告白
コンテストからしばらく経ってから変化がある。
コンテスト後、SNSで自分の名前を検索したらいくつかの投稿が引っかかった。
落選した人達の中に僕の名前を挙げている人もいた。
──男のくせにメイクとか、どうかしてる。──そういうのって、女に媚びてるってこと?
──気持ち悪い。
……あーあ。
でも、審査員長も理事長も、男なんだけどなぁ。
あの舞台で、「いい」って言ってくれたのは、そういう人たちだったんだけど。
だから、もう気にしないことにしてる。
村崎さんが「可愛い」って言ってくれたメイクを、信じてる。
今まで僕がメイクをして笑顔になってくれた人を忘れないようにしてる。
“可愛い”は、誰かのためじゃなく、自分が好きって思えるためのものなんだ。
それが、僕の答えだ。
でも、その可愛いでみんなを幸せに出来たらもっといいな。
そう思ってスマホを机の上に置いた。
もうすぐ卒業式。
それが終わったら僕は志望校に通う専門学生。
僕は、僕のために生きたい。
そのための道は僕が決めたい。
卒業の色紙に、自分の好きを追い求めたいって書いた。
「色紙書いてるの?」
いつの間にか村崎さんが隣に来ていた。
「うん。もう決めたから」
「…青江くんはつよいね」
「ううん。みんながいたからだよ」
「ふぅん」
どこか楽しそうな村崎さんに尋ねる。
「村崎さんは、結局どこを受験したの?合格したんだよね?」
「家から近いところ」
「どこ?」
何気なく聞いたら国立大学だった。
えっ!?村崎さん、家が近いからって国立大学狙えるほどの実力があったの!?
ぽかんとしていると笑われた。
「私はね、獣医になるつもり。ここにいた野良猫も飼ってくれる人が見つかったし、これからはそういう動物を助ける仕事に就きたい」
村崎さんは真っ直ぐ言った。
格好いいなぁ。
「村崎さん。今日一緒に帰らない?」
「いいよ」
約束を交わして僕はもう一つ心に決めていたことを実行することにした。
誰か、見守っていてください!
あっという間の放課後。
そもそももうあまり授業がないから今日もお昼には終わり。
とぼとぼとのんびり通学路を並んで歩いていく。
「もう、卒業だねぇ」
「そうだね」
あっさりしている村崎さんの顔を覗き込む。
「寂しくない?」
「なんで?大切な人とは繋がっているから、学校っていう場所がなくても平気。思い出になるもんだよ、なんでも」
村崎さんらしい言葉に笑って、僕は村崎さんの目を見てしっかり言った。
「僕は村崎さんが好きです!可愛いだけじゃない、格好良くてどこか危うくて、守りたい…。これって恋かな?」
「私に聞いてどうすんの」
村崎さんは呆れ気味に答えた。
でも、耳が真っ赤だ。
本当に村崎さんは可愛い。
「多分、恋だよ。この気持ちは村崎さんを前にすると可愛いとか格好いいとか男だとか女だとかどうでも良くなる」
一歩踏み出して宣言する。
「僕は君に恋したい」
村崎さんは考える素振りをして笑った。
「なら、私を好きにさせてみせなよ」
とすりとまた恋の矢が刺さった。
これで二度目だ。二度、僕は彼女に恋をした。
僕は可愛いものが好きだ。
可愛い自分も好きだ。
お化粧もやめられない。
「それでも村崎さんに好きになってもらえるように頑張るね!」
「待ってる」
そう言って村崎さんは可愛く格好良く不敵に微笑んだ。
「待っているって、ずっと言っているけど、まだ足りないの?」
「足りないよ。だって、全然平等じゃない。そんなのずるい」
「何が?」
僕が尋ねると、また悪戯っぽく笑う。
「好きの気持ちの重さ」
「そんなの!僕はすっごく村崎さんが好きだよ!」
顔を真っ赤にして叫ぶ。
「まだだよ、青江くん。私、結構強欲だからまだ足りない。もっと私を好きになってね。それまで待っているから」
また不敵な笑みで言われるともう両手を上げるしかない。
「待っていて、村崎さんが満足いくように、僕が村崎さんのこと好きだって分かってもらうから」
「うん、待ってる」
弧を描いた唇には、僕がプレゼントしたリップが塗られて、首元に存在する猫のネックレスも、ニャアと鳴いた気がした。




