二年のクリスマス 後編
24日当日、楽しみすぎて早めに集合地点に辿り着きそうな僕は暖を取ろうとまたデパートに入った。
「青江くん、こんにちは。今日も寒いね」
いつものお店で、いつも接客をしてくれる店員さんが挨拶をしてくれた。
「こんにちは。寒いですよね。思わず暖を取りに入ってきちゃいました」
笑うと、店員さんも笑ってくれる。
「青江くん、今日は一段とおめかししているね。噂の彼女とデート?」
「デ、デートじゃないです!」
僕が赤くなって否定すると、また笑われた。
「青江くん、かわいい」
「もう!揶揄ってばかり……。あ、これ見ていいですか?」
このお店のクリスマス限定コスメは予約済みで、明日受け取りに来る予定だけど、買う予定のないものまでかわいくてつい見てしまう。
「いいよ〜!試しに塗ってみる?」
「ううん……今日はいいです。この色味なら結構今日のメイクと合わないし」
「まあ、一からやり直ししようと思っていたけどね〜。デートなら時間ないか」
「だから、デートじゃないです!」
「照れるな、若人!」
笑われながら、お店を離れる。
かわいいし、店員さんも優しいし、大好きだけど今日は一段と絡みが酷い。
これもクリスマスだからだろうか。
ちらりと見るとそこかしこにカップルがいる。
いいなぉ。
僕もいつか村崎さんと、なんて甘い夢を見て首を振る。
大人っぽい村崎さんなら同じように大人っぽい人か年上がお似合いだよね。
でも、クリスマスを僕のために開いていてくれたってことは……なんて甘い期待をしていると、猫モチーフで有名なコスメのお店の前へ来た。
よく人気になっているけどかわいい!
ついつい見てしまうと、猫の柄のリップケースも可愛いけれど、猫の柄のアイシャドウも心惹かれた。
紫色を主体にクールで大人っぽい。
キラリとしたラメが目元を目立たせる。
村崎さんに似合いそう!
でも、村崎さんはメイクをしない。
これは僕の願望だ。
鞄の中のペンギンのホッカイロ入れを思い出す。
考えて、考えて、店員さんに大丈夫か尋ねられた後、僕の手元には可愛らしくラッピングされた猫の柄の紫のアイシャドウが袋に入れられて渡されていた。
村崎さんはメイクをしない。
分かっている。
これは、僕が贈りたいから選んだんだ。
……喜んでくれるかなぁ。
ふと、腕時計を見たら待ち合わせの時間までもうすぐだ。
もう向かわなきゃ!
僕は足早に、手元の袋にドキドキして待ち合わせ場所に歩みを進めた。
「お待たせ!」
村崎さんはもう待っていた。
「私も今来たとこだから」
嘘だ。頭に雪が少し積もっている。
そう。走っている間に雪が降り始めていたんだ。
「遅くなっちゃってごめんね」
「まだ十分前だよ、青江くん。早く来すぎた私が悪い」
「それでも、女の子が体を冷やしちゃいけないよ」
「……ありがとう、青江くん」
ふわりと微笑まれて胸がギュッとなる。
しかも、唇には僕が以前あげたリップがされていた。
普段はしないのに、こういう時に付けられていると特別感が増して余計に嬉しい。
「そろそろ予約の時間だから行こうか」
「うん!」
二人で並んで歩き出す。
なんとなく、手を繋ぎたかったけれど恥ずかしくて繋げなかった。
お店はそんなに遠くなくて、時間ちょうどに辿り着いた。
「うわぁ!僕、猫カフェって初めて!」
「本当?青江くんが楽しめるといいけど」
「村崎さんとならどこでも楽しいよ!」
「だから青江くんは……青江くんだしね。期待しないでおく」
なんだか自己完結されて、村崎さんはお気に入りの猫の機嫌を取っている。
かわいい×かわいいで最高の場所だね、猫カフェ!
そうだ!忘れないうちに渡さないと!
「村崎さんにプレゼント!」
鞄からペンギンのホッカイロ入れを渡す。
「ありがとう。私も青江くんにプレゼント」
そう言って渡された紙袋は、有名な保湿クリームも売っているブランドの袋だった。
「えっ!?こんなもの貰っちゃっていいの!?」
「うん」
少しはにかむように言われて、僕は途端にペンギンのホッカイロ入れが幼稚に思えてきた。
「開けていい?」
「あ、うん……」
丁寧に開封されると現れるペンギンのホッカイロポーチ。
「なんでペンギン?」
少し笑われる。かわいいと言っているから嫌いではいないんだろう。
「村崎さんは猫グッズなんでも持っていそうだから」
「ありがとう。重宝する」
微笑まれて、僕は自分が幼稚に思えてきた。
「あの、あとこれ」
猫のモチーフコスメを村崎さんに贈った。
「村崎さんはメイクをしないの分かっていたけれど、僕が贈りたかったんだ」
「青江くん……。ありがとう。出来る限り使うようにする。ありがとう」
さっきよりも微笑まれて、猫より僕に密着してくれる。
僕はずっと胸の高鳴りが止まらない。
「青江くんって、ほんと私のこと気にしているんだね」
その言葉に真っ赤になる。
「青江くんからのプレゼント、嬉しいよ」
「僕も、村崎さんからのプレゼント嬉しい」
そう言って笑い合うと、さっきは繋げなかった手が自然と重なっていた。
今年のクリスマスは、特別なものになったな。




