表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かわいいぼくら  作者: 千子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
20/48

修学旅行三日目

京都ならではの食べ物を食べ歩くつもり。

神社巡りは車椅子の黄瀬くんに考慮して、大きな通りを選んで歩いていく。

気になるものがあったら頼んで食べてみる。

どれも美味しくて、女子は映える写真を撮ろうと悪戦苦闘。

僕もSNSに載せる用に何枚か撮ってから食べる。

うん!美味しい!

「美味しいね、村崎さん。黄瀬くん」

「ああ。赤井にも勧めておくか」

そう言って黄瀬くんは写真と一緒に赤井さんにメッセージを送った。

もうすっかり恋人同士なんだなぁ。

友人の青春に、秋なのに春を感じて微笑ましくなってしまう。

「どうしたの?青江くん」

「なんでもないよ」

一人で満足気にして、もう一口パクリと食べる。

みんなでこうして一つのものを共有するのっていいなぁ。

メイクもそうだよね。

メイク道具が全国各地で売られていて、それがいろんな人に選ばれてその人を可愛くさせていて、コスメカウンターではお客様を可愛くさせようとしているし。

美味しいものも可愛いものもメイクも似ている。

全部楽しい!

受かれ気分でみんなと話している。

黒崎くんも社交性の仮面を被って笑顔で聞いては時折ユーモラスに話を交えてくる。

黒崎くん。

いつ話そう……。

そう考えていたら、みんなとはぐれてしまった!

慌てて黄瀬くんと村崎さんに連絡を取って今いる場所から見えるものを教えて、黄瀬くん達の居場所も教えてもらう。

僕から向かった方が早いかなって思ったら黒崎くんもいないらしい。

僕が辺りを見回すと、腕を掴まれた。

びっくりして振り向くと黒崎くんがいた。

黒崎くんは僕と一緒だよ、と連絡を入れて黄瀬くん達と合流しようとする。

でも、黒崎くんは動かない。

ふと黒崎くんの方を見ると、少し不自然に俯いている。一昨日までの微妙な距離感が、まだ残っているみたいだ。

「黒崎くん。黄瀬くん達に合流しよう?」

「その前に話があるからちょっと来て。二人きりになるチャンスは多分、今しかないから」

白鳥先輩関連だなと思い当たって頷く。

ついて行ったのは大通りから少し隠れたようにある寂れた神社だった。

そこの坂道で、黒崎くんが大きな石段につまずきそうになる。

「あ、黒崎くん!」

思わず手を伸ばすと、彼は驚いた顔で僕を見た。

「ありがとう…青江くん」

短く言われたその一言に、一昨日までの気まずさが少し溶けた気がした。

その後、二人きりになった場所で黒崎くんは小さく笑った。

「一昨日は、なんだか変に意地張っちゃってごめん」

「僕も……うん、ごめん」

互いに謝ると、不思議と気持ちが軽くなる。握手を交わして、ぎこちなくも、でも確かに和解できた瞬間だった。

「白鳥先輩が俺のことを好きって本当?青江くんが村崎さんのこと好きって本当?」

黒崎くんが矢継ぎ早に問い掛ける。

「本当だよ!それに、黒崎くんこそ村崎さんのことはなんとも思っていないんだよね?」

尋ねると、黒崎くんは気まずそうに頷いた。

「白鳥先輩から相手にされなくて、他の女の子に目線を向けてみたけどダメだね」

自重気味なその姿は、恋する男の子だ。

なんとなくかわいくて、僕は黒崎くんが憎めない。

いや、元から憎んではいないんだけど。

「黒崎くん。白鳥先輩にお土産買った?」

「……まだ」

「じゃあ、買って贈ろうよ!黒崎くんからのお土産なら白鳥先輩も嬉しいよ!」

「そうかな」

「そうだよ!」

幸い、ここは多種多様なものがある。

観光客向けにあるものの中から黒崎くんと二人で白鳥先輩に合うお土産を探して回った。

結局、選んだのはちりめん細工の白い鳥のストラップ。

なんの捻りもない、けど二人で考えた大事な贈り物。

でも、黒崎くんからってことできっと白鳥先輩は気に入ってくれる。

だって、好きな人から考えて選んでもらえた贈り物って嬉しいよね。


「おおい!青江、黒崎!」

気が付くと黄瀬くん達が迎えに来てくれていた。

村崎さんが笑って手を振っている。

「二人とも来ないからこっちから来たぞ」

「ごめん、ごめん」

黄瀬くん達に謝ると、黒崎くんが庇った。

「いや、俺がお土産を買いたいと言ったのを青江くんが手伝ってくれたんだ。遅れたのは俺が悪い。ごめん」

僕はびっくりして黒崎くんを見遣ると、少しバツが悪そうな顔をして、そのあと肩の力を抜いて笑い返された。

「もうそろそろ駅に集合の時間だな。行こうぜ」

「うん」

そう言って行こうとすると、村崎さんから手を繋がれた。

ドキリとして、それでもそっと手を繋ぎ返すと、心臓がまた少し跳ねた。

「修学旅行って、やっぱりいいな…」

そう呟くと、村崎さんも微笑み返してくれた。


高校二年の修学旅行はこうして幕を閉じた。

ちなみに、黒崎くんとは黄瀬くんや村崎さんを含めて帰りの新幹線でババ抜きをする仲になった。

黒崎くんはポーカーフェイスが戻って圧勝ばかりだった。

悔しい!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ