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死亡確定の夫を救うため、過去に行くことにしました  作者: kkkkk


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20/22

20.アーサーとヨハン

 レイモンド子爵家の正門にまっすぐ光が差し込んでいた。黒鉄の門扉には家紋が刻まれ、光が反射していた。門の両脇には騎士の像が立ち、訪問者を中に入れるかを品定めしていた。


 重い錠が外れると、軋む音を立てて門がゆっくりと開いた。屋敷から歩いてくるアーサーの姿が見えた。隣にはヨハンがいた。

 アーサーは家人にピエールたちを屋敷の中に案内させると、フィオナに向き直った。


「お帰りなさい」


 アーサーはずっと気付いていたのだろう。フィオナはくちばし型のマスクを外し、「ただいま」と首をすくめた。


「君は、僕の息子かな?」


 アーサーの笑顔に、ヨハンは「はい」と頭をかいた。ヨハンの容姿はアーサーにそっくりなグレーの髪に、青い目。クリス第二王子やウィリアムも気付いていたかもしれない。

 頭をなでようとするアーサーとそれを嫌がるヨハン。そんな親子を眺めていたら、自然に頬がゆるんだ。


「ねえ、メイクを変えたの?」


 不意にアーサーの声がした。アーサーと結婚し、ヨハンが生まれて、フィオナは年長者に好まれるメイクに変えた。派手なメイクは社交界で浮くし、子爵夫人には相応しくないと見做す貴族婦人もいる。


「ええ、少しね」

「とてもフィオナに似合っている」

「ほんとに?」

「うん、素敵だよ」


 アーサーが笑うと、目元に小さな皺ができた。フィオナの頬が赤くなった。そんな二人を見て、ヨハンは目を細めていた。


 **


 応接室に移動したフィオナは、アーサーに一年間の進捗を訊いた。


 フィオナの忠告に従って、小麦の取引は大成功した。買い占めた小麦を高値で売却し、利益の一部を小麦の高騰に苦しむ国民の救済のために使った。


 利益の大半は、貧民街の土地と建物の取得に充てた。平民街に近い場所から買取りを始め、取得した建物は取壊し、平民用の住宅を建設した。新しい住宅街は、平民街と同等以上の建物にした。かつて貧民街だったとは想像できないような、立派な街並みに生まれ変わった。そして、平民街よりも販売価格を抑えたため、住宅は飛ぶように売れた。売却によって得た利益を使って、アーサーたちは貧民街の土地と建物の追加取得を進めている。


 アーサーたちが買取った不動産の所有者の多くは、貧民街の住民だった。不動産売買により貧しい住民に資金が流れ、貧民街は活性化した。

 フィオナの提案は、クリス第二王子派の拡大のための資金を確保し、貧困対策にも有効だった。


「うまくやったわね」とフィオナの頬がゆるむと、「そうでしょ」とアーサーは声を弾ませた。


 次は、ハリー第一王子派を弱体化させる段階だ。フィオナは、貨幣を偽造したハリー第一王子派の貴族を標的にすることにした。


 ルビアン王国の金貨は、金の含有量を九十パーセントに定めている。その貴族は、金の含有量を七十パーセントに下げた金貨を製造した。偽造によって、約三十パーセントの金貨が増える計算だ。

 フィオナの世界では、金貨を偽造した貴族は捕まらなかった。金貨は大口決済にしか利用されず、偽造の実態を把握するのに時間を要したためだ。実態調査が終わり、騎士団が押し入ると、工場はもぬけの殻になっていた。情報が漏れていたのだ。


 金貨の偽造はハリー第一王子の資金源になっていた。偽造の証拠をつかめば、ハリー第一王子派の勢力を弱めることができる。

 フィオナは貴族の名前を思い出そうと、「うーん」と唸りながら頭を傾けた。貴族の名前は……コルサ……コルサーノ、マルコ・コルサーノ伯爵。今から工場を調べれば、金貨の偽造の証拠をつかめる。コルサーノ伯爵を捕らえられる。


「次はハリー王子の勢力を崩すわよ」


 フィオナが声を弾ませると、アーサーは苦笑いした。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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