白鳥先輩と黒崎くんの冬休み
今日は村崎さんとファミレスで初詣の打ち合わせをしていた。
二人きりで初詣、楽しみだなぁ。
色々調べて、どこの神社がいいとか、ご利益があるとか、混んでいる時間とか、いっそ年越しから集まろうかなんて話し合っている時、珍しい組み合わせを見掛けた。
黒崎くんと赤井さん、珍しい組み合わせだ。
まだ入店したばかりで、空いている席がないと言われているところだった。
僕は村崎さんの許可を取り、4人掛けのソファ席に座っていた僕達のところへ二人を招いた。
「赤井さんと黒崎くんなんて珍しい組み合わせだね!」
「前にちょっとしたことで知り合ってな」
「一歳差って、近くて遠いって話してたところで、意気投合しちゃって、時々話しているんです!」
なるほど。二人とも想い人と歳の差がある連盟。
ふと、机に置かれた黒崎くんのスマホを見ると、黒い鳥のストラップが存在感を放っていた。
「二人共、順調そうだね!」
僕はがにこにこして言うと、赤井さんと黒崎くんは顔を見合わせた。
「お前は、お前だよなぁ」
「来年こそですよ!村崎先輩!」
黒崎くんと赤井さんから叱咤激励をされて僕は首を傾げる。村崎さんは額に手を当てていた。
僕らの死角になっているテーブルに白鳥先輩がいるとは知らずに。
翌日、白鳥先輩に呼び止められた。
「こんにちは。青江くん」
「こんにちは、白鳥先輩」
「ちょっと、青江くんに相談があるの。時間ある?」
「大丈夫ですよ!」
そうして二人して昨日のファミレスに入る。
半個室のテーブル席に通され、座るとずいっと白鳥先輩に詰められ、たじろぐ。
「ねえ、青江くん。黒崎くんの好きな人って私だよね?でも、あの赤井さんとも順調なの?二股?」
また白鳥先輩が暴走している!
しかも原因はもしかしなくても僕だ!
バレたら黒崎くんにしばかれる!
「二股じゃないです!」
「あの赤井さん……ていう子、青江くんがメイクを教えているんだよね?私も教えてくれない?」
「そんな!白鳥先輩は今でも十分可愛いです!」
白鳥先輩は小首を傾げた。
「赤井さんも元から可愛いのに、赤井さんは良くて私はダメなの?」
そんなふうに聞かれたら断れないじゃないか!
それに、昨日村崎さんと一緒にコスメを買ったばかりで試してみたかった気持ちもある。
「分かりました!僕で力になれるなら」
そう言って二人きりの半個室で、そっと白鳥先輩の顔に触れる。
まずはこのお化粧を落とさなきゃ。
簡易シートしかないけれど、仕方がない。
ゆっくり丁寧に落としていくと、紛れもない美少女が現れた。
うぅ……。村崎さんも赤井さんも白鳥先輩も素地が良すぎる!
「いきますよ」
ポーチから順に中身を取り出して、再びメイクをするために顔を近付ける。
睫毛長いなぁ。
そんなことを思っていると、教室の扉が勢いよく開いた。
「ちょっと待ったーーー!!!」
黒崎くんだ。
「えっ、なんで……」
「白鳥先輩がいたから話し掛けようと思ったら、お前に話し掛けていたから……」
「えっ、つけてきたの?」
「俺のことはいいんだよ!それより、いつの間に二人でそんな仲に……。青江くんには村崎さんがいるじゃないか!」
ああ!また拗れた!
「違うよ!僕は白鳥先輩にメイクをしてあげようとしていたんだ!」
白鳥先輩は一生懸命顔を隠している。
わかるよ。好きな人にすっぴんって見られたくないよね。
「白鳥先輩、本当ですか?」
「近付かないで!……本当。だって、青江くんにメイクをしてもらったら恋が叶うんでしょう?」
なんだそのジンクス!初めて聞いた!
「文化祭から有名……」
だからメイクしてもらいたがる女子が増えたのか!
「そんな、メイクしていてもしていなくても俺は白鳥先輩が好きです!」
「黒崎くん……」
白鳥先輩が顔を覆っていた手を退けた。
僕はポーチを片付けて、一言残した。
「それじゃあ、新しいカップルに祝福あれ〜!」
黒崎くんがなにか照れながら喚いているが、僕の足取りは軽い。
注文前でよかったな。
僕はその足のまま、なんだか村崎さんに会いに行きたくなった。
あと数日したら十二月三十一日深夜から会って、来年一番に会えるのに、年を越せるのに。
いつでも会いたい。
恋って難しい。
早く会って、一緒に買ったこのメイクをした姿を見てもらって、かわいいねって言われたい。
逸る気持ちのまま帰路を急いだ。
早く帰っても日時が過ぎるのが早くなるわけじゃないのにね。




