とんでもない誤解
僕がやらかしても毎日は進んでいくし、白鳥先輩と黒崎くんの仲は深まっていく。
そう!白鳥先輩の黒崎くんへの挨拶作戦は進んでいる!
最近は黒崎くんから白鳥先輩に挨拶する日も増えたほどだ。
僕はよかったよかったと後ろで眺めて頷いていた。
「白鳥先輩、どんどん可愛くなるなぁ」
恋をしている人はみんなかわいい!
「私は?」
屈んだ僕の頭に顎を乗せて村崎さんが尋ねてくる。
「村崎さんもとってもかわいいよ!」
「そう」
頭の上に村崎さんの顔があるからどんな顔をしているか僕には分からなかった。
ただ、通り掛かった赤井さんがなんとも言えない顔をしていた。
なんだろう?
白鳥先輩のアピールは、第二段階へ進んでいく。
ドキドキ!気になるあの子と二人きり大作戦だ!
作戦名は白鳥先輩と一生懸命考えた。
これは白鳥先輩がなんとかして黒崎くんと二人きりになろうっていう作戦だ。
単純そうに見えて難しい。
なにせ、黒崎くんの周りには大体人がいる。
人付き合いが上手い社交派だから、おとなしい白鳥先輩はあの輪に入るのが難しいんだ。
あと、二人っきりの方が恋の予感がする!
そう思っていたのに、僕は今、黒崎くんに壁ドンされている。
なんでだろう。
「青江くん。二頭追うものは一頭も得ないんだよ」
ちょっと悪い顔で言われる。
「二頭って?」
「村崎さんと白鳥先輩」
「僕が好きなのは村崎さんだよ」
最近は、村崎さんが好きなことを言うことにも抵抗がなくなっていった。
黒崎くんのおかげかな。
でも、白鳥先輩との仲を疑われるのは納得がいかない。
僕はこうして白鳥先輩と黒崎くんの仲を応援しているのに!
「そういう黒崎くんはどうなの!?」
強気で尋ねると、黒い笑顔をされた。
「手の届かない存在だと思って諦めて他の女の子にちょっかい出していたら男の癖に化粧している女々しい奴に掻っ攫われて腹立たしいところ」
黒崎くんの顔が近くなる。
「なぁ。どうしたら白鳥先輩と仲良くなったんだ?」
耳元で尋ねられてぞわりとした。
ちょっと怖い。
「それは……言えない」
それは白鳥先輩の気持ちだから。
白鳥先輩が言わなきゃいけないことだから。
僕が口を閉ざすと、黒崎くんは面白くなさそうだった。
「村崎さんにも振られるし、今までこんなことなかったのになぁ。青江くん、どうやって二人を落としたの?」
「落としていないよ!」
僕の切実な叫びに黒崎くんは面白くなさそうだ。
「まあ、いいけどさ」
黒崎くんはそう言うと、鞄を持って出ていった。
「遊ぶだけの子ならたくさんいるのにままならないなぁ」
それは切なげな声だった。
そう言ったきり振り返ることもせず教室から帰って行った。
僕が何が何やら考え込んでいると、カタンと音がしてそちらを見ると白鳥先輩がいた。
「青江くん……」
「白鳥先輩」
「青江くん……あの近さ、壁ドン、囁き。つまり、黒崎くんの好きな子は青江くんってこと?」
「絶対違います!」
僕は全力で否定した。
ふわふわな妖精は人間と生きている世界が違うらしい。
「恩人の青江くんがライバル……」
なんて、妄想が広がって落ち込んでいる。
そこに黄瀬くんが通り掛かって「なんだ青江。男に告白されたのかー?中学時代にもあったよな、そんなこと」なんて爆弾発言をして白鳥先輩が真っ青だ。
「黄瀬くんは黙ってて!」
黄瀬くんは絶対面白がっている。
笑いながら帰宅していくと、僕は白鳥先輩に寄り添った。
「違うんですよ、黒崎くんの好きな人はきっと」
「ううん。いいの。どんな障害があっても負けないって決めていたんだから」
白鳥先輩が立ち上がった。
「青江くん。私、負けないから」
とんでもない誤解を抱えて白鳥先輩はふわふわと帰って行った。
残された僕は頭を抱えてその場に蹲った。
これからどうしよう。




