ある冬の日
冬。
雪もちらほら降り始めて来た今日この頃。
「寒いね」
「コンビニの肉まんが美味い季節になったよな」
「もう!黄瀬先輩は情緒がないですね!」
「まったくだよ」
四人でわいわい騒ぎながら帰るのも、あと一年と少しかぁ、と感慨深い。
進路票はきちんと提出した。
両親と考えて考え抜いた志望校。
受かりたいなぁ。
頑張らないと。
僕が気合を入れていると、黄瀬くんが声を掛けてきた。
「青江。コンビニ寄るか?こうしていられるのもあと少しだし、思い出作りしとかねぇ?」
赤井さんに情緒がないと言われたからか、そんな提案が上がった。
「もちろん!僕あんまん」
「私、おでんのはんぺん」
「私はなんにしようかな」
「俺はにくまん一択だ!」
思い思いに巡らせて、寒さに震えながらコンビニを目指す。
早く暖を取りたくてコンビニに行きたいのに寒さで自然とゆっくりとした足取りになる。
「寒いね」
もう一度言うと、息が白い。
来年は受験シーズン。
勉強する時間もあるし、自由登校も増える。
揃って帰ることなんてないと思うと、このまま続けばいいのにと思ってしまう。
ううん。
僕には夢がある。
村崎さんと知り合って、初めて得た僕の夢。
この夢があるから、どんな未来も怖くない。
立派なメイクアップアーティストになって村崎さんの隣に立ちたい。
そう考えている、重かった足取りが軽くなる。
「早く行こう!」
先陣を切って歩き出す。
「おい、待てよ!青江!」
黄瀬くんが車椅子で一生懸命追いかけてくる。
「ちょっと!」
「待ってください〜!」
みんな走り出したらあっという間にコンビニに辿り着いた。
「どうしたんだよ、青江。そんなに腹が減ったのか?」
「ううん。未来が楽しみになって!」
僕の言葉にみんな首を傾げる。
寒かった体が温かい。
「さ、中に入ろう!」
みんなでコンビニに入ると、道中言っていた物以外にも手が伸びる。
この新作のお菓子、パッケージが可愛い!
コンビニのコスメも侮れないからチェックして、最後はレジであんまん!
「楽しいね!」
僕が笑うとみんなも笑ってくれた。
楽しい。
この時間を噛み締めながら残りの高校生活を謳歌しよう。
そう思った翌日から熱を出した。
完全に風邪だ。
「油断した……」
手洗いうがいも、完璧だったのに。
みんなに移さないようにお見舞いは断っているけれど、頻繁にメッセージは届く。
それがとても心強い。
来年になったら、風邪なんて引いてられない。
「もっと、強くならなくちゃ」
心身共に。
落ち込むより今は治すことを考えよう。
とりあえず寝る!
たくさん寝て、汗をかいて、水分を摂って、メッセージには心配ありがとうとだけ返信してあとは放り投げてベッドで丸くなる。
うとうとすると、すぐに気がつくと深く寝ている。
お昼頃だったはずなのに深夜に目を覚ましちゃった。
「飲み物……」
探すとペットボトルは空だ。
キッチンまで取りに行くのも面倒だけど、この喉の渇きは無視できない。
「仕方ないか」
ベッドから起き上がるとまだ重たい。
フラフラしながらようやくキッチンに着いた。
冷蔵庫からお母さんが買ってきてくれた飲み物を飲んで、辺りを見回す。
見知ったキッチンなのに、暗いだけで少し怖い。
早く部屋に戻ってまた寝よう。
足早に戻っていくと、スマホから光が出ているのが見えた。
メッセージの着信だ。
操作をして確認すると、村崎さんからだった。
「早く良くなって」
単調な一言と共に伸びた猫のお腹が写った写真が添付されていた。
これ、校内で村崎さんが面倒を見ている野良猫だ。
思わぬ可愛さに口元が緩む。
こんな夜中に返信したら迷惑だよね。
……早く会いたいなぁ。
ベッドに転がる。
恋って難しい。
嬉しいのも、悲しいのも、楽しいのも、苦しいのも一緒にやってくる。
受験以上に難しいかもしれない。
そういえば、村崎さんは待っているって何度か僕に言ってくれた。
それが僕の気持ちで、村崎さんとは両想いなら嬉しいな。
なんて、熱に浮かされた頭で考える。
うとうとしてきた。
元気になったら、僕にも猫のお腹を撫でさせてもらおう。
そう思ってまた深い眠りについた。




