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死亡確定の夫を救うため、過去に行くことにしました  作者: kkkkk


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17/22

17.王位継承

 ウィリアムが主導したクリス第二王子派の謀反により、アーサーは殺害されることになる。クリス第二王子は幽閉され、ウィリアムも罪を着せられ処刑される。これは、王位継承争いに敗れたクリス第二王子が、ハリー第一王子による制裁を受けた結果だ。本当に謀反が計画されていたかは、疑わしいところである。


 フィオナの生家のカルネラ子爵家は、ルビアン王国直属の諜報部隊。王位継承したハリー第一王子の命令に従わなければならない。


 アーサーがウィリアムと関係を断たなかったのは、クリス第二王子が困っている民を救おうとしたからだろう。フィオナが説得しても、きっとアーサーは考えを変えない。


 どうするべきか……フィオナは小さくため息をついた。


 クリス第二王子が王位を継承したら? アーサーが死ぬことはない。民にとっても、クリス第二王子が王位を継承したほうが良い。


 一方で、既得権益にしがみつく大商会や貴族は猛反対するだろう。しかし、レイモンド子爵家には影響がないし、カルネラ子爵家は王位継承者に従うだけだ。問題はない。


 クリス第二王子が信頼に値する人物であれば、フィオナは王位継承に協力するべきなのかもしれない。


 フィオナはカラスのくちばし型のマスクを被ると、裏口の扉をそっと開けた。


「何者だ!」


 突然の侵入者に驚いた近衛兵は、円を描くようにフィオナを取り囲んだ。長い木の棒を持ったマスク姿の不審者を、近衛兵が警戒するのも無理はない。

 クリス第二王子は近衛兵に誘導されて、数歩後ろに下がった。


「クリス様、お願いしたいことがあります」


 フィオナが部屋に足を入れると、四人の近衛兵が一斉に剣を抜いた。フィオナは無視してクリス第二王子に近づいた。


「おのれ、何者だと訊いているだろう!」


 鋭い踏み込みと同時に右側の近衛兵が剣を振り下ろした。フィオナが半歩下がると、刃は肩に届く手前で空を切った。


「クリス様、お願いしたいことが……」


 フィオナが言い終わる前に、近衛兵が剣をかざして突進した。

 フィオナは小さくため息をついた。危害を加えるつもりはないが、斬られるわけにはいかない。

 フィオナが棒を横なぎすると、乾いた音が響いて剣が地面に転がった。剣を弾かれた近衛兵は、体勢を崩して地面に倒れ込んだ。フィオナは棒を近衛兵の喉元にぴたりと付けた。


「危害を加えるつもりはありません。クリス様にお願いしたいことが……」


 言い終わる前に、後方の近衛兵二人が動いた。近衛兵はフィオナの左右から同時に剣を振り下ろした。

 フィオナは一歩踏み込むと、軸足を中心に体を回転させた。棒と足払いにより体勢を崩した近衛兵は、同時に後ろに倒れた。


「シュルツ商会に味方したのは君だね?」


 クリス第二王子は頭をかきながら、最後に残った近衛兵の前に進み出た。

 フィオナは「はい」と頷いた。誘拐事件の真相を知らなかったことを補足すべきだろうか? フィオナは口元に手を当てて、ぼんやりと視線を横に移した。


 倒れていた近衛兵が立ち上がり、剣を構えた。まだ懲りていないのだろうか……フィオナは棒を構え直した。


「下がれ、お前たちでは勝てない。私の予想どおりなら、彼女はレイスだ」


 クリス第二王子が制すると、近衛兵はその場で凍りついた。クリス第二王子がフィオナの正体を知っているのは意外だったが、抵抗されるよりはいい。


「念のための確認だが、私の殺害が目的ではないのだな?」

「はい。危害を加えるつもりはありません」


 クリス第二王子はアーサーを一瞥し、深く息を吐き出した。


「それでは、私への願いとは?」


 クリス第二王子の声は、焦りや怒りの感情のない、静かな声だった。


「ハリー第一王子と争うのを、止めていただきたいのです」

「なぜだ?」

「クリス様はハリー第一王子に敗れます。クリス様は幽閉され、そちらの二人は殺されます」


 クリス第二王子は目を丸くした。アーサーとウィリアムは何も言わず立ち尽くしていた。

 クリス第二王子がフィオナの意見を聞き入れるとは思えない。しかし、王位承継争いがなければ、アーサーは死なないし、クリス第二王子も幽閉されることはない。


「まるで未来を見てきたような物言いだな」

「そうです。私たちは未来からきました」


 クリス第二王子は眉間にしわを寄せた。フィオナの正体を知っていたとしても、未来から来たとは信じていないだろう。


「私にはルビアン王国の国民を守る義務がある。兄上が王位を承継したら、国民は圧政に苦しむことになる。そうではないのか?」


 フィオナはハリー第一王子が王位を承継した時代を知らない。適当に取り繕うのは避けるべきだろう。「代わりに説明してくれる?」と、フィオナが尋ねると、ヨハンはこくりと頷いた。


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