修学旅行二日目 後編
京都はすごい。
片田舎の僕らの地元じゃ考えられないほどの人がいる。
観光地なんて人を見ているようなものだった。
「村崎さん。はぐれないように手を繋ごう」
「うん」
そっと握った手は、柔らかくてほんのり熱かった。
僕は、手を握ったはいいけれど、やってしまったとドキドキして、手に汗が流れませんようにと願うばかりだ。
騒つく人混みを避けて進んでいくと、今度は学業の神社。
だって僕らは学生だしね!
並んで並んで、ようやく僕らの番が来た。
メイクアップアーティストになれますように。
ううん。
なる!なります!見守っていてください!神様!
お願い事をして、列から出てまたお守りコーナー。
幾つものお守りを持つのはよろしくないとかテレビで聞いたことあるけど、いいよね?
「そういえば、村崎さん。さっきの恋愛成就の神社でおみくじ引いていたでしょう。結ばなかったってことはいい結果だったの?」
「うん。大吉」
僕は驚いた。
「すごい!僕も大吉だったよ!」
「本当!?番号違ったよね?すごい縁……」
頷いて同意する。
「本当だね〜!ね、村崎さんのはなんて書いてあった?」
「好きな人と急接近」
ほら、とおみくじを見せられて、そこには確かに大吉と書かれていた。
「僕も、好きな人から頼られるって書いてあった」
手を繋いで人混みからエスコートすることを頼られていると思っていいのかわからないけれど、僕は村崎さんと手を繋げて嬉しかったし、役に立てたら嬉しい。
にこにこしていると村崎さんに笑われた。
お互い、成就するといいね。
それは、村崎さんが村崎さんの好きな人と結ばれるということ。
きっと僕とではない人と。
ちくちくする胸を無視してまた笑った。
「そうだね!」
嘘。
本当は、村崎さんが他の男性と付き合って欲しくない。
神様。お願いします!
神頼みしか出来ない僕は、情けなくも頷くしかなかった。
神社から離れると、そのまま川沿いを歩いてみる。
ここも観光名所なだけあって人が多い。
人を避けながら歩いていくと、川の匂いと橋の木の匂いがしてくる。
「ここも有名らしいよ」
「へぇ。あ、写真撮ろうよ!今日の記念に!」
僕の言葉に村崎さんが承諾した。
「あ!でもちょっとメイクだけ直させて!」
そう言って手早く直す。
村崎さんは律儀に待っていてくれる。
優しいなぁ。
「お待たせ!やっぱり、橋と川を入れて撮ろうか」
「うん!」
自撮りモードにして二人で並んで写真を撮った。
「どうかな?」
「うん!橋も川も映っているし青江くんもかわいいよ!」
「村崎さんだって!」
言い合っていると他の観光客からの声が聞こえる。
「見て、カップルかな?かわいい〜。修学旅行生?」
「でも、男の子がメイクしているよ。イマドキ、珍しくないけどね〜」
「いいじゃん。二人ともかわいいよ」
ちらほらと、そんな声が聞こえる。
「かわいいって言われちゃった」
悪い意見は聞かなかったことにして、かわいいと言われた好意だけ素直に受け止める。
「青江くんはすごいね」
「そんなことないよ!」
僕が首を振ると、村崎さんが顔をがっしり掴んで止めた。
「自己否定しない」
「……はい」
「青江くんはかわいいよ」
「……うん、ありがとう」
今度こそ笑って言えた。
好きな人の役に立つどころか、本人に説得されちゃった。
「データ送るね」
「うん。ありがとう」
軽快な音をして村崎さんのスマホから着信の音がした。
「そろそろ戻ろうか」
「うん」
夕焼けだけじゃない。
きっと、二人とも顔が赤い。
そっと繋いだ手が熱さを伝える。
修学旅行のいい思い出になったな。
明日は最終日!何が起こるか、今からワクワクするな!




