二年のクリスマス 少しあと
クリスマスが終わると、黒崎くんから声を掛けられた。
「白鳥先輩のことで相談がある」
曰く、白鳥先輩にクリスマスプレゼントを用意したけれど渡せなかったと言うことだ。
渡そうとしたら、校内で他の男からプレゼントを貰うところを目撃したらしい。
「あの時の青江もこんな気持ちだったんだよな……。ヤケになって村崎さんに軽率に告白してごめんな」
「そんな!もういいよ!」
僕は、黒崎くんのために白鳥先輩に渡せなかったプレゼントをちゃんと手渡す協力をすることにした。
「任せて!僕は経験者だから!」
得意気に言うと、嫌そうな顔をされた。
「人選ミスったな……」
「そ、そんなことないよ!頑張ろう!」
そうして、僕と黒崎くんのちょっと遅いクリスマスプレゼント手渡し大作戦が始まった!
「そういえば、何を贈るの?」
ふと気になって尋ねる。
「……鳥」
「鳥!?さすがに生き物をプレゼントするのは良くないよ!」
「違くて!黒い鳥のストラップ!」
「黒い鳥のストラップ?」
僕はそこで閃いた。
「修学旅行では白い鳥を贈っていたもんね。お揃いになるね」
ニヤニヤして言うと、チョップが下された。
「痛い!」
「調子に乗るからだろ」
なにも調子に乗っていないのに。
それに、耳がほんのり赤いのが見える。
黒崎くんはクールぶっていても照れ屋だなぁ。
「それで、どうやって渡すかだよね」
「ああ。品物はもうある」
そう言って鞄から出された可愛い白いラッピングペーパーで包まれた箱。
「ふーん。白い包みねぇ」
またチョップを食らった。
今のは調子に乗っていたから反論はしない!
誰もいない教室で、二人でわいわい白鳥先輩にどうアプローチをするか考えていたら白鳥先輩が現れた。
「二人共、もう下校時間だよ」
「えっ!?あ、白鳥先輩……!」
「こんにちは」
黒崎くんが慌てる。
「これ、なぁに?」
白鳥先輩の目が机の上で堂々と鎮座する白い包み紙に焦点が合った。
僕は、その隙に二人きりになれるように教室をそっと出た。
黒崎くんとはアイコンタクトをしておいた。
うまくいくといいなぁ。
「こ、これは……」
じっと白鳥先輩が黒崎くんを見詰めて答えを待つ。
言え!言っちゃえ!
僕は心の中でタオルを振り回して応援した。
黒崎くん!
とうとう我慢出来なくなって心の中で声を掛けた。
「っ、白鳥先輩へのクリスマスプレゼントです!」
「私に?今更クリスマスプレゼント?」
そうだ。もう数日経っている。
冬休みの特別出席である今日、偶然出会えたこの日以外に逃すと年を越してしまう。
今しかないんだよ、黒崎くん!
僕の心の声が通じたのか、黒崎くんは僕を見て頷くと、プレゼントを手に取った。
「これ、よろしければ白鳥先輩に、クリスマスプレゼントです」
白鳥先輩はきょとんとして、差し出された箱を受け取った。
「開けてもいい?」
黒崎くんが小さく頷く。
丁寧にラッピングを開封して、箱から現れたのは。
「黒い鳥?」
白鳥先輩が呟く。
「修学旅行では白い鳥を渡したので、対になるようにと思って……」
黒崎くんの語尾が弱くなる。
頑張れ!黒崎くん!
「ありがとう。嬉しい」
ふわり、ふわりと白鳥先輩が微笑む。
でも、そのプレゼントは返された。
「対になるなら、黒崎くんが持っていて。お揃い」
その言葉に黒崎くんから真っ赤になる。
「えっ、あっ、はい!」
これはもしかして、もしかするんじゃないの!?
僕までドキドキしてきて、つい隠れていた扉から身を乗り出してしまう。
「青江くん?」
白鳥先輩に見付かってしまった!
黒崎くんはもう直視出来ないくらい負のオーラが出ていた。
ごめんって!
「すみません!盗み聞きするつもりはなかったんです!」
嘘です!堂々と聞いていました。
そんな僕に白鳥先輩は黒崎くんを連れてきて、自分のスマホを取り出すと、にこりと微笑んだ。
「見て、お揃い」
とても嬉しそうな白鳥先輩に、本当に嬉しいんだと感じて、僕も嬉しくなる。
「よかったですね」
「うん」
ふふふ、と笑うともう一度黒崎くんを見た。
「クリスマスプレゼント、私もあるの。渡せなかったけど……。貰ってくれる?」
「えっ!?白鳥先輩から!?も、もちろんです!」
「よかった」
白鳥先輩は鞄から綺麗に包まれたプレゼントを出すと、黒崎くんに手渡した。
「気に入ってくれるか分からないけれど」
「気に入りました!」
いや、まだ中身見てすらいないじゃん。
僕のツッコミは野暮ってものだから黙っておいた。
夕日ではない、赤い二人にそっと離れて帰路に着く。
今日もいい日だったな。
白鳥先輩の卒業までには黒崎くんの想いが通じる日は近そうだ。




