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死亡確定の夫を救うため、過去に行くことにしました  作者: kkkkk


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14/22

14.人質の救出

「先に娘を解放してください。それから払います」


 ピエールの上ずった声がした。


「金が先だ」と男は歪んだ笑みを浮かべると、剣を娘に向けた。


 震える娘を目にしたピエールは、「わかりました」と黒い鞄を手に男たちに近づいた。


「金はそこに置け」


 ピエールは指示された場所に鞄を置いた。男の一人が鞄の中身を確かめると、剣を抜いた。


「金は確認した。ただ、足りない」


 男が後ろを振り返ると、四人の男たちは声を上げて笑った。


「約束が違うじゃないか」

「いや、違わない。この金は一人分、人質は二人だ」


 アーサーの身代金も払えという。もちろん、ピエールには、アーサーの身代金を払う道理はない。最初から誘拐犯は、ピエールたちを素直に帰すつもりはないのだろう。


 人質を楯にされると男たちを制圧できない。フィオナが男たちを引付けている間に、ピエールたちに人質を保護してもらう計画だ。


 ヨハンに向かいの出入口から侵入するように指示し、フィオナは足元の石を握りしめた。深呼吸して振りかぶると、人質から離れた場所に立つ男を狙って投げた。

 石は弾丸のように一直線に飛び、男の頭に当たった。


 “がたん”


 男は大きな音を立てて地面に倒れた。


「どうした?」


 男たちは人質から離れ、倒れた男に駆け寄った。

 今だ! フィオナは棍棒を右手に持ちかえると、男たちに向かって駆け出した。


「誰だ!」


 男の一人が叫び、剣を構えた。フィオナは速度を上げた。

 男は剣を振り上げ、フィオナの肩口を狙った。

「はっ」短く息を吐くと、剣が振り下ろされるよりも早く、棒の先で男の喉元を突いた。男は声を上げず、その場に崩れ落ちた。


 二人が左右から斬りかかった。フィオナは一歩下がって、振り下ろされた刃をかわし、そのまま回転して棒を振った。

 棒を横薙ぎして左の男の膝骨、右の男の肋骨を強打すると、骨の折れる鈍い音がした。二人は体勢を崩し、倒れ込んだ。


「ば、化け物か……!」


 最後に残った男は後ずさったが、逃げる素振りはなかった。

 歯を食いしばり、狂ったように剣を振り下ろした。棒で剣を弾くと、金属音が倉庫に響いた。フィオナは柄で顎を打ち上げると、棒を腹に突き刺した。男は倒れて、動かなくなった。


 フィオナは周囲を見回して、誘拐犯の全員が戦闘不能であることを確認すると、奥へと駆けた。部屋の中にウィリアムがいる。そう確信して、フィオナは扉をゆっくり開いた。


 しかし、中には誰もいなかった。出入口から外を覗いたが、人の気配はなかった。


 逃げたのか? それとも、この部屋にはいなかったのか?


 倉庫の中心に視線を移すと、ヨハンがアーサーとピエールの娘の縄をナイフでほどいていた。ウィリアムをとり逃したのは痛手だが、人質に怪我はなかった。しかたない。強張っていた肩がふっと軽くなった。


 フィオナは黒髪の少女に近づいて、ほほ笑んだ。ほほ笑んだ……つもりだった。しかし、意外な言葉が聞こえてきた。


「マスクのおじちゃん、ありがとう」


 顔に手をやると、くちばしがあった。カラスのくちばし型のマスク。フィオナこの時代には存在しない人間だから、マスクを取らなくていい。それに、アーサーに顔を見られると厄介だ。


「おじちゃんじゃなくて、お姉さんよ」とフィオナが指摘すると、「ごめんなさい。お姉さん、ありがとう」と()()()少女の頬が赤らんだ。


「ありがとうございました」


 視線を移すと、アーサーが頭を下げていた。


「いいのよ。貴族は困っている人を助けるものだから」

「はい。僕も貴族です。だから、困っている人を助けます」


 アーサーの目が輝いた。アーサーが困っている人を放っておけないのは知っている。無鉄砲なアーサーには、もっと慎重になってもらいたい。


「助けるのはいいけれど、自分の実力を過信しないこと。いい?」

「もちろんです」


 照れたように頷づくアーサーを眺めていたら、不覚にも頬がゆるんだ。けれど、マスクに隠れたフィオナの顔は、アーサーには見えなかった。


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