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かわいいぼくら  作者: 千子


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卒業式と入学式

そんな暖かさも気のせいじゃなくなってきた頃、卒業式があった。

白鳥先輩はお化粧がぐしゃぐしゃになるほど泣いて、いつもふわふわしていた白鳥先輩からは考えられないほどだった。

黒崎くんが一年なんてすぐに追い越して迎えに行きますって言って収束はついたけれど、僕達も白鳥先輩と別れるのは辛い。

その辛さは赤井さんにも伝染したみたいで、あと一年で僕達がいなくなると思うと堰を切ったように泣き腫らした。

待ってるって黄瀬くんが抱き締めていて、こちらもことをなした。

お互い制服も心もぐちゃぐちゃになっていて、そんな四人を見ていた僕と村崎さんは無意識に手を握っていた。


そして迎えた春。

桜も舞って新学期が始まった。

今年は全員同じクラスだった。

良かった。最後の学年に誰か欠ける事もなくて。

春と言ってもまだ薄寒い。

「村崎さん、寒くない?」

「これがあるから大丈夫」

そう言って差し出されたのはペンギンのホッカイロケースだった。

あの時は幼稚と感じたけれど、村崎さんは気に入ってくれているらしい。

案外冷え性な村崎さんは、まだもこもこした服装で学校に来ている。

「明日は入学式だね」

「体育館の準備めんどい」

「そう言わないで!どんな子達が入るか楽しみじゃないか」

そう!明日は入学式!

新しく綾部高校に入ってくる新一年生が入学してくる!

今は教室でHRが始まるまで喋っている。

白鳥先輩が卒業したことは寂しいけれど、新しい出会いにもドキドキしている。

「……かわいい子入るといいね」

僕が楽しそうにしていると、村崎さんは素っ気なくそう言った。

「うん!新しいコスメの話とか出来る後輩が出来たら嬉しい!」

僕がにこにこして答えると、村崎さんは少し罰が悪そうな顔をする。

「そうだね」

「どうしたの?」

「なんでもない。ちょっとした嫉妬」

僕は瞬きをした。

嫉妬。

村崎さんが僕に?

一瞬で全身の血が沸騰しそうだった。

「村崎さんも格好いい男の子がいたらどうする?」

「私にはもう最高に可愛くて格好いい人知ってるから」

「僕だって、最高に可愛くて格好いい人知っている」

そう言い合っている後ろで、黄瀬くんと黒崎くんが笑い合っているのを僕達は知らなかった。


翌日。

入学式は厳かに行われた。

桜が舞う中でみんなで体育館に集まると少し暑く感じる。

これは緊張して熱いんだろうか?

今年の入学式挨拶は男の子だった。

しかも!メイクをしている!

僕は嬉しくなって教室に戻った時、みんなにそのことを話した。

「おー。俺も気になってた。青江と話が合いそうだな」

「青江くん、見に行ってみたら?」

「私もついていこうか?」

「いいよ。いきなり一年生の教室に三年生が行ったら驚いちゃうでしょう?明日のオリエンテーリングで一緒になれたらいいな」

オリエンテーリングとは、一年生から三年生が集まって小さな催しをいくつかやる行事だった。

新入生が慣れるように、上級生が導くのだ。

「明日が楽しみだなぁ」

「あの子と仲良く慣れるといいね」

村崎さんが頭を撫でてくれた。

「うん!」


翌日のオリエンテーリングはおおいに盛り上がった。

前日の強風で桜が散り散りになったのは残念だけれど、春一番は新しい出会いをくれた。

あの子とも仲良くなれた。

緑川くんというらしい。とってもかわいい男の子。

「緑川くん、今日のメイクあそこの新色?」

「青江先輩こそ、今日のメイクとってもかわいいです!」

お互いに褒め合って、笑い合って、短い時間だけどほんの少し分かり合えた気がする。

「今度僕のバイト先に来てよ。おすすめのメイクを教えるよ」

「本当ですか!?……実は僕、去年の文化祭で青江先輩にメイクしてもらったことがあるんです」

「え?」

「その時に、男でもメイクをしていいんだ。かわいいものがすきでいいんだって知って、僕なりに研究したんです。綾部高校にも、青江先輩がいる一年だけでも一緒に過ごしてみたくて受験しました」

「本当!?」

確かに、あの時何人か男の子もいた。

嬉しい!

「僕、メイクアップアーティストになりたいんだ。かわいくなりたいひとをかわいくさせる……それが僕の夢」

それが叶っていた!

嬉しさで緑川くんに抱き付いた。

「ありがとう!緑川くん!」

「こちらこそ!なにもなかった僕の人生に新しい光を与えてくれてありがとうございます!」

今年は最高の一年になりそうだ!

僕達は笑い合って、その後のオリエンテーリングも楽しんだ。

僕は、この新しい出会いが嬉しくて、嬉しくて、僕の未来にも光が見えた気がした。

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