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死亡確定の夫を救うため、過去に行くことにしました  作者: kkkkk


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18/22

18.圧政への抵抗

「ハリー第一王子が王位を承継した後の世界をお話します。ルビアン王国の国民に課される税が二倍になり、賦役も大幅に増えました。周辺国からの侵攻に備えるため、とハリー国王は国民に説明しました。が、その後、実際に防衛施設が増強された事実はありません。豪華な王宮が建設されて、ハリー国王派の貴族の屋敷も豪華になりました。

 虚偽の説明をしたハリー国王に対して、抗議活動が各地で起こりました。ハリー国王は抗議活動を武力制圧すると、反対勢力を潰すため、監視活動を活発化し、スパイ容疑でたくさんの国民を投獄しました。広場では連日公開処刑が行われ、国民に対する恐怖政治が続いています」


 ヨハンは拳を握りしめていた。カルネラ家は、ハリーの手先となって国民の弾圧を手助けした。国王に逆らえないものの、ヨハンは悔しかったのだろう。


「やはりな、予想したとおりだ。それが我が国の将来なのであれば、ますます私は兄上と戦わなければならない」


 クリス第二王子の体は怒りで震えていた。クリス第二王子がハリー第一王子と争わなければ、アーサーは死なない。でも、圧政により民が苦しむ未来をアーサーが望むだろうか?


「たとえ、そちらの二人が殺されるとしても、ですか?」


 クリス第二王子は口元に手を当てて黙り込んだ。虚ろな表情だった。


「僕は殺されても構いません」とアーサーが言うと、「俺もです」とウィリアムも続いた。


 二人は自らの死よりも、民の幸せを望んでいた。

 このままハリー第一王子と争えば、アーサーは死ぬ。アーサーを救うには、クリス第二王子に協力するべきだろう。しかしそれは、ルビアン王国の未来を根本から覆すことになる。


「あの、一つ伺ってもいいですか?」


 アーサーが真剣な眼差しをフィオナに向けた。顔がマスクに覆われているから、フィオナの表情はアーサーには見えていないはずだ。

「ええ」とフィオナは声が上ずらないように、単調に言った。


「あなたは未来からきた。もしそうなら、クリス様が王位に就く方法をご存じではないでしょうか?」


 それが分かれば苦労しない。クリス第二王子がハリー第一王子に敗れた根本的な原因が分からない。ただし、ハリー第一王子派の貴族や商人の罪をあばき、派閥の勢力を弱めることはできる。そして、クリス第二王子派の勢力拡大も助けられるだろう。


「まずは金です。資金力がまるで違います。クリス様は民を助ける義賊のつもりで迷いの森を作ったかもしれません。それだけでは、ハリー様の勢力を削ぐには不十分です。クリス様の勢力を大きくしなければ、ハリー様には勝てません」

「聞き捨てならんな」


 クリス第二王子の語気が強くなった。国民を守るために作った迷いの森を、フィオナに批判されたのが気に入らなかったようだ。


「悪事をはたらく貴族や商人を懲らしめたいのであれば、証拠をもとに罪に問うべきです。悪事に悪事で対抗しては、本末転倒ではありませんか」


 クリス第二王子は少し顔を歪めたが、あえて反論はしなかった。本人もこの矛盾を認識しているのだろう。


「なら、どうすればいいのだ?」

「資金を増やすなら、そうですね……」


 フィオナは七年間の記憶を思い起こした。いくつか相場が大きく動いた出来事があったはずだ。


「たしか、今から三カ月後に国境付近で水害が起こり、小麦の価格が暴騰するはずです。今のうちに買い集めておけば、小麦の価値は五倍になります。つまり、資金を五倍に増やせます」

「五倍か……」


 クリス第二王子が唸りながら頭を傾けると、後ろから声がした。


「僕は買いますよ」


 アーサーの声だった。信頼してくれて嬉しかった。だが、マスクの不審者の言葉を鵜呑みにするアーサーを、妻の立場としては心配でもあった。


「アーサー、君はその者を、信じるのか?」

「はい、信じます」


 クリス第二王子は目を細めると、何かをつぶやくように唇が小さく動いた。


「そうか。アーサーが信じるなら、私も信じるとするか」

「俺も信じます。父にも声をかけてみます」


 フィオナは自分の耳を疑った。知り合ったばかりの怪しげな女の話を、全員が信じるという。


「クリス様、私が嘘をついているかもしれません。信じてもよろしいのですか?」

「問題ない。アーサーは嘘を見抜けるからな」

「嘘を見抜ける、ですか?」

「そうだ。この世には十万人に一人の割合で、特殊な能力を持つ者がいる。アーサーはその能力者だ」


 フィオナはアーサーの能力を知らされていなかった。信用されていないと落胆する一方で、アーサーは秘密を打ち明けられなかったとも考えられる。もし、この能力を知られれば、王族、貴族がアーサーを利用しようとする。ルビアン王国における国家機密事項とされていたのだろう。


 嘘を見抜く能力……アーサーを驚かせるために、誕生日に「実家で会合がある」とフィオナは嘘をついたことがあった。

 アーサーの帰宅と同時に誕生日パーティーが始まり、アーサーは驚いた顔をした。あれは、フィオナを喜ばせるための、アーサーの演技だった。

 フィオナはマスクの下で苦笑いした。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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