やらかしたある日
翌日の白鳥先輩はとても可愛かった。
僕が勧めたメイクと、いつも以上にふんわりした雰囲気でまるで妖精みたいだった。
「これで、黒崎くんに可愛いって思ってもらえるかしら」
「大丈夫ですよ!白鳥先輩は可愛いです!」
僕が励ますと、白鳥先輩が微笑んだ。
本当に可愛い。
村崎さんはツンっとした可愛さだけど、白鳥先輩はおっとりした雰囲気だ。
「白鳥先輩、頑張ってください!」
「う、うん……」
今日の目標はちゃんと挨拶をすることだ。
黒崎くんが登校するのを白鳥先輩と玄関口で待っている。
二人で並んでいたら、登校してきた村崎さんに声を掛けられた。
「青江くん、白鳥先輩。おはようございます」
少しそっけない村崎さんに疑問に思いながらも僕はおはようと返した。
「初めまして、おはようございます」
白鳥先輩もおっとりと返した。
そんな白鳥先輩を見て、村崎さんに呼び出された。
僕は白鳥先輩に断りを入れて村崎さんについて行った。
「白鳥先輩と何してるの?」
「黒崎くんに挨拶するんだ」
村崎さんは黒崎くんと聞いて微妙な顔をした。
「黒崎くんとはなんでもないから」
「うん。でも、白鳥先輩は用があるんだ。……あ、来た!ごめんね、村崎さん!」
ようやく登校してきた黒崎くんに挨拶すべく、白鳥先輩と並んで挨拶をした。
白鳥先輩はチーク以上に赤くなっている。
かわいいなぁ。
頑張る人も好きだけど、恋をしている人も好きだ。
そう思えたのは村崎さんのおかげだ。
僕と白鳥先輩は、第一ミッションを達成して二人で盛り上がった。
黒崎くんは頭に疑問符を浮かべて、ライバルと元学園のアイドルとの不可思議なコンビを眺めていた。
「青江くんはさ、白鳥先輩みたいなのが好きなの?」
そう尋ねられたのは昼休み、黄瀬くんと赤井さんと村崎さんと僕とで昼食を摂っている時だった。
黄瀬くんは咽せるし赤井さんはぽかんとしていた。
「えっ、白鳥先輩ってあの白鳥先輩ですよね!?青江先輩いつの間に仲良くなったんですか!?」
「僕のバイト先に来てね。協力することになったんだ」
「協力って何?」
村崎さんは尋ねることをやめない。
もはや尋問だ。
「それは言えない」
だって、恋をしているなんて個人情報もいいところだ。
しかも相手は村崎さんに恋をしている黒崎くん。
「ふぅん」
村崎さんは少しムッとしてミニトマトを口に含んだ。
「村崎さんこそ、黒崎くんのことなんて思っているの?」
ドキドキしながら気になっていたことを尋ねてみた。
どうか気にしているなんて思っていませんように!
「黒崎くんって誰?」
「ええっ!?この間村崎さんに告白していた隣のクラスの男子生徒だよ!」
僕はびっくりして思わず大きな声が出てしまった。
「まあ、村崎はしょっちゅう告白されてるしなー」
黄瀬くんが追い討ちを掛ける。
「そ、そうだよね……。村崎さんくらい可愛かったら告白もよくされちゃうよね」
「でもでも!今は好きな人しか興味ないですよね!」
赤井さんがフォローしている。
えっ!?村崎さん好きな人いるの!?
僕が呆然としていると、村崎さんは僕に瞳を合わせた。
「いるよ、好きな人」
「そうなんだ……」
ショックを受けている僕に村崎さんは溜息を吐いた。
「ううん。そんなとこがいいんだもんね。待ってる」
待ってる、は何度も言われた言葉だ。
村崎さんは僕の何を待っているんだろう?
放課後、帰宅しようとすると黒崎くんがやってきた。
「黒崎くん」
「白鳥先輩のこと、好きなのか?」
どこかそわそわした黒崎くんは、村崎さんに対して同じ質問をした時とは違ってどこか落ち着きがなかった。
「ううん。偶然バイト先に来てお話ししただけだよ」
僕が答えると、少しほっとしたように呟いた。
「そっか」
これはもしかして、もしかするのかも!
「今日の白鳥先輩可愛かったよね!」
「……ああ、そうだな」
「あのメイク勧めたの僕なんだ!」
その途端、黒崎くんの態度が悪くなった。
「あっそ」
それだけ言うと、帰って行った。
……もしかして、僕はやらかしてしまったのかもしれない。
ごめんなさい!白鳥先輩!




