三学期と進路と恋の行方
年も明けて、冬休みにみんなと時々会って迎えた新学期。
二年生最後の学期。
年度が変われば僕らは高校三年生になって受験が本格化してくる。
僕の夢、メイクアップアーティストになるために専門学校に通うための試験が待っている。
「……なれるかなぁ」
ううん、なる!村崎さんが示してくれた夢だもん!僕は、僕のためにメイクアップアーティストになって可愛くなりたい人を可愛くさせる!
「頑張ろう!」
おー!と両腕を挙げたら近所のおばさんに元気ねぇ、と笑われた。
ちょっと恥ずかしい。
「おはよう」
「おはよう、青江くん」
そういえば、村崎さんの進路はずっと秘密にされたままだ。
あと一年と少し。
もっと、まだまだ、村崎さんといたい。
告白、ということも考えた。
僕と村崎さんが恋人になったら、進路が違っても今の関係を、ううん、今以上の関係になれる。
そこで思い出されたのが黄瀬くんと赤井さん、黒崎くんと白鳥先輩だ。
僕は勇気がなくて、今の関係が壊れるのが怖くて村崎さんに告白出来ないでいる。
みんなすごいなぁ。
そうだ!相談すればいいんだ!
村崎さんにぼくの想いが通じるか分からないけれど、せめてこの気持ちは伝えたい。
「青江くん?」
村崎さんが心配そうに見てくる。
「待っててね、村崎さん!」
僕の言葉にきょとんとしたあと、何か思い当たったのか少し嬉しそうにして、待ってると言ってくれた。
そういえば村崎さんは僕から何かを待ってるって前も言っていたっけ?
あれはなんのことか今でも分からないけれど、僕は村崎さんへの告白に専念しよう!
あと受験もね!
「と、いうことなんだけど、どうしたらいいのかな」
黄瀬くんと赤井さん、黒崎くんと白鳥先輩に集まってもらって放課後の教室で相談したら四人とも頭を抱えていた。
風邪でも引いて頭痛かな?
「いや、青江だし。分かっていたけどな」
「そうですね。青江先輩ですしね」
「青江くん、さすがにそれはない」
「青江くん、頑張って」
三人には呆れられ、白鳥先輩には励まされた。
僕が疑問符を浮かべていると、溜息を吐かれた。
なんなんだよ、もう!
僕がむくれると、膨れた頬を黄瀬くんが潰す。
「むくれるな、青江。絶対上手くいって」
そう言って笑われる。
「そうですよ!村崎先輩のためにも頑張ってください!」
「俺が言うのもなんだけどね、青江くん頑張ってね」
「そう。青江くんなら出来る」
みんなに励まされて、僕は村崎さんへの告白がうまくいくんじゃないかって気がしてきた。
「ありがとう!みんな!」
今年こそ!!村崎さんに僕の気持ちを伝えよう!
そうは言っても、いざ本人を前にすると緊張する。
あれ?僕、今までどうやって村崎さんと喋ってだんだっけ?
「青江くん?」
一緒に帰るのを誘ってくれたのに、なんにも喋れずに黙々と歩いている。
「な、なんでもないよ」
告白ってどうやるんだろう?
好きっていえばいいの?
でも、それだけで本当にいいの?
もっと村崎さんに好かれるようにしたい。
考えれば考えるほど分からなくなる。
そのまま無言で別れ道になった。
「じゃあ、青江くん。また明日」
「うん。また明日」
手を振って、白い息と共に僕の悩みも飛んで消えればいいのに。
バイト先に行って相談しても店長にも先輩にも頭を抱えられた。
「青江くん……」
「青江……」
何故か憐れみの目すら向けられる。
なんでだよ!
それから黙々と仕事をして、ふと、春向けの新色ネイルのポスターを見て、村崎さんが塗ったら可愛いだろうなって思った。
前までだったら、可愛い!塗りたい!って自分のことだったのに、些細なことで村崎さんのことを考えている。
これが恋。
僕までとうとう溜息を吐いた。
春向けメイクのポップでも作って、気分を紛らわそう。
僕は裏方に回ると厚紙にカラフルに受注した商品のイメージを損なわないように販促ポップを作った。
うん!いい出来!
華やかで、ウキウキしてくる。
我ながら今回は会心の出来だ。
……村崎さんはどう思うかな?
僕は鞄からスマホを取り出すと、写真を撮って村崎さんに送った。
すぐに返信が来て、可愛いって一言だけ返されていた。
村崎さんに可愛いって思ってもらえた!
それだけでなんだか無敵になれる気がした。
このメイクも早く試してみたいな。
村崎さんにも贈ったら迷惑かな?
そこで、黒崎くんと白鳥先輩のお揃いのストラップを思い出した。
お揃いのネイルなんてどうだろう。
村崎さんは、塗ってくれるかな?
考えて、考え抜いて、少し多めに発注した。
僕と村崎さんの分。
お揃いの爪で手を繋いだら、きっと可愛い。
早く春にならないかな。
そう思いながら僕は店長に呼び出されるまでドキドキして緊張していた。




