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かわいいぼくら  作者: 千子


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卒業式

それから僕は毎日、村崎さんに好きだと告げ続けた。

教室でも、二人での帰り道も。ずっと好きって言い続けた。

村崎さんが楽しそうにしている。

遊ばれていると感じていても、それでも彼女が好きなんだ。

「すきだよ、村崎さん」

「うん。知ってる」

ニヤニヤしている村崎さんに、いつになったら満足してくれるんだろうという気持ちになってくる。

あと数日で卒業式。

それまでには答えをくれるよね、村崎さん。

ドキドキしながら待つと、思い至った。

村崎さんもこう言う気持ちだったんだ。

ずっと僕からの告白を待っていた。

「待たせてごめんね、村崎さんが好きだよ」

「うん。かなり待った」

僕はしょぼんとしてしまう。

でも!村崎さんも僕が好きなんだよね!

今度は僕が待てばいいだけ。

……そうだよね、村崎さん?


毎日好きだと告げて、最初の頃は揶揄われていた僕らだけれど、両想いの戯れだとは分かられていたので応援の形が強かった。

黄瀬くんや赤井さん、黒崎くんと外で会えば白鳥先輩から今か今かと告白の返事がいつか賭けられてしまっている始末。

そんなの!僕が知りたいよ!

こうして、村崎さんの待つ側の気持ちを知って胸が痛んだし苦しんだ。

僕、村崎さんにこんな思いをさせていたんだ。

「ごめんね」

自室でスマホに向かって呟いた。

誰に聞かせることもない言葉は、そのまま消え去った。


卒業式当日。

式は厳かに行われた。

そしてそのままいつものファミレスに集まった。

白鳥先輩が先に来て、席を取っておいてくれた。

「これでみんなとお別れだね」

僕がしんみりと言うと、私くんが軽く返した。

「馬鹿。いつだって会えるだろ」

「先輩達が居なくなると寂しくなります」

赤井さんの言葉に緑川くんが同調する。

「僕も。もう卒業して青江先輩と同じメイクの専門校に進みます!」

黒崎くんがニヤニヤしながら揶揄う。

「だってさ、青江くん人気者だね」

「黒崎くんもね。大学で私以外の女の子にあんまり優しくしないでね」

白鳥先輩は可愛い嫉妬をしている。

僕は、手を繋いで隣に座る村崎さんをちらりと見遣る。

こんなに近いのに、まだ遠い。

思わず溜息を吐いた。

「で、青江と村崎はいつ付き合うんだ?もう卒業式だぞ」

黄瀬くんの言葉にオレンジジュースが喉に詰まって咽せた。

村崎さんはいつもの不適な笑みで、さぁね、と答えてポテトを摘んだ。


みんなと別れて帰り道。

二人でまた公園に寄った。

僕が告白しようとして出来なかった公園。

「村崎さんは僕のことが好き?」

「さぁね」

またはぐらかされる!

「もう、卒業式だよ」

「うん。そうだね」

僕は俯きそうな顔を上げて、まっすぐに村崎さんを見た。

「村崎さん、好きです。僕と付き合ってください」

「ふふっ。いいよ」

「えっ!?」

心臓が止まったみたいだった。

僕は今、人生で一番嬉しい言葉を聞いたんじゃないだろうか。

「もう降参。待っていた分だけ好きって言葉を聞きたかったけど、ずっと聞いていたら恥ずかしくなっちゃった」

耳まで赤い村崎さんの吐息は白い。

「これからは僕と歩んでくれる?」

「うん。青江くんと歩いていきたい」

そっと差し出される手を柔らかく握る。

「ニャア」

また空耳かと思ったけれど、村崎さんも猫の声を探している。

村崎さんがずっと校内で保護していた猫が、新しい家族に抱えられて悠々と一緒に歩いていた。

あの猫は、新しい家族を見つけたんだ。

僕は、村崎さんの新しいパートナーに相応しいんだろうか。

ううん。そんなの、これから考えよう。

「すきだよ、村崎さん」

「私も、青江くんがすき」

そう言って笑い合う僕らの影は重なっていた。

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