり生き返るという事ですか?」
「はい。厳密には再構成と伝えられております」
「再構成……ですか」
「砕けてしまった命を、再び繋ぎ合わせ元の姿に戻す。という事です」
「実質不死身という事でしょうか」
「ははは。そう甘い次元ではありませんよ」
フランクリン司祭の簡単な説明が始まる。
〈地民〉と対比される〈渡来民〉の掟について。シリアス調でこそ無かったが、詳細を聞くことは憚った。
「〈渡来民〉の皆様は確かに擬似的な不死身になります。ですが50年から60年生活して行くと、何かを失っていることに気がつきます。そしてこの次元を去るのです。そこで待つのは死とは限りません。それこそ奇跡なのです」
「そうですか……」
「決して命を軽々しく散らすことの無いよう……お気をつけください」
「……分かりました」
さっきにこやかにここを去った3人のことを思い浮かべる。
3人ともこのことは知っていたのだろうか。いや、知っているのだろう。恐らく、初めて生き返った訳では無いのだから。
死んでも死んでも、魂ここにありとは慣れてしまうと本当に怖い感覚だ。
命の重さを忘れてしまいそうだ。
「暫くこちらへ?」
「あ、はい」
「なら、登録しておかなくてはいけませんね」
「登録……ですか?」
「はい。未登録だと一番近くの拠点にて再構成することになりますが……遠征の場合を除いて敵陣にて再構成する可能性があります」
「あー」
「お分かりいただけましたか?」
敵味方の概念はこちらにもあるとは思わなかったが、万が一そのような事があったら大変だ。
敵陣という言葉の選び方からPKの概念はあるようだ。
再構成後に、何度も倒されて人質紛いの状態になるのは良くない。登録することで万が一の時の連絡もしやすくなるだろう。
「分かりました。登録します」
「分かりました。あなたに神の御加護かがあらんことを」
「……」
「完了です。もし宜しければどうぞ」
立ち去り際に、噴水の水を1杯分頂けた。どうも無料らしいが、正直こんなものを飲んでいいのか困惑だ。
「ほとんどの聖堂の聖水は体力回復と精神力の湧出効果があります。味もよし、気持ちもよし、体にもよしの三拍子ですね」
「……確かに美味しい」
「聖水を飲むだけの生活も良いですが……人によってはつまらないと感じてしまう。それが唯一の難点でしょう」
確かに聖水は美味しいが、毎日3食聖水は堪えそうだ。他のおかずや主食と添える、これまで通りの食生活だと、本当に丁度いいだろう。それならば、毎食は余裕かもしれない。
また、立ち寄る可能性のある場所だ。だから、今は長居はしなくていいだろう。
それよりも今は、行くべきところがありそうだ。
重そうな扉を開ける。
文字通りの重そうな扉だ。拍子抜けする程ではなかったが、意外と軽い。
ゆっくりと扉を閉じると、空を見上げる。
もう濃い紫に染まり始めていた。
ポケットから例のカードを取り出すと、まだ残っている光と目印を頼りに目的地へと向かう。
着いた時、そこは優しい光が漏れ出す、昼間の喧騒通りとはまた違う姿を見せていた。
アファルの隠し子--(2) 登場人物
来夢
渡来民A・渡来民B・渡来民C・フランクリン




