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かわいいぼくら  作者: 千子


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14/40

黒崎くんと白鳥先輩

放課後、例の子に話し掛けられた。

例の子とは村崎さんに告白した男の子だ。

「青江くんだよね」

「そうだけど」

少し身構えてしまう。

彼は確か黒崎くん。

「青江くんは村崎さんのことが好きなのか?」

直球に尋ねられて、ストンと僕の胸に落ちた。

僕が村崎さんを好き。

好き、がどういう感情かも初恋すらまだな僕にはピンとこなかったけれど、その言葉が頭に響いた。

「うん。好き」

そうだ。僕は村崎さんが好きだ。

メイク以上に、村崎さんが大切だ。

僕の返答に男子生徒は笑う。

「そっか。それじゃあライバルだな!」

トンっと肩を叩かれて一人で帰っていく。

宣戦布告だ。

僕は、村崎さんが好き。

彼のおかげで気付けた。

ううん。本当は気付くチャンスはいくらでもあった。

けれど、臆病な僕は見て見ぬ振りをしていたんだ。

彼の後ろ姿を見て、ライバルってことは村崎さんは彼の告白を受けなかったんだと安堵する。

……僕も帰ろう。

今日はバイトの日だから早く行かなきゃ。

鞄を手に取り、急いで帰宅して着替えると、バイト先のドラッグストアに向かった。


「いらっしゃいませ」

お客様に声を掛けながら品出しをしている時、話し掛けられた。

「あの、青江くんですよね?」

「そうですけど……」

この女の人は知っている。

一つ上の、村崎さんが入学するまでずっと綾部高校で一番の美人だった人だ。

確か名前は白鳥先輩。

「私に似合うメイクを探してもらえませんか?」

村崎さん同様、メイクをしなくても可愛いのに可愛くなろうと頑張る姿に僕は内心盛り上がる。

「喜んで!」

でも、元の素材が良すぎて隠すのは勿体無い。

ここは引き出していこう。

そっと今しているお化粧を落としていると、白鳥先輩が淡々と言った。

「あの、私、黒崎くんが好きなんです」

「えっ!?……そう、なんですか。でも、黒崎くんは村崎さんが好きなんですよね?」

「そうなんです……」

白鳥さんが俯く。

「私なんて、年上だし、黒崎くんとあまり話したこともないし、どうしたら好きになってくれるかわからなくて。でも、今日の放課後に黒崎くんと青江くんの会話を偶然聞いちゃったんです」

僕が言葉に詰まる。

つまるところ、それは僕が村崎さんのことをすきだと言っていることを聞かれたってことだ。

「青江くんは、村崎さんが好きなんですよね?」

改めて聞かれると恥ずかしい。

でも、僕の正直な気持ちだ。

「はい」

「私も黒崎くんが好きです。だから、好きになってもらえるようにもっと可愛くなりたい」

切実な願いに僕は感動した。

好きな人のために可愛くなりたい。

これ以上に純粋で純情な動機があるだろうか。

「任せてください!黒崎くんにも可愛いって言わせてみせます!」

それから僕は白鳥先輩の元の良さを壊さないように、薄らとお化粧をした。

それでも目元は煌めくラメで華やかに。

唇は血色良く見えるようにオレンジで。

「どうですか?」

「すごい……。素肌と変わらない感じなのに、ちゃんとメイクしてるって感じがする」

「素材がいいからですよ。白鳥先輩、可愛いから」

「ありがとう」

ふんわりと微笑まれて、少しどきりとした。

美人の微笑みはすごい威力だ。

「黒崎くんはどう思ってくれるかなぁ」

その言葉に、僕は気になっていたことを尋ねてしまった。

「あの、黒崎くんのどこが好きなんですか?」

これはライバルへの探究心だ。

黒崎くんがモテるなら、強力なライバルじゃないか。

「黒崎くんは、昔、私がタチの悪い連中に絡まれているのを助けてくれたの」

少女漫画にも良くある王道パターンだ!

「それじゃあ、好きになっちゃうかもですね」

「それに、雨の日に傘を野良猫に掛けてあげて自分は濡れて帰ったり、お年寄りの荷物を持ってあげたり……」

典型的にいい人だ!

なんだよ、黒崎くん。いい人じゃないか。

「そんな黒崎くんが気になって、見ているうちに気がついたら好きになっていたの」

「そうなんですね……」

嫌いになる要素が今のところないもんなぁ。

いや!村崎さんは渡せないけど!

どこふわふわした白鳥先輩は、キリッとした村崎さんとは正反対だ。

黒崎くんが村崎さんが好みなら、振り向いてくれるのは望みが薄いかもしれない。

でも、僕は僕のメイクの力で白鳥先輩の願いを叶えてあげたい。

「大丈夫です。白鳥先輩はかわいいから」

「本当?」

多分、何度も言われたであろう言葉でも不安気に問いかけてくる。

「本当ですよ。白鳥先輩はかわいいです」

「……ありがとう」

ふんわり微笑まれて、二人でふふふと笑い合った。

その影で、様子を見に来た村崎さんがいることに気がつかないまま。

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