進路の話 後編
今日の足取りは軽い。
今日の放課後はお母さんとメイクアップアーティストの専門学校を見に行く。
それがとても楽しみだ!
「おはよう」
「おう!青江。嬉しそうだな」
黄瀬くんが開口一番尋ねてくる。
「ふっふっふっ、なんと!メイクアップアーティストの専門学校に行けることになったよ!」
僕がそう言うと、黄瀬くんが目を見開いた。
「まじかよ!よく許してくれたな!」
「実は、お母さん、僕のことを心配して反対していたみたいなんだ。ちゃんと話し合ったら通じたよ」
「そっか、よかったな!」
黄瀬くんが背を伸ばして僕の肩に腕を回す。
そこへ村崎さんが登校して来た。
「何。仲良しじゃん」
「昔から仲がいいんだよ!それより聞いてくれよ。青江のご両親、青江が専門行くの許してくれたって!」
村崎さんまで驚いた。
「本当!?おめでとう!よかったじゃん!」
「ありがとう!」
僕の進路の話を皮切りに、教室内でも進路の話が飛び出て来た。
「俺は工学部に行くつもり。父さんが技術者だから」
「私は管理栄養士になりたいんだ。オープンキャンパスも行ったよ」
「とりあえず大学行けって言われてるけど、やりたいことはまだわかんないな」
なんて、みんなちゃんと考えているんだ。
「そういえば村崎さんは?」
「私はもう決まっているし、提出済み」
「もう!?早いね!」
「ずっと昔からの夢だったんだ。だから、絶対になるために受かって勉強する!」
いつになく真剣な村崎さんに少し気押されてしまう。
「どこの大学?ていうか、村崎さんの夢って?」
尋ねるとはぐらかされた。
「まだ恥ずかしいから秘密。合格したらね」
そんなのずるい!
昼休みになっても進路の話は続いた。
赤井さんは保育士になりたいらしい。
「私が園児だった頃、すごい素敵な先生がいたんです!私もあんなふうになりたいと思っています!」
「赤井らしいよな」
赤井さんを見る黄瀬くんの顔が優しい。
「あ、ちなみに保育学部があるのは黄瀬先輩が行く大学に行く予定です!」
「そうなんだ。大学でも仲良くね」
僕がそう言うと、二人は顔を見合わせて頷いた。
「おう」
「もちろんですよ!」
この二人なら心配はいらないかな。
問題なのは……。
「白鳥先輩はどこの大学に行くんですか?」
ようやく校内で見掛けた白鳥先輩は、図書室で勉強をしていた。
「私は、推薦でもう決まっているから」
「へぇ。どこですか?」
尋ねたら誰もが知っている大学だった。
「白鳥先輩って頭がいいんですねぇ」
「そうかしら?言われるがままにそこの大学に行くけれど、やりたいことなんてないの」
「それなら、大学で見つければいいんですよ。夢なんてある日突然やってくるんですから」
そう。村崎さんから提示された僕の夢のメイクアップアーティストみたいに。
陰から聞いている黒崎くんも頷いている。
なんならお嫁さんになればいいとか思っていそう。
告白もまだなのに。
そのままてとてと歩いて黒崎くんにも尋ねてみる。
「黒崎くんの進路は?」
「白鳥先輩の進路予定」
首を傾げる。
「……行けるの?」
「これから頑張る」
「うーん。そっか、頑張れ」
肩に手を置いて、励ます。
黒崎くんの手には参考書に付箋がたくさん貼られている。
黒崎くんの努力の証だ。
この調子なら黒崎くんも白鳥先輩と同じ大学に行けそうかな。
僕はそろそろ学校から出ないと母との約束の時間に間に合わない。
「それじゃあね、黒崎くん」
「ああ、またな。青江くん」
軽く言葉を交わして急いでメイクアップアーティストの専門学校に向かう。
ここには男性講師もいるから通いやすいだろうって判断だ。
講師からの説明に僕より聞き入っていたのはお母さんだ。
「だって、あなたを通わせるかもしれない専門学校なのよ?色々と知っておきたいじゃない」
僕はじんわりと胸が熱くなって、大きく頷いた。
「うん!」
僕の夢。絶対叶えたい!




