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かわいいぼくら  作者: 千子


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30/40

年越し

待ちに待った十二月三十一日。

村崎さんと初詣に行く日。

両親から散々心配されたけど、愛故だって今なら分かる。

「ちゃんとエスコートしなさいね」

「わかっているよ」

「今度、その子を家に連れてきなさい」

「嫌だよ、恥ずかしい」

なんて、わいわい話せる日が来るなんて思いもしなかった。

「行ってきます!」

防寒対策もバッチリで、僕は待ち合わせ場所に急いで向かった。

雪が降り積もる大晦日。

村崎さんはまた僕より早く待ち合わせ場所で待っていてくれた。

傘に重そうな雪が溜まっている。

「待たせちゃってごめんね、お待たせ!」

「ううん。私が青江くんに早く会いたかっただけだし」

そう言う村崎さんの手元には僕がプレゼントしたペンギンのホッカイロケース。

メイクまでしてくれている。

僕がプレゼントした道具だ!

「ありがとう!村崎さん!」

「……それだけ?」

そうだ!今日の村崎さんはいつもと違う!

「振袖姿も可愛いよ!でも、寒くない?僕のコート着なよ」

僕がコートを脱ごうとするのを村崎さんが制する。

「それだと青江くんが寒いよ。私は大丈夫。この子がいるから」

ペンギンのホッカイロケースを見せられて、プレゼントして良かったと幼稚だと感じた僕を褒めた。

「でも、寒くなったらいつでも言ってね。村崎さんが風邪を引いたら大変だ」

「ありがとう、青江くん」

微笑んで可愛いと感じるのはメイクの力だけじゃない。

村崎さんは可愛い。

あと、一年と少ししか同じ学校に通えないのか……。寂しいな。

僕も、黄瀬くんと赤井さん、黒崎くんと白鳥先輩に続かなきゃ!

「青江くん?そろそろ行こうか」

「あっ、うん。ごめん。行こう」

二人で並んで自然に手を繋ぐ。

二人きりの時に手を繋ぐようになったのはいつからだろう。

手袋越しでも、お互いの体温がわかる。

僕の心臓のドキドキも伝わりませんように!


神社に着くと、出店や参拝客で賑わっていた。

「何か食べる?列長そうだし、途中で小腹が空きそう」

「うん。列に並びながら見繕おう」

「そうだね」

参拝の列に並んで少しずつ進む。

「足、大丈夫?痛くなったら言ってね」

「ありがとう、青江くん」

村崎さんが微笑む。

うう。可愛い。

しかも僕が選んだメイクしてくれていて可愛さも倍増!

ちらほら村崎さんを見ている男の人がいる。

隣に並ぶ僕を見て鼻で笑う人もいる。

なんだよ!みんな村崎さんの外見ばっかり見てさ。村崎さんは可愛いだけじゃなくて格好いいんだ!

「青江くん?」

「なんでもない」

二人でお店の食べ物を分け合って食べている幸せを味わおう。

僕、もしかしたらもう願い事叶っているのかも。

少しずつ歩む道程でそう思えた。

並んでいる途中で除夜の鐘が聞こえてきた。

僕の煩悩もこのまま消し去ってくれたらいいのに。

嘘。

そんなことしてもまた村崎さんに恋をする。

今年も、来年も、これからも。

きっと、村崎さんに恋をしている。

村崎さんはどうかな?

手を繋ぐのは嫌じゃないんだよね?

期待、していいのかな?

どうなの、村崎さん。

チラリと見ると目が合った。

そっと繋ぐ手が、少し強まる。

どきりとした心臓は、早鐘のようだ。

「そろそろだね」

「……うん」

「何をお願いするの?」

「えっと、それは、言ったら効かないっていうから言わない!」

そう言うと、村崎さんはくすりと笑った。

「それじゃあ、私も言わない」

くすくす笑われて、揶揄われているような気持ちになる。

僕は仕返しをしたくなって、そっと村崎さんの耳元で囁いた。

「そう、秘密だよ」

村崎さんの歩みが止まった。

「青江くん、それは反則」

そう言った村崎さんは顔がチークより赤かった。

仕返し成功!

小さくVサインをつくっていると熱々のホッカイロケースを首筋に当てられた。

「熱い!」

「仕返し」

仕返ししてもすぐにやり返される。

村崎さんには敵わないなぁ。

そう思って除夜の鐘が最後に厳かに突き終わった。

スマホを見ると、新年まであと五分。

「あと少しだね」

「うん。来年もよろしくね」

「こちらこそ」

そう言って進むと、あと一列で僕たちの番だった。

賽銭箱を前に小銭を用意する。ぐっと握って願いを込める。

前の人たちが退いたので、今度は僕たちの番。

小銭を賽銭箱に投げて、二礼二拍手一礼をしてお祈りと感謝を込める。

村崎さんと知り合わせてくれてありがとうございました。

村崎さんが幸せでありますように!

真剣にお祈りして、隣を見たら村崎さんも真剣にお祈りしていた。

伏せられた睫毛が寒さで震えており、吐く息も白く煌めいて見えた。

目が合うと、なんとなくお互い同じようなことをお願いした気がしてどちらともなく小さく笑い出してしまった。

「お待たせ。行こうか、青江くん」

「うん。あ、甘酒があるよ。飲んでいかない?」

「いいね。ついでにおみくじもやらない?」

その言葉に僕はちょっと驚いた。

村崎さんがそこまで神頼みしたいお願い事ってなんだろう?

「いいよ!僕もやる!」

二人で引いたら二人とも大吉だった。

新年だしね、大吉の方が確率高いのかも。

でも嬉しい!

想い人は、縁が叶うって書いてあった。

今年こそ、期待していいのかな?

「村崎さんはなんで書いてあった?」

「いいこと」

なんてはぐらかされても上機嫌が隠れていない。

「ねえ、このまま少し休んでいかない?格好つけてきたけど、足が痛くてさ」

「大丈夫!?僕、絆創膏持っているよ!いざとなったら村崎さんをおぶるからいつでも言ってね!」

僕の言葉に小さく微笑んだ。

「ありがとう、青江くん。青江くんはやっぱり青江くんだね」

「?そうだね」

いざという時のセットを持ってきておいて良かった。

応急処置をして、おぶりはしなかったけど肩を貸して帰路についた。

そのまま村崎さんの家に着く。

「あけましておめでとう。今年、最初に会ったのが青江くんで良かった」

「あけましておめでとう。僕も、今年最初に会ったのが村崎さんで良かった」

ふふふ、とふたりで笑い合って、玄関先で別れる。

家に帰る途中、スマホから軽快な音がした。

村崎さんからだ!

黄瀬くんや赤井さん、黒崎くんに白鳥先輩からもあけましておめでとうってメッセージが来る。

僕は急いで帰って、一人ずつ返信していった。

今年もいい年だといいな!

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