帰り道
「帰り道、二人だけで寄り道しない?」
ファミレスで村崎さんに提案されて僕はすぐに頷いた。
三者三様に別れて、帰り道を進む。
僕達は公園に立ち寄った。
「さっきのパフェ、すごく大きかったね」
「夢に出そう」
村崎さんが顔を顰めた。
「寒くない?」
「これがあるから平気」
ポケットから差し出されたのは、ペンギンのホッカイロケースだった。
「まだ、使っていてくれているんだ」
「青江くんからのプレゼントだもん」
「今日、メイクしているよね。僕がプレゼントした」
「動画を見ながら見様見真似だけどね。青江くんの力が欲しくて」
「ネックレスも、してくれているよね」
「そう。今日は全身青江くん」
ニヤリと笑う村崎さんに胸の高鳴りが止まらない。
受験という大切な日に、僕が贈ったものを身に付けてくれて嬉しい!
「あの、村崎さん。大切な話があるんだ」
「……うん」
村崎さんも、どことなくソワソワして落ち着きがない。
定まらない視線はお互い覚悟を決めて見つめ合った。
僕が村崎さんに告げようとした時、大きな声が遮った。
「青江先輩!と、村崎先輩!こんにちは!今お帰りですか?」
「緑川くん……」
どうやら、僕の告白はまだお預けみたいだ。
「今日、三年生は受験の人多いんですよね。先輩達もですか?」
「そうだよ」
村崎さんをちらりと見るとどことなく不機嫌だ。
僕も、内心残念がったけれど、緑川くんに罪はない。
「合格をお祈りしています!」
「ありがとう」
こんなふうに慕ってくれる後輩を無碍になんて出来ない。
「黄瀬先輩と赤井先輩にも青江先輩達にお会いする途中で出会ったんですよ」
「そっか」
「二人とも、ラブラブですよね〜」
僕達もそうなる予定だったんだけどね!
なんて、告白もまだなのに言えやしない。
「仲がいいですね!って言ったら、黄瀬先輩から『そうだろう!』って軽く返されちゃいました。僕も恋人が欲しいなぁ」
「緑川くんも恋人が欲しいの?」
「はい。みなさん、ラブラブなんですもん。当てられちゃって、僕も青春が送りたいです」
「緑川くんならすぐだよ。可愛いし」
村崎さんが言う。
村崎さんは可愛い男の子が好きなのかな?
「でも、格好良くもなりたいんです。黒崎先輩みたいに、クールに、でも社交的で彼女想いな。もちろん!一番の憧れは青江先輩ですけどね!」
そう言われて照れる。
「僕なんて、可愛いものが好きなだけだよ」
「そんなことないです!」
「そうだよ、そんなことない。好きを貫くって、凄いことだよ」
村崎さんにそう褒められて体温が上がる。
「そうかな?」
「そうだよ、自信持って」
村崎さんの言葉に嬉しくなる。
「えへへ……」
緑川くんは、そんな僕達を見てぽつりと呟いた。
「やっぱり、僕も恋がしたいです」
「恋はするものじゃないよ、落ちるものだよ」
僕が不意にとすりと村崎さんに射抜かれたように、ある日突然訪れるものだと思う。
「ふぅん」
村崎さんは楽しそうだ。
「そうなんですか?青江先輩。村崎先輩」
「私は、気がついたら、かな?」
それって、僕のことだろうか?
どきりとした胸の高鳴りが、さっきまでは落ち着かなかったのに今は心地いい。
「とにかく!緑川くんにもいつか大切な人が現れるよ」
「そうですね……そうですよね!僕、その人と出会えるまで自分磨き頑張ってみます!青江先輩、またメイクの仕方教えてくださいね!」
「うん!もちろん!」
元気よく手を振って、緑川くんは帰って行った。
「どうする?寒くなってきたし、私達ももう帰る?」
言いながら村崎さんが小さくくしゃみをした。
「うん。そうだね。村崎さんに風邪を引かせるわけにはいかないもの」
「……ありがとう、青江くん」
二人で帰って別れ道、村崎さんは少し潤んだ瞳で問い掛けた。
「青江くんの大切な話、卒業までには聞かせてくれるんだよね?」
「もちろん!」
僕は大きく頷いた。
「待っているから」
村崎さんから何度も言われた言葉。
今なら答えが出せそうだ。
待っていてね、村崎さん。




