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かわいいぼくら  作者: 千子


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高校三年のバレンタインデーと受験

そんな日々を過ごしたらあっという間にバレンタインデーだ。

その翌日には受験日。

気合いを入れなきゃ!

バレンタインデーのプレゼントは買ってある。

今年は迷わなかった。

村崎さんに贈るプレゼント。

黒崎くんが白鳥先輩に万年筆を贈った時に、僕も思ったんだ。

受験に頑張る村崎さんに、受験日に持っていける筆記用具。

僕も、薄紫色の万年筆を用意した。

聞いた話によると、赤井さんも黄瀬くんに万年筆を贈る予定らしい。

白鳥先輩と村崎さんがお揃いなのは気にならないけど、黄瀬くんともお揃いなのは嫌だ!

結局、黒崎くんとも連絡してみんなで万年筆を持つことになった。

あとで笑い話になればいいな。


「と、いうわけで中身がバレてるけどバレンタインデーのプレゼント」

「ふふっ、私もバレてるけどプレゼント」

お互いに万年筆を送り合って、笑い合う。

「いよいよ明日だね」

「うん。緊張してきた」

「村崎さんなら大丈夫だよ!」

僕が真摯に言うと、村崎さんが笑う。

「青江くんも大丈夫だよ。だって、頑張ってきたじゃん」

「村崎さんもずっと頑張ってきた」

「うん……。お互いに頑張ろう」

「うん」

少ししんみりして、バレンタインデーは終わった。

告白はまた出来なかった。

明日の受験に気が向いていてそれどころじゃなかった。


そして迎えた受験日当日。

「受験票は持ったの?」

「もちろん」

「メイク道具は?」

「持ったよ、ていうか基本的に専門学校が用意したのを使うから」

両親から心配されるのはむず痒いけど嬉しい。

村崎さんもこんな気持ちなんだろうか。

気を引き締めて、お母さんとお父さんに向かって声を掛ける。

「行ってきます!」

今日は村崎さんも黄瀬くんも黒崎くんも受験日だ。

みんな違う進学先なのに、受験日が重なる偶然はすごい。

みんな受かるといいな。

そう思って、僕は本気で試験に向き合った。

筆記も実技も持てる実力を出し切った。

筆記は、ペンケースから見える万年筆に勇気付けられた。

あっという間に試験は過ぎ去って、僕はやり切ったという充実感と、不安とでせめぎ合っている。

村崎さんの声が聞きたい。

そんな帰り道、スマホから軽快な音が鳴った。

みんなとのグループLINE。

いつものファミレスで会おうって。

僕は速攻で了承のスタンプを押して、走ってファミレスまで急いだ。

早くみんなに会いたい!


「お待たせ!」

着くと、村崎さん、黄瀬くんに赤井さん、黒崎くんだけじゃなくて白鳥先輩までいて、コの字型の席にカップル毎に座っている。

必然的に僕の隣は村崎さんになった。

「青江くん、受験お疲れ様」

「みんなもお疲れ様!」

ドリンクバーを注文して、もうテーブルに乗っているポテトに手をつける。

「やっと終わったな〜!」

「黄瀬くん、受験は結果発表までが受験だよ」

「遠足みたいに言うなよ、黒崎。お前は白鳥先輩と同じ大学に通うために一年頑張ってたもんな〜。受かるといいな!」

「そうね。受かっててね、黒崎くん」

「白鳥先輩……!当然です!」

二人の空気を作っているのは黒崎くんと白鳥先輩だけじゃない。

黄瀬くんと赤井さんも二人の雰囲気だ。

「黄瀬先輩、卒業式まであと少しですね」

「おう。お互いに夢を追いかけていこうぜ!」

「……はい!私もあと一年、頑張ります!」

そうだ。赤井さんにはあと一年ある。

「青江くん、お疲れ様。試験どうだった?」

村崎さんに尋ねられて、なんとかガッツポーズをとる。

「力の限り頑張った!でも、みんなレベル高かった〜!僕じゃ思いもしないメイクをしたりするんだもん」

「私も、手応えあるつもりだけど最後まで分かんないよ」

村崎さんがペンケースから万年筆を取り出す。

「これがなかったらめげていたかもしれない」

それは、村崎さんが初めて溢す弱音だった。

「俺も、解けそうもない問題に当たった時はこれを見てた」

みんな続々とペンケースから万年筆を取り出した。

「来年は、私がこの万年筆にあやかる番ですね!」

「そうだね、赤井さんも頑張って!」

「はい!」

少し笑顔に曇りがあるけれど、それでも明るく返す赤井さんなら大丈夫だろう。

「それより、次何頼む?」

「どうせならこの大盛りパフェ頼まない?」

「みんなで分け合えばいけそうですね」

「丁度、頭を使って糖分が欲しくなっていたしな。注文してみるか」

チャレンジメニューと記載されたそのパフェは、受験という牢獄から抜け出した僕達を癒してくれた。

少し苦しかったけれど、六人ならなんとか食べられた。

巨大パフェを前に六人で撮った写真は新しい思い出の一部だ。

受験、本当に終わったんだなぁ。

あとは結果を待って卒業するだけ。

でも、本当にそれでいいんだろうか。

僕にはまだ、村崎さんへの告白っていう難問が待っている。

ちらりと隣の村崎さんを見遣る。

ホットコーヒーを飲んでいる彼女に僕は相応しいんだろうか?

でも、今までの感じだと村崎さんも僕のことを嫌いじゃないはず。

勇気を出せ、このまま卒業したらダメだ。

そう思うのに、みんなに見えない位置で少し指先が触れ合うだけで高鳴る胸は言い出す勇気を与えてくれない。

ほんのりと耳が赤い村崎さんを信じていいんだよね?

僕は、もう少し大胆になって触れ合うだけの指先を絡めてみた。

応えてくれたのが嬉しい。

待っててね、村崎さん。

僕は、卒業までに君に告白してみせる。

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