表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かわいいぼくら  作者: 千子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
8/44

そわそわメイク

村崎さんから距離を置かれている。

そう感じたのは二学期が始まってすぐのことだった。

目が会っても逸らされるし話をしてもどこか身構えられるし、僕、何かしちゃったかな? 

「村崎さん」

「何……?」

どことなくそわそわした村崎さんが返事をしてくれたけれど、何をそんなに落ち着かないんだろう?

「僕、何かしちゃった?」

「……してない。嘘。本当はした」

「どっちなの!?でも、何かしちゃってたらごめんね。村崎さんを傷つける意図なんてなかったんだ」

目を合わせようとしてまた逸らされる。

でも微かに見える耳が赤い。

風邪かな?だから移さないように離れようとしていたとか?

「大丈夫?顔が赤いけど夏風邪?」

「大丈夫!これは私の問題だから」

「そんなことないよ!具合が悪いなら保健室へ行こう!」

「本当に大丈夫だから!気にしないで!」

そんなことを言われても村崎さんが具合が悪いかもしれないのに放って置けない。

でも、無理強いするのも村崎さんの性格上、嫌われるかもしれない。

僕が言葉に詰まると村崎さんは顔を上げた。

「私の気持ちがはっきりするまで待ってほしい」

それってどういうことだろう?

僕はなんだかそわそわするような気持ちで背もたれに背中を預けて、村崎さんの気持ちが分からないまま承諾した。


その日のことをバイト先の先輩に相談した。

「青江、お前それってさぁ……」

どこか呆れたように言われる。

「先輩には村崎さんのこと分かるんですか?」

会ったこともない先輩が僕より村崎さんのことを分かることがちょっと悔しくて尖った言い方をしてしまった。

「分かるも何も。まぁ、青江だしなぁ……。頑張れよ、二人とも」

肩に手を置かれて励まされて僕は頭に疑問符を浮かべるばかりだ。

「そろそろ休憩終わるな。後半も頑張るかー」

立ち上がる先輩に釣られて慌てて立ち上がる。

相談をしていたら意外と早く時間が経っていたようだ。

貴重な休憩時間を僕の悩み相談に使わせてしまって申し訳ない。

「すみません、先輩。話を聞いてくださってありがとうございます」

「いいって。俺も甘酸っぱい青春話を青江から聞けて面白かったし」

そう言ってけらけら笑いながら扉から出る。

さっきの話のどこに甘酸っぱい青春話があったんだろう?

みんな、僕には分からないことばかり。

僕が大人になったら分かるかな?

そう思いながら持ち場に着いた。

僕のバイトはドラッグストアで化粧品コーナーを主に担当している。

初めて来たお客様には敬遠されているけれど、常連さんからは「青江くんのチョイスなら間違いないわね」って信頼されている。

とても嬉しいことだ。

特に村崎さんから教えてもらったメイクアップアーティストになりたいという夢を持ってからはより人の可愛さに熱が入るようになった。

そういった点ではここはいい練習場所だった。

いろんな年代の人が来る。

その人に合ったコスメをお勧めする。

前よりバイトが楽しくて、村崎さんってやっぱりすごいって思う毎日だ。

「見て、あそこ。コスメの説明を男の子がしている」

指を刺されて囁かれる会話を聡い耳が拾ってしまう。

「男の子に分かるのかな?」

「女の子と触れ合いたいだけじゃない?」

「でも、あの子自身もメイクしてるよ?」

次第に声が大きくなってくる。

無視したい。でも、ここは僕が試されているんだ。

説明していたお客様が気遣わし気に商品を手に取り立ち去ると、僕は満面の笑みで答えた。

「いらっしゃいませ!何をお求めでしょう!」

にこにこ笑顔で対応すると、少し気まずそう。

「この間SNSで見掛けたこのブランドの新作を探しているんですけど……」

「それでしたらこちらに特設コーナーをご用意しております!こちらへどうぞ!」

丁寧に案内して、説明する。

「お客様のお顔でしたら今のお化粧の系統と少し違いますがこちらの色味をお試ししてはいかがでしょう?」

熱心に、丁寧に、相手の心を掴めるように。

「肌に乗せるとこのようなお色になります。お試しをしてみますか?」

「は、はい……」

相手はもう僕のペースだ。

もう一人のお客様も感心したように見ている。

お化粧を少し落として、お顔に優しく乗せて少し印象を変えて出来上がり。

「わ……。広告のイメージとはまた違うけどこれもいい!こっちのを買うつもりだったけどこれにします!」

「うん!いたものと違うけど似合うよ!店員さん、すごいんですね」

「ありがとうございます!」

嬉しい!素直にそう思える。

「えっと……青江さん。また何かあったらよろしくお願いします」

名札を見て名前を呼ぶと頭を下げてくださった。

「こちらこそ、お買い上げありがとうございます!」

にこやかに微笑んでお会計のレジまで見送る。

それを見ていた他のお客様が話し掛けてきた。

「あの、私達もお願いしてもいいですか?」

「もちろんです!」

その日のうちに新商品は再発注に掛けられた。

僕は店長からボーナスって言われてお菓子を数袋渡された。

「ありがとうございます!」

「青江くんはいつもよくやってくれているからねぇ」

にこにこ会話が終わってバイトも終わると、裏口に村崎さんが待ち構えていた。

「村崎さん!なんでここに!」

「偶然来たら青江くんがバイトしていて、上がりの時間を他の店員さんに尋ねた。……今日、人気者だったね」

「うん!見て!店長に褒められてお菓子をもらっちゃった!一緒に食べない?」

誘うと首を横に振られた。

「私は、私の気持ちは分かった。あとは青江くんのこと待ってる。信じているから」

何を信じているんだろう?

分からないまま村崎さんはそれだけ言うと帰って行った。

……。僕の気持ち、それってなんだろう?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ